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異世界リロード 〜没落貴族ですが、現代FPS知識で戦場を無双します〜  作者: 雪消無
第7章 : 『魔族領域の秘密と、転生者の遺産』

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調停者

翌朝、レンたちは本格的にヘテロジェニア連合の実態調査を開始した。


「まずは市民の生活を観察しよう」


レンが狼獣人の姿で提案した。昨夜のすき焼きで人知れず涙を流した件は、仲間たちには内緒にしておきたかった。


「そうですね。表面だけでは真実は見えません」


エレノアが魔族の翼を軽く動かしながら同意した。

一行は街の各地区を回ることにした。まず向かったのは、魔族が多く住む高級住宅街だった。


「立派な家ばかりですね」


リシアが兎の耳をぴくぴく動かしながら感嘆した。

石造りの豪邸が立ち並び、庭には美しい花が咲いている。魔族たちは上質な服を着て、召使いを従えて歩いている。


「聖典の教えで、上下水道も完備されてるのね」


カティアが猫の尻尾を揺らしながら観察した。確かに、街角には清潔な水道設備があり、下水処理システムも整っている。


「医療制度も充実してるみたいだな」


セレスティアが竜人族の角を撫でながら、病院の看板を見上げた。「聖典医術院」と書かれている。


「教育システムも近代的です」


イリヤが精霊族らしい美しい声で指摘した。学校からは子供たちの元気な声が聞こえてくる。

しかし、獣人族の多い下町に足を向けると、様子は一変した。


「あれ?雰囲気が違う」


リシアが不安そうに呟いた。

建物は質素で、道路も舗装が行き届いていない。獣人族の人々は魔族に比べて明らかに質素な服装をしており、多くが肉体労働に従事している様子だった。


「表面的な平等の裏に、明確な格差があるな」


レンが冷静に分析した。

街角で荷物を運ぶ熊の獣人族、建設現場で働く狼の獣人族。一方で、魔族は商店主や役人といった、より地位の高い職業に就いている。


「これが共生国家の現実か」


エレノアが苦い表情を浮かべた。

その時、前方で騒ぎが起きた。


「何事だ?」


レンたちが駆け寄ると、魔族の商人と獣人族の労働者が言い争っている。


「約束が違う!賃金はもっと高いはずだった!」


狼の獣人族の男が怒鳴っている。


「黙れ、獣人風情が。貴様らには十分な額を払っている」


角の生えた魔族の商人が冷たく言い放った。


「でも、魔族の労働者には倍の賃金を...」


「当然だ。我々魔族の方が優秀なのだからな」


周囲の人々が注目している。しかし、誰も仲裁に入ろうとしない。


「あの魔族、ひどいことを言ってますね」


リシアが憤慨した。


「でも、これが現実なのかもしれません」


イリヤが悲しそうに呟いた。

レンは決断した。FPS知識を応用した調停術を使う時だ。


「すみません」


レンが二人の間に割って入った。


「何だ、貴様は?」


魔族の商人が警戒した。


「私は調停を専門とする者です。お二人の話を聞かせていただけませんか?」


レンは落ち着いた声で言った。FPSゲームでチーム内の諍いを仲裁した経験が活きる。


「まず、契約の内容を確認しましょう。当初の約束はどのようなものでしたか?」


レンが獣人族の男に尋ねる。


「荷物運びの仕事で、一日銀貨三枚と言われました」


「では、実際に支払われた額は?」


「銀貨一枚だけです」


レンが魔族の商人に向き直る。


「契約書はありますか?」


商人が慌てたような表情を見せた。


「そ、そんなものは...口約束だ」


「なるほど。では、目撃者はいますか?」


レンが周囲を見回すと、何人かの獣人族が手を挙げた。


「私たちも同じ条件で雇われました」


「確かに銀貨三枚と言われました」


魔族の商人の立場が悪くなった。


「しかし」


レンが続けた。


「単純に商人さんを責めるだけでは解決になりません。なぜ約束を変更したのか、理由があるはずです」


商人が驚いたような顔をした。


「実は...最近、競合他社に押されて利益が出なくて...」


「つまり、経営が苦しいということですね」


レンが理解を示した。


「それなら、解決策があります」


レンはFPSゲームのリソース管理の考え方を応用した。


「まず、今回は約束通り銀貨三枚を支払う。その代わり、今後の契約では事前に条件を明確にし、お互いが納得できる額で合意する」


「そして」


レンが獣人族の男に向き直った。


「あなた方も、ただ文句を言うだけでなく、商人さんの経営状況を理解し、協力できることがあれば提案してみてください」


「そうでないと、仕事をくれる商人が潰れてしまい、結局のところ皆さんの雇い主がいなくなります」


「そうなれば、また一から雇い主を探さなければいけなくなります」


両者が考え込んだ。


「確かに...私たちも商売の厳しさは分かります」


獣人族の男が言った。


「済まなかった。約束は守るべきだった」


魔族の商人も頭を下げた。

その時、リシアが前に出た。


「お二人とも、きっと家族のために頑張ってるんですよね」


リシアの光魔法が温かく輝いた。その光は、争っていた二人の心を和ませる効果があった。


「そうだ...息子に良い教育を受けさせたくて」


獣人族の男が涙ぐんだ。


「私も...娘の医療費が必要で」


魔族の商人も感情を露わにした。

イリヤとカティアが近づいた。


「きっと、お互いを理解し合えば、もっと良い関係が築けます」


イリヤの神聖魔法が癒しの力を放った。


「そうですね。一緒に頑張りましょう」


カティアの禁呪魔法も、争いの感情を和らげる効果を発揮した。結果的に、二人は握手を交わし、今後も協力していくことを約束した。


「すごいな、レナード」


セレスティアが感心した。


「君の調停術、見事だった」


周囲の人々からも拍手が起こった。しかし、この光景を離れた場所から冷ややかに見つめる影があった。


「ほう...面白い連中が現れたな」


角の生えた立派な服装の魔族が呟いた。その男の名はアークヴァルド・ダークフェル。純血主義を掲げる上級貴族だった。


「調べさせろ。あの狼獣人、ただ者ではない」


レンたちの活躍は、予想以上に注目を集めていた。

宿に戻ると、ユキが興奮気味に話しかけてきた。


「皆さん、すごい評判ですよ!街の人たちが『調停の達人』って呼んでます」


「そんな大げさな」


レンが苦笑いした。


「いえいえ、本当です。それで...」


ユキが声を潜めた。続きを宿の主人が引き継ぐ。


「上級貴族の方から、お声がかかりました」


「上級貴族?」


エレノアが興味深そうに尋ねた。


「はい。明日、お屋敷にお招きしたいと」


レンが仲間たちと目を合わせた。


「いよいよ権力の中枢に近づけるな」


「ええ。でも、気をつけましょう」


エレノアが警戒を怠らなかった。


「相手の正体が分からない以上、罠の可能性もあります」


「そうだな、警戒しよう」


「ところで、ご主人。今日の献立はなんですか?」


完全に胃袋を掴まれたレンなのだった…。


その夜、レンたちは明日の計画を練った。しかし、まだ彼らは知らなかった。この招待が、魔王との運命的な出会いに繋がることを。


そして、純血主義者アークヴァルドの暗躍が既に始まっていることも。

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