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第34話 第2のデッキ

 マイルームに死に戻った私は私室のベッドの上で目覚めた。

 チュートリアルダンジョンの探索中は、ずっと野宿生活だったので背中から感じる柔らかなベッドの感触が新鮮だった。


 死に戻りしたばかりなので体の疲れはないが精神的疲労はある。

 このままひと眠りしたい気持ちが湧くが、先にやることを済ませてからスッキリした気持ちで寝よう。


 ベッドから起き上がった私は、チュートリアルダンジョンに繋がる金属扉がある小部屋に向かった。


 小部屋に置かれたコアパソコンの電源を入れる。

 ホーム画面が表示されると、すぐにステータス項目をクリックした。

 ひとまずステータスを確認をして今現在の所持DPと、どれだけ堕犬娘のステータスが上昇したのか見たかった。


 コアパソコンの液晶画面に私のステータスが映し出された。



 レアリティ:UR

 カード名:催眠おじさんイチロー 

 マナコスト:黒×5

 カード種類:ダンジョンマスター・・・(所持DP:6万7420ポイント)(加護:夢幻盤上の遊び人)

 戦闘力:攻撃力2/生命力3/素早さ2

 スキル

 ・洗脳催眠(手札を2枚捨てる事で、敵1体のコントロールを1時間得る。黒マナをX払うとコントロール時間がX時間増える)

 ・後催眠暗示(洗脳催眠中に命令した行動を1つだけ対象に暗示として残せる。洗脳催眠解除後に弱点部位に触れることで暗示した命令行動を自覚なく遂行させる)

 ・自己催眠(マナをX払う事で、1分間全ステータスをX×2アップする)

 ・魂の汚辱(洗脳催眠して得た対象をX体捨てる事で、好きな色のマナをX×2得る)

 ・サモンマルチバースカード

 ・精神耐性Lv10

 ・体液毒化Lv3

 ・錬金術Lv1

 ・偽装Lv1



名前:堕犬娘だけんむすめイチロー

年齢:15歳

種族:狛犬人こまいぬびと

加護:なし

生命力:98/98

魔力:0/0

攻撃力:52

防御力:20

素早さ:80

器用さ:46

スキル

・格闘術Lv2

・金剛体Lv1

・身体強化Lv4

・軽業Lv3

・マップLv2



 催眠おじさんイチローのステータスで前回と違う点は、所持DPが増えたことぐらいだな。

 スキルに関しては、チュートリアルダンジョンではスキルレベルがあるスキルを使う機会が少なかったり、そもそも全く使ってないのもあるからスキルレベルが上がっているとは思っていなかった。


 堕犬娘イチローのステータスは前見たときより格段に上がっていた。

 格闘術と金剛体スキル以外のスキルレベルが1レベルずつ上がっているし、ステータスの各数値も上昇していた。


 ただし防御力の数値だけは前回と同じだった。

 戦闘時は後方から毒液ボールを投げるか、モンスターが突っ込んできても回避して即反撃するなどしていた。

 防御力が上がるような経験を積んでいないから、数値に変化が見られないのも納得だ。


 自分のステータスを一通り見終えた私は所持DPを見て唸る。


「1度の探索でDP6万ポイント以上の稼ぎか……」


 2階層の探索に行く前、私はその時の所持DPを使いこんで食券を大量に買った。

 そのため所持DPは一桁ほどしか残っていなかったので、今ここに表示されている所持DPはほとんど今回の探索で稼いだものだ。


「2階層のモンスターを多く倒した事と、3班に分かれて探索に出たおかげですね。DP稼ぎとしては十分な成果でしょう」


「そうだな。だけどすぐに無くなると思うぞ」


「そうなんですか? マスターは豪遊でもする気なのですか?」


「非常に魅力的な提案だけど、やるとしても皆が戻ってからかな」


 皆がまだチュートリアルダンジョンの中にいるのに、私だけそんな楽しい事をするなんて気が引ける。


「それではショップで何か購入するつもりなんですか?」


「買いたい物なんて数え切れないぐらいあるよ。マイルームの衣食住をもっと充実させたいし、探索に必要な道具類や武器防具の更新。それに戦力向上のためのスキルチケットも欲しいよ」


「なんだかこれだけ聞くと幾らDPがあっても足りなそうですね」


「上を見ればキリがないよ。だけどまずは、サモンマルチバースカードのパックを購入するよ。それで新しいデッキを構築するんだ」


 マイルームに死に戻りする前に考えていたことをイヌに伝える。


「たしか前回は400枚のカードを手に入れましたが、今回はどれくらい購入するつもりなんですか?」


「200パック購入して、カード1000枚を手に入れるつもりだよ」


 サモンマルチバースカードは、1パック5枚入りで、DP50ポイントで売られいる。

 200パック購入するということは、DP1万ポイントも支払ってカードを大量購入することになる。


「自分としてはマスターの意見を尊重したいですが、前回手に入れたカードだけでデッキ構築してもよろしいのではないでしょうか」


 DP1万ポイントという決して安くない買い物にイヌは懐疑的だ。

 それにカードを購入するにしても、DPをもっと押さえて購入すればいいと思ったのだろう。


「だけど手持ちのカードの中にURカードは無いだろ」


 レア度:UR。

 このレア度のカードがどれぐらい規格外なのかは、ユニットカードの催眠おじさんイチローを思えば納得だ。

 URカードには、他のレアカード以上の力が秘められている。


 それだけ強力なカードなので、最高レア度のURカードの排出率は悪い。

 サモンマルチバースカードを400枚も購入した時、レア度:C、UC、Rといった低レアカードばかりで、SRカードもゴリ将とユニ含めて4枚しか入手できなかった。


 あの時はあまり余裕がなくて気にしないようにしてたが、その小さな不満が無くなったわけではない。

 どれだけ低確率なんだよとショップを管理している管理者たちに文句を言いたかった。


 いやまあ、怖くて実際に口に出す気はないけどね。

 掲示板での管理者への暴言でもいろいろ噂されているのに、リアルで暴言を吐くなんて何をされるか分かったもんじゃない。


「マスターはなんだかんだ言ってわがままですよね。そこまで言い切るなら自分はこれ以上の口出しはしませんよ」


 こうして私に対して激アマなイヌの説得が数秒で終わった。


 このすぐあと、私はショップで200パックを購入した。

 全てのパックを袋開けした私は、ウインドウのカード一覧ページに収まった1000枚のカードを、イヌと一緒に1枚ずつ丁寧に確認していった。


 残り3枚のデッキを引き終われば、次のデッキを新たに構築できる。

 その時が来たらすぐにデッキ構築できるよう、前回同様イヌと2度目のデッキを相談した。



 それから2日後。

 まだ皆は戻ってきていなかった。


 ゴリ将たち主力班は2階層からここまで道のりが遠いので、まだ戻って来るのに1週間以上は掛かるだろう。

 だが1階層でDP稼ぎをしていた歩イチたち2班は、そろそろ戻ってきてもおかしくない。


 戻ってきたことがすぐに分かるように金属扉に呼び鈴を設置しといた。これで誰がいつ来ても出迎えられる。


 私はというとショップで残りのDP約5万ポイントを使い、マイルームの改築と増築を行ったり、生活面や戦闘面の充実を図った。


 錬金術スキルを活用して毒液ボールのストックを増やしたり、木材から簡単な家具などを作ったりもした。

 製品として買うよりも原材料を購入して加工した方がDPの節約になるし、ものづくりの楽しさを味わいながら錬金術スキルのレベル上げに励んだ。


 他にも掲示板で情報集めをしたり、堕犬娘の自撮り写真をオークションで売ったりもした。

 まだ根強い人気がある堕犬娘だが自撮り写真の売り上げは下がっていた。

 要検討だな。

 とりあえずこの売り上げは皆が戻ってきた時の、宴の費用に充てるつもりだ。


「ドロー」


 私はデッキから最後の1枚のカードを引いた。

 宙に浮かぶウインドウに映されたデッキ構築ページのカード枠は空欄だった。

 これはデッキが空になった状態を表す。

 これで新しいデッキをセットできる。


 この2日間、運命のサイコロを使って残り3枚のカードをデッキから引いた。

 1日目に未知なる毛玉、自爆機能付き自動人形の2枚のユニットカードを引き、2日目に黒マナカード1枚をデッキから手札に加えたことで、ついにデッキが底をついたのだ。


「ユニットカードは召喚しないのですか?」


「皆が戻ってからにするよ。そう急いで召喚する理由もないしね」


「ということは、自分とマスターだけの生活がまだまだ続くのですね!」


「ハハッ……そうだね」


 乾いた笑いで返事をする私に対して、イヌはハイテンションになって喜んでいた。

 

 ちなみに新しいデッキに変わっても、それまで引いた手札カードや待機状態のトラップカード。それに召喚したユニット、スペル、オブジェクトはそのまま残る。

 だから新しいデッキに変わった瞬間、ゴリ将たちが消えるなんてことはないのだ。


 私はウインドウを操作してデッキ構築ページに新しいデッキをセットした。



 マナカード…合計33枚

 ・白マナカード…6枚

 ・黒マナカード…11枚

 ・黄マナカード…12枚

 ・緑マナカード…4枚


 ユニットカード…合計3枚

 ・UC 双子家事妖精シルキーズ 白×2…1枚

 ・SR 蟲島ことうの主人 緑×4…1枚

 ・UR マッドクラフター 黒×5…1枚


 スペルカード…合計1枚

 ・R 隷属の刻印 黒×3…1枚


 オブジェクトカード…合計5枚

 ・R 身代わり人形 黒×3…1枚

 ・R 異空間バッグ 黄×3…1枚

 ・SR リザレクトポーション 白×4…1枚

 ・SR 転移門の鍵束 黄×4…1枚

 ・UR 複製機 黄×5…1枚


 トラップカード…合計1枚

 ・R ダメージ転移 待機時間:24時間…1枚



 これが新たに構築したデッキだ。

 全部で43枚のカードからなるデッキで、前のデッキより少し枚数が増えてしまった。


 今回購入した1000枚のカードの中に、レア度:URの複製機とマッドクラフターがあった。

 どちらとも補助メインのカードだったので、今回のデッキもそれに沿ったカードを中心にしてある。


 ちなみに現在の私の手札はこの通りだ。



手札

・マナカード:黒マナカード4枚、白マナカード1枚

・ユニットカード:未知なる毛玉1枚、自爆機能付き自動人形1枚

・スペルカード:ブラックアウト1枚

・オブジェクトカード:無地のおっぱいマウスパッド2枚

・トラップカード:行動禁止宣言1枚



「カードを引けれるのは明日からなんですよね」


「ああ、そうだよ。もう前のデッキで、今日の分のドロー回数を満たしてしまったからね」


 その日は軽い運動がてら近場のモンスターを倒しに行ったり、イヌと駄弁りながら 掲示板を眺めて時間を費やした。


 皆が戻ったら休日を少し増やそうかな。

 探索時間が伸びたので、休日日数も比例して増やさないと気疲れしてしまうだろう。

 そう思いながら私は、うるさいイヌの声を聞き流しながらとこに就いたのだった。

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