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第16話 絶対に許さねえぞ

「あ? なんだてめぇは?」


 隼人という男が俺に向かって言った。


「てかなんでそんなところから出てくるんだよ?」


 彼は俺の出現に戸惑っている。

 まあ、それはもっともな疑問だが、今はそんなことを考える時間はない。


 俺は嫌がる梨沙の前に立った。守らなきゃいけない、そう思った。

 相手は年上で体格もいい。なんでこんな男と梨沙が……でも、考えるのは後だ。



「そうか、そうか……やっぱりお前にも男がいたのか」


 隼人はニヤリと笑って言った。そして、いきなり「お前みたいなやつは前にもいたんだよ!」と言って、殴りかかってきた。


「やばい」


 そう思ったが、普段からサッカーや運動をしている俺にとって、このパンチぐらいは……あれ? 案外弱い? 俺は拍子抜けした。受け止められたことに驚いてる隼人を、俺は睨みつける。



 隼人の拳が俺に向かって迫ってきた。いきなりのことに、一瞬驚いたけど、俺は慌てずに避ける。普段のサッカーの練習で鍛えた俺の体は、こんな時にも役立つんだ。


 彼の拳が空を切ると、隼人は少し驚いた顔をした。俺はその隙に、もう一歩距離を取った。サッカーでの敏捷性と反射神経が、今、俺の大きな武器になってる。


「何だよ、意外とやるじゃん」


 隼人が口にするが、俺は冷静だった。この男に梨沙を傷つけさせるわけにはいかない。俺の心は、守る決意でいっぱいだった。


「おい、何考えてんだよ!」


 俺は隼人に言った。俺は梨沙を守るためなら、どんなやつにだって立ち向かう覚悟がある。梨沙は俺の背後で震えていたが、俺の態度に少し安心したようだった。


 隼人は少し焦ったように見えたが、すぐにまた挑発的な態度を取り戻した。


「へっ、お前なんかに負けるわけねえだろ」



 隼人の挑発的な態度に、俺は内心で激しく反応した。この男、一体何を考えてるんだ? 梨沙を傷つけて、まだ何か言いたいのか……そんなことを考えると、怒りが沸々と湧き上がってきた。梨沙を守るために、ここにいるんだ。俺の目の前で、こんなことをされるわけにはいかない。


 隼人の言葉が俺の心をかき乱す。彼の挑発的な態度は、ただの悪ふざけではなく、梨沙に対する明らかな侮辱だ。このまま黙っているわけにはいかない。梨沙を守るため、そして彼女がこれ以上傷つけられないように、俺は立ち上がる決意を固めた。


「こんな奴に、梨沙を任せられるか!」


 心の中で叫ぶ。梨沙のために、俺は何だってする。それが俺の決意だ。隼人には、梨沙を傷つける権利はない。俺がいる限り、絶対に守ってみせる。それが俺の役割だ。


 梨沙の顔を見ると、恐怖がその瞳に浮かんでいた。彼女の震える唇、強張った表情が、隼人に対する恐れを物語っている。梨沙がこんなに怯えているのを見るのは、正直言って辛かった。


 でも、俺が現れたとき、梨沙の表情に少し変化があった。恐怖に満ちた瞳が、一瞬だけど、安堵に変わったように見えた。俺が来たことで、彼女は少し安心したんだろうか。


「大丈夫だ、梨沙! 俺がいるから」


 梨沙に声をかけた。

 隼人はまだあきらめていない様子だったが、俺は彼に向かって一歩踏み出した。この問題を解決するためには、どんな手段を使っても、俺は梨沙を守る。それが俺の決意だった。





 俺は梨沙を守るために、相手の男に対して構えた。

 男は俺に向かって「お前は梨沙の何なんだ?」余裕綽々に言ってきた。


「そりゃ見ればわかるだろ!」


 反撃した。

 この男、全然俺を舐めてる。でも、日頃サッカーで鍛えてる俺をなめるなよ。

 男は俺を怒らせるために、また蹴りを繰り出してきた。だが、俺はすっとそれを避ける。喧嘩は得意じゃないけど、サッカーの日々の練習で動きは身についてる。


 俺の心臓はまるでドラムのように激しく打ち鳴らしていた。

 男の挑発的な言葉に対して、俺の心は怒りでいっぱいだった。でも、冷静さを失ってはいけないと自分に言い聞かせた。サッカーで鍛えた俺の足は、今、別の意味での問題に直面していた。


「ちくしょう、今ここでこいつを殴ってしまったら、全てが水の泡だ……」


 俺は心の中で悶々とした感情と戦いながら、男の次の動きに備えた。彼が次に放った蹴りも、俺は瞬時に避けた。サッカーでのスプリント、ドリブル、ディフェンスが、こんな形で役立つなんて思いもしなかった。


「お前のその蹴り、俺には効かない!」


 しかしこのままではいけない。

 どうしたものか……ん? そうか、これなら。

 考えていると、ふと俺はあるものを発見した。これなら大丈夫だ。

 俺は内心で叫び、梨沙の安全を守るために、集中力を高めた。そして、男の顔に向かってサッカーボールを力強く蹴った。ボールが彼の顔に直撃し、


「いってぇ!」


 悲鳴が上がった瞬間、俺は梨沙の手を握り、外へと駆け出した。


「逃げるぞ、梨沙!」


 俺たちは夜の街を駆け抜け、息を切らしながらも、一刻も早くその場から離れようとした。梨沙は俺の手をしっかりと握り返し、その温もりが俺の心を落ち着かせた。


「大丈夫だ、梨沙……俺が守るから……」


 夜の道を走りながら、俺は梨沙を守るという自分の決意を新たにした。この手で、どんな時でも彼女を守る。それが俺の、サッカー選手としての強さだ。そしてそれ以上に、梨沙の友達としての強さだ。



 ◆◆◆


 俺は梨沙の家を出るとき、まるで緊急避難みたいだった。梨沙の手を引きながら、俺たちは一目散に走った。後ろからは隼人の怒鳴り声が聞こえてくるが、もう関係ない。今は梨沙を安全な場所に連れて行くことだけが俺の目的だった。


 公園のベンチに腰掛けたまま、俺たちは静かに話を続けた。夜の冷たい空気が周りを包んでいたが、梨沙の言葉にはもっと冷たい現実が込められていた。


「大丈夫か? 怪我はないか?」


 俺は梨沙に心配そうに聞いた。彼女の顔はまだ怖がっているように見えたが、俺がそばにいることで少し安心しているようだった。


「うん、大丈夫! ありがとう、優矢」


 梨沙は小さく頷き、声を絞り出した。彼女の声にはまだ震えがあったが、俺がそばにいることで少し落ち着いているようだった。


 俺たちは、近くの公園のベンチに座った。ここなら少しは安全だろう。俺は深く息を吐いて、梨沙を見た。彼女は俺の目を見つめ返してきた。


「梨沙、今のはなんだったんだ? それにあの男は?」


 俺は静かに聞いた。梨沙の目には涙が溜まっていた。彼女は少し間を置いてから、ゆっくりと話し始めた。


「あの男、風間隼人って言うんだけど……さ」

「風間隼人……誰だよ、そいつ?」


 俺は尋ねた。梨沙は少し黙ってから、ゆっくりと話し始めた。


「私の元カレ……友達の紹介で知り合って、年上で男らしくて……頼れる感じがして。気が付いたら、私から告白してたの」


 俺は彼女の言葉に深いため息をついた。


「そうだったのか……」

「でもね、付き合ってみたら全然違って、あんなに優しかったのに、だんだんと……」


 梨沙の声は震えていた。

 俺は何も言えなかった。ただ彼女の横に座って、彼女の話を聞くことしかできなかった。梨沙は更に続けた。


「隼人は……私を縛りつけて、どんどん苦しくなっていったの! だから、別れようと思ったのに、彼はそれを受け入れなくて……」

「なんだよ、そんな奴……」


 俺の中で何かが煮えたぎっていた。梨沙をこんなに苦しめた奴が許せなかった。


「でも、今はもう大丈夫……優矢がいてくれて……」


 梨沙は俺の方を見て、微笑んだ。


 俺は彼女の手を握り、力強く言った。


「俺が守るよ、梨沙! もう、あんな奴に苦しめられることはないから」


 梨沙の目には感謝の涙が浮かんでいた。俺は決心を新たにした。どんなに困難でも、梨沙を守ると。それが俺の使命だと強く思った。

 夜の街灯が二人を照らし出し、静かな夜の中で俺たちは希望を見つけていた。梨沙を守るために、俺はどんな困難にも立ち向かう。それが俺の役割だ。


 でも、まだ終わらなかった。それは騒動で忘れていたこと。


 梨沙が俺の手をぎゅっと握ってきた。

 梨沙の目には切なさと不安が混じり合っていた。


「ねぇ? さっきの返事、やっぱりダメでしょ?」


 梨沙の声は震えていた。


 俺は一瞬黙り込んだ。こんな状況でどう答えるべきか、正直わからなかった。


「それは……今ここですぐには答えは出せないな、正直俺だって複雑な気持ちだよ」


 失敗は誰にでもある。それに、梨沙の一言で彼女を嫌いになるわけがない。俺は梨沙の方を向いて、力強く言った。


「でも、これで俺が梨沙を嫌いになるわけがない!」


 梨沙は、俺の言葉を聞いて、涙を流しながら俺に抱きついてきた。返事はできなかったけど、俺の気持ちは変わらない。そう伝えると、梨沙は安心したように見えた。


 しかし、そこに思わぬ人物が現れた。香織だった。


「え……」


 驚く俺とは対照的に、香織はきょとんとしているだけだった。何も言わずに、ただそこに立っている。


 この突然の出来事に、俺たちはどう反応すればいいのか、一瞬戸惑った。香織はなぜここにいるのか? そして俺たちはこれからどうすればいいのか? その答えを見つけるのは難しいかもしれないが、俺たちは何かを決めなければならない。香織の存在が、すべてを変えてしまったような気がした。



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