対戦続行。『世界最強の邪神(自称)』相手にデッキ回します。
「さて、我のターンじゃ! 《スタートプロセス》を経て《ドロープロセス》に、我が城【邪神虚空域】の効果を発揮!」
その言葉に応えるかのように、邪神の背後にある異形の城が光を放つ。
「我は手札より、『眷属』または『虚無』のユニットカテゴリを持つカード1枚を捨てる。そうすることで、《ドロープロセス》で山札から引く枚数を1枚増やす! 捨てるのは……そうじゃな、【虚空の戦鬼】じゃ」
邪神が手札から捨てたのは、捻れ曲がった角を生やした青肌単眼の巨人が描かれたカード。テキスト確認……なるほど、コスト8。下手に手札に抱え込み続けても手札事故になるだけ、こうして手札コストにした方が早いわけか。
「にしても、1破棄でドロー枚数増加か。良い効果だな」
何より効果が『《ドロープロセス》でドローする枚数を増やす』というのが強い。このゲームには『相手の効果や宣言に反応して発動する』……俗に『誘発』と呼ばれる効果を持つカードは一定数存在している。その誘発の反応条件の中には『効果でのドロー』もあるのだが……あの【邪神虚空域】の効果はこの誘発が反応しない。あくまでゲームのルールとしてドローする処理なのに対して、『ドロー枚数を増やす』という効果だからな。誘発ケアが出来ているのは強いぞ。
『これにより、我はデッキからカードを2枚ドローする。そして《レディープロセス》でマナの最大値を+1し全回復、《メインプロセス》に入る! 早速じゃ、【深淵の】──────』
「あ、ストップ。そちらの《レディープロセス》で発動したい効果があるので巻き戻し処理お願いします」
『……うむ』
俺がそう言うと、『出鼻挫きやがって』とでも言いたげな様子で邪神が渋々ながらターンを《レディープロセス》開始前まで戻した。こういうのは相互に確認しながら進めんのがマナーだろうが、気を急いてるのは分かるが審判がいたら注意されるぞそれ。
『改めて、《レディープロセス》じゃ』
「相手の《レディープロセス》開始時、俺の『ワールドエリア』の【希煌龍都】の3つ目の効果を発揮する」
『効果3つ持ちの時空魔法じゃと?』
今時そう珍しくもないぞ、効果3つ持ちなんて。
「【希煌龍都】を手札に戻す」
その言葉と共に『ワールドエリア』のカードを取れば、俺の背後にあった龍たちの理想郷が霞のように消え去っていく。
『時空魔法を戻した……除去の回避か、いや……違うな?』
「この効果で戻した時、自分の手札にある時空魔法1枚をマナ1点支払って発動する。俺はこの効果で、今手札に戻した【希煌龍都】を再発動」
そして再び書き換わる戦場。龍の巣、超越種の交差点。規格外が集う場所の再臨だ。
「そして発動時、【希煌龍都】の効果を発揮」
『その効果は……クソッ、再利用か!』
「御明答。俺は手札から【孝行龍フィリアル】を廃棄場へ送り、デッキから【尽忠龍フェイスフル】を手札に。そして【愷悌龍フィアフル】を廃棄場へ送る」
これで仁義礼智孝悌忠信のうち、仁、孝、悌が廃棄場に。智がフィールドに。そして義と忠が手札に来た。後は……礼と信だな。そこに繋げるルートとなれば、この効果だ。
「続けて、廃棄場に送られた【フィリアル】と【フィアフル】の効果を発揮」
ガンガン回してガンガンマッチポンプ誘発と行こう。
『……我のターンなんじゃが』
「カードゲームなんて自分のデッキ回して気持ちよくなるゲームだろ」
『否定してやりたいが封印前は人類隷属させて遊んでたから何も言えん』
ぐぬぬ、と言いたげな邪神を他所に効果処理を行う。
「【フィリアル】は効果で廃棄場に送られた時、廃棄場の「ユニットカテゴリ:希龍」を持つカード1枚を消失させることでデッキから魔法カード1枚を手札に加える」
消失とは、『カードを消失区域に置くこと』。廃棄場とは違い再利用手段が極わずか、デッキタイプ次第では触れる手段が存在しない隔離領域だ。……それはそうとして。
『それアカンやつではないか?』
「アカンからコイツ1枚制限なんだよな……何で魔法カードのカテゴリ指定してねえんだよ……」
いやまあコイツ悪用して色々悪いコンボしてきたから表立って悪口言えないけども。楽しかったなぁ、【フィリアルワンキル】。またの名を【親孝行肩叩き撲殺ワンキル】。ネットでは『な~~~~~にが孝行じゃボケナス』『親不孝の間違いだろ』『誕生罪みてえな効果しやがって』『希望っつーか鬼謀』って悪口言われてるけど、俺は【フィリアル】好きだよ。強いし。
「それはそうとして、【フィリアル】の効果で【ヴェネボレンス】を消失。それにより、俺はデッキから【三位一体龍砲陣】を手札に加える」
他テーマと組み合わせるならともかく、今俺が使ってる【希龍】の純構築ならコイツが安牌だ。
「そして【フィアフル】の効果で、俺はデッキを上から5枚オープン。その中から「ユニットカテゴリ:希龍」を持つカード1枚を手札に加えられる」
『我のターンなんじゃが!?』
うっせ、気持ちはわかる。お互いプロセスの誘発処理で優先権のラリーしまくるから一段落つくころにはどっちがターンプレイヤーだったか忘れるんだよな。そんなことを考えながらも、デッキオープン。
1枚目、【龍皇再誕!】
2枚目、【仁愛龍ヴェネボレンス】
3枚目、【龍盟の血誓】
4枚目、【龍盟の血誓】
5枚目、【礼節龍カーテシー】
「……【カーテシー】を手札に。残りは破棄、廃棄場へ送る」
【希龍】の壊れその2、【フィアフル】。何がチートかって、コイツのサーチ効果って任意なんだよな。廃棄場に落として発揮して5枚捲って、『条件満たしてるカードはあるけどコイツは加えたくないので流します』って言えるの。テキストが『可能なら必ず』の『加える』じゃなくて『しても良い』の『加えられる』だから。なのでコイツを他テーマデッキに出張させて5枚確定廃棄場肥やしにするのが大流行した。そしてコイツの5枚捲りで【フィリアル】が出た日にはもう地獄だ。廃棄場に落として【フィリアル】の効果で【フィアフル】を消失して万能魔法サーチ。そりゃコイツら2匹揃って1枚制限の鬼規制飛ぶよなぁ……まあ【希龍】純構築してれば幾らでもサーチ繋げられるから誤差だし、こういうつよつよコンボに脳焼かれて狂った奴らは純【希龍】に汎用や他所のテーマ混ぜ物してこのアホ2匹に繋ぐルート確保しながらワンキル開拓するけど。正直そろそろデッキ投入禁止の完全収監されそうで怖いよ俺は。
「……もう良いぞ、ターン続けてくれ」
【ヴェネボレンス】は……使っても仕方ないし。
『うむ……いよいよ怖くなってきたな』
手遅れだよ。残念ながらこのカードゲームは降参に相互の了承が必要なので、俺のこと下僕にしようとしやがったお前の降参を認めるつもりはない。
『改めて《メインプロセス》、【深淵の番兵】を召喚!』
カード名:深淵の番兵
コスト:5
カードカテゴリ:ユニット
ユニットカテゴリ:虚無・眷属
AP:6000
BP:2
その言葉と共に現れたのは、青い石材で組み上げられた門番。テキストは……ん?
「コイツ、コスト5だぞ」
このゲームのマナシステムは、『最初の自分のターンは3点。その後自分の《レディープロセス》が来る度に上限を+1し全回復する』というものだ。そして今は先攻2ターン目、奴のマナは4点だ。コスト5の番兵を召喚出来るはずがない。『このターンの間だけ上限を無視してマナを増やす』類の効果も存在はしているが、別にそういうのを使った訳でもない……何かあるな?
『クク、驚くがいい……【邪神虚空域】の効果じゃ。「虚無/眷属」を持つユニットを召喚する時、自分フィールドの「虚無/眷属」ユニットの数だけコストを減らせる。この時、召喚するユニットが「虚無」と「眷属」の両方を持っていた時、代わりに「虚無/眷属」のユニット✕2だけコストを減らせるのじゃ』
ほう、コスト軽減か。誘発を避けられる手札交換効果と言い、あの時空魔法はめちゃくちゃ強いな。
『これにより、「虚無」と「眷属」両方を持つ【番兵】のコストは5-1✕2=3……問題なく召喚は可能じゃ!』
横並びにするほど大型も出しやすいわけだな。
『そして、召喚された【深淵の番兵】の効果! 貴様のユニット1体を手札に戻す! 対象は【ウィズダム】じゃ!』
その効果を受け、【ウィズダム】が手札に戻る。このゲームは破壊よりバウンスが安価だからな、安定択だ。
『《アタックプロセス》! 【深淵の祭司】、攻撃じゃ!』
指示に従い、フィールドを禁断の祭司が走る。マナは0、手札は……まあ今は問題ないか。
「ライフだ」
『【深淵の祭司】のBPは1、ライフを1つ砕く!』
跳び上がった祭司は杖の先に蒼黒の光を灯し、そこからレーザーのような攻撃を放ってくる!
「っぐ……痛ってェなあ!?」
攻撃を受けた瞬間、身体に痛みが走った。鋭い痛み、自分を構成する何かが欠けていくような感覚。……洒落になんねぇな。
「……呪いか何かか?」
『貴様に染み込む呪詛よ。ライフが尽きれば、その呪詛が貴様を染め上げ尽くし傀儡とする』
「面倒だ……まあいい、勝てばいい話だ。ライフが1点減ったので、『ライフエリア』の山札……『ライフデッキ』を上から1枚、『カウンターエリア』に表向きで置く」
このゲームの根幹を担うシステム『ライフ』と『カウンター』。初期ライフ20を示す『ライフデッキ』は、効果や相手の攻撃の『BP』に応じて減少する。そして減少した『ライフデッキ』は、その分だけ表向きで『カウンターエリア』へと置かれることになる。今回は【祭司】のBPが1だったので1枚移動だな。置かれたのは……【礼節龍カーテシー】か。悪くないな。
『我はこれでターンエンドじゃ』
「俺のターン……《スタートプロセス》、《ドロープロセス》。ドロー」
……来た。これで八徳勢揃いだな。
「《レディープロセス》。マナ上限を+1して4にし、全回復。そして《メインプロセス》」
手札は10枚。こんだけあれば何でも出来るな。
「手札から魔法カード【三位一体龍砲陣】の発動を宣言する。このカードは本来コスト4だが、発動の際に手札の「希龍」を最大3枚まで廃棄場に送ることで、送った数だけコストを減らせる」
『コスト軽減……そちらにもあったか!』
「なきゃ回んねえよ。俺は手札の【礼節龍カーテシー】と【智慧龍ウィズダム】、【義侠龍シバリー】を廃棄場へ送り、コストを-3。1マナ支払い発動する」
デッキのメインエンジンその2だ、威力は凄いぜ。その1は【希煌龍都】だが。
「手札または廃棄場から、コスト5以下の希龍を1マナ支払って召喚する。この時、手札のカードを廃棄場に送って発動していたなら、送った枚数につき召喚可能なコスト範囲を+1する」
『つまり……合計2マナで最大8コスト召喚じゃと!?』
「現代『SAW』はこれくらいやんねーとな」
大丈夫大丈夫。7コストが3体立つとかよりマシだから。
「っつーわけで、召喚するのはコイツだ。手札から来い、コスト6【信頼龍トラスト】!」
その言葉と共にフィールドに現れたのは、4枚の翼を持つ緑色の鱗の龍。コイツはその名の通り、『信頼』……龍と龍を繋ぐ龍だ。
カード名:信頼龍トラスト
コスト:6
カードカテゴリ:ユニット
ユニットカテゴリ:希龍
AP:8000
BP:2
「【トラスト】の召喚時効果! 手札、廃棄場、カウンターエリアから希龍を1マナで召喚する!」
『カウンターエリア』。ダメージを受けたライフデッキのカードが送られる場所であり、プレイヤーはこのカウンターエリアのカードを手札のカードと同様に使用することが出来る。手札ではないので手札破棄や手札封じの影響を受けないという強みがあるが、その最大の利点は一部のカードが持つ『カウンター効果』にある。簡単に言えば、『カウンターエリアから使用した時追加効果を得る』って代物だ。
「俺はカウンターエリアから、【カーテシー】を召喚!」
そして、【カーテシー】にはその『カウンター効果』がある。瀟洒な魔龍、闇に堕ちながら光を捨てない相反と矛盾の体現者。礼節司る【カーテシー】は、反撃の時──────均衡が崩れる瞬間が、一番爆ぜるのだから。
カード名:礼節龍カーテシー
コスト:3
カードカテゴリ:ユニット
ユニットカテゴリ:希龍
AP:4000
BP:1
「【カーテシー】の効果! 俺の『ライフデッキ』からカードを2枚、カウンターエリアを経由させずに直接廃棄場に落とす! そうした時、『ライフデッキ』からカードを2枚『カウンターエリア』へ落とす!」
そう言って、カウンターエリアへ送る2枚を捲る。
1枚目、【八徳極龍ライジング・ユナイト・ドラゴン】。
2枚目、【希龍の祈り】。
『ッ、自傷加速か!』
自傷加速。今回使用した【カーテシー】のような、自分のライフを減らしながら何かしらの恩恵を得る効果についての慣用句だ。カードの中には『ライフが一定数以下』であることを要求するのもあるが、自傷加速はその条件を能動的に満たしに行くことが出来る。そういうデッキタイプでもない限り、現環境ではほぼ全デッキが採用している効果だな。態々相手に削ってもらうの待つとかかったるいし、相手もわかってて削りに来る訳ないからな。テメェでテメェの腹切って殴るのが一番早い。
「そして【カーテシー】のカウンター効果! この効果で『カウンターエリア』にカウンター効果を持つカードが落ちた時、俺はデッキから2枚ドローする!」
今回カウンターエリアに落ちた2枚は、両方ともカウンター効果持ち。条件は満たされているので、2枚ドローだ。
「……リーサルラインまで押し込んでおきたいが」
このデッキのワンパン最大火力は精々10点、安定して届く期待値まで行くと7がギリだからなぁ。向こうの切腹期待……いや、少しくらいは削っとくか。
「となれば、《アタックプロセス》!」
【希煌龍都】の効果は……まだいいな。
「【カーテシー】で攻撃! 【トラスト】の効果で、俺のフィールドの希龍1体につきAPを+2000する、よってAPは合計8000!」
『……ふむ、ライフじゃ』
「BPは1点だ!」
黒龍が放った尻尾のなぎ払いが邪神に叩きつけられ、そのライフを1つ削り取る。
「プロセス継続、【トラスト】で攻撃宣言! 自身の効果でAP+4000! 合計AP12000だ!」
『洒落にならんな、ライフじゃ!』
信を名に冠する龍がその大口からブレスを放ち、今度はライフを2点削る。これで合計3のライフを削り……残りは17。こちらは1削られて、【カーテシー】で4削ってるから残りは15だ。
『くっ……ならば、ライフ減少でカウンターエリアに落とした【邪神の儀】のカウンター効果じゃ! このカードがライフエリアからカウンターエリアに置かれた時、相手の《アタックプロセス》ならばコストを支払わずに発動出来る!』
「カウンターエリアに落とされた時の踏み倒し効果か……!」
しかも自傷では使えない制約つき、そこそこの効果が飛んでくると見ていい。
『我はデッキより、我自身──────【混沌虚神イマジナリー・ケイオス】を手札に加える! そしてその後、我がデッキを2枚廃棄場へ!』
サーチと肥やしの両立、枚数こそ現環境と比較すりゃ足りんが当時は強かったんだろうってのが見て取れるな。
『カウンター効果の内容は"発動"じゃからの、使用した【邪神の儀】は廃棄場へ送られる』
「……《アタックプロセス》はこれで終了、《エンドプロセス》。俺はターン終了だ」
動き自体は旧世代のカード故にアドバンテージが少ない。……そして行き着くフィニッシャー、エースカードがアレだ。余程のしくじりをしない限りは大丈夫だろうが、念には念を入れていこう。
第4ターン(後攻2ターン目)終了
先攻 邪神=混沌虚神イマジナリー・ケイオス
デッキ:残り29枚
手札:4枚(【混沌虚神イマジナリー・ケイオス】、他3枚)
マナ:1/4
ライフ:17
カウンターエリア:2
廃棄場:5枚(【虚空の戦鬼】、【邪神の儀】、他3枚)
消失区域:0
ワールドエリア:【邪神虚空域】
フィールド:【深淵の祭司】AP:2000
【深淵の番兵】AP:6000
後攻 識崎 想真
デッキ:残り20枚
手札:7枚(【尽忠龍フェイスフル】、他6枚)
マナ:1/4
ライフ:15
カウンターエリア:2(【八徳極龍ライジング・ユナイト・ドラゴン】、【希龍の祈り】)
廃棄場:12枚(【孝行龍フィリアル】、【愷悌龍フィアフル】、【龍皇再誕!】、【仁愛龍ヴェネボレンス】、【龍盟の血誓】×2、【三位一体龍砲陣】、【礼節龍カーテシー】、【智慧龍ウィズダム】、【義侠龍シバリー】、他2枚)
消失区域:1(【仁愛龍ヴェネボレンス】)
ワールドエリア:【希煌龍都】
フィールド:【信頼龍トラスト】AP:8000
【礼節龍カーテシー】AP:4000




