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レオンハルト・フォン・アークライト

少し遡り、レン達が王都防衛シュミレーションで今までの常識を覆す戦略をみせ評価をあげていた頃、1人の王子がレンに注目していた。


そのレンに注目した王子、第3王子であるレオンハルト・フォン・アークライトは王族らしい品格と威厳を全身から醸し出していた。流れるような金髪は完璧に整えられ、その瞳は、感情を読み取らせない冷たい翡翠色だ。

顔立ちは端正だが、常に張り詰めたような緊張感をまとっており、親しみやすさよりも畏怖を周りに感じさせた。


彼の身につける衣装は、最高級の布地と宝飾品で飾られているが過剰な派手さはなく、洗練されたエレガンスを追求している。彼の立ち居振る舞いは、一瞬の隙もなくまるで完璧にプログラムされた人形のようだ。

その完璧な外見の裏に、他人を駒としか見なさない傲慢さと、理想のためなら手段を選ばない冷酷さを隠している。


その性格も王位継承権を持つ王族の中でも、特に頭脳明晰で冷酷なことで知られている。


彼は表向きは優雅で穏やかな人物として振る舞い、王都の貴族たちからの人望も厚い。しかし、その内面は、完璧な秩序と効率を至上とする、完璧主義者パーフェクショニストだ。


彼は自分の計画を狂わせるイレギュラーな存在を何よりも嫌う。


彼の信条は、「王国の安定は、完璧な統治と、揺るぎない秩序によってのみもたらされる」というもの。

そのため、彼は剣や魔法の才能よりも戦略や政治力といった知的な力を重んじている。彼にとって、「人々はチェスの駒」であり彼自身の理想郷を築くための道具に過ぎない。


そんなある時、突如レンがセリナとリシアと共に王都に現れた。防衛シミュレーションで活躍し、その名声が広まるとレオンハルトはすぐに彼に興味を抱いた。

最初は、レンの戦術を「単なる奇策」と見なしていたが、その効果が予想以上であると知るや否や、レンを危険人物と認定した。


レオンハルトは、レンの戦術がこの世界の常識を破壊し、自分が築こうとしている完璧な秩序を脅かすノイズになりうると考えた。

彼はレンの戦術の核心を理解するため、そして自身の完璧な力を誇示するために、即座にレンとの公開模擬戦を提案したのだった。


模擬戦の当日、王都の訓練場には国王や多くの貴族たちが集まっていた。観客席の中央に座るレオンハルトは、静かにレンの部隊を眺めている。


「レナード・アルバート卿、あなたの活躍はこの王都でも噂になっています。その奇策、この目で見せていただきましょう」


レオンハルトは、マイク代わりに魔法で声を増幅させ、穏やかながらも威圧的な言葉を投げかけた。レンは、まるでゲームのイベントシーンのようにその言葉を受け止めた。


模擬戦が始まると、レオンハルトは自らが編成した部隊に、レンの戦術を模倣した動きをさせた。それは、レンの「FPS知識」を完璧にコピーしたかのような動きで、レンの部隊を翻弄する。


「貴様は、その力で人々の心を掴んでいるようだが、その知識は、私のような完璧な頭脳の前では、ただのデータに過ぎない」


レオンハルトは、静かにそう呟いた。彼の目は、勝利を確信しているかのように冷ややかに輝いている。彼は、レンが単なる「チート使い」であると見抜き、その知識を完全に理解し利用することで、自分の優位性を証明しようとしていた。


レンは、彼の完璧な模倣戦術に一瞬驚きながらも、ニヤリと笑った。


(なるほどな。こいつは、俺の『プレイスタイル』を完璧に研究してきた『上級者ハイランカー』ってわけか。だが、こいつはまだ、俺の本当の『強み』を知らない)


レンの瞳に、新たな闘志の光が宿った。それは、「完璧なデータ」だけでは決して再現できない、「人間」としての彼の強さだった。


レオンハルトの部隊は、レンの戦術を完璧に模倣していた。突出した部隊による陽動『デコイ』、背後からの挟み撃ち『クロスファイア』、そして高台からの狙撃『スナイピング』。それは、レンのFPS知識をそのままコピーしたかのような動きだった。


「どうした、レナード卿、まさか自分の手札が読まれていたとは思っていなかったのでしょう?」


レオンハルトは、余裕の笑みを浮かべていた。彼の部隊は、レンの部隊を徐々に追い詰めていく。リシアとセリナは、敵が自分たちの動きを先読みしていることに戸惑い、連携が乱れ始めていた。


しかし、レンは静かにニヤリと笑った。


(こいつは、俺の『スキル』を模倣したつもりでいる。だが、俺の本当の『強み』は、『FPS』じゃない。『ゲーム』なんだよ)


レンは、仲間たちに指示を出した。それは、レオンハルトの完璧な戦術とは真逆の、非効率的で無意味な動きだった。


「リシア、魔法で木々を燃やしてくれ! セリナ、敵の陣形を無視して、突っ込め!」


レンの指示に仲間たちは戸惑いながらも従った。燃え盛る木々から立ち上る煙は、レオンハルト部隊の視界を遮った。セリナの無謀な突撃は、敵の連携を分断した。


「馬鹿な……! なぜ、そのような無意味な動きを…?」


レオンハルトは、レンの行動が理解できなかった。彼の完璧な思考回路は、「効率」と「最適解」を追求する。レンの非合理的な動きは、彼の思考の外側にあった。


(そう、これこそが俺の『強み』だ。俺は『遊び』として戦うことができる。だが、こいつは『完璧』というルールに縛られている。俺の『遊び』は、こいつの『ルール』を破壊する!)


レンは、リシアとセリナにアイコンタクトを送り、言葉ではなく心で連携した。それは、互いを信頼し共に勝利を目指してきたからこそ生まれた『絆』だった。


リシアは、兄の意図を瞬時に理解した。燃え盛る木々から、光魔法で作り出した「擬似的な矢」を放ち、敵の注意を引きつけた。それは、彼女が兄から教わった「エイム練習」の成果だった。


セリナは、レンの指示を信じ、敵陣の奥深くへと突撃した。彼女は完璧な戦術に固執するレオンハルトの部隊が、一人の突出した強者に弱いことを知っていた。

彼女の剣は、敵を翻弄しレオンハルトの完璧な陣形を崩壊させていった。


それは、彼女がレンとの模擬戦を通じて「個の力」だけでなく「場の破壊」という戦術を学んだ証だった。


レンは、この戦いで自分が単なる「FPS知識」の伝道者ではないと悟った。仲間の個々の才能と絆を、「ゲームの攻略」ではなく、「戦場の芸術」へと昇華させていた。


レンは完璧な勝利だけを求めるレオンハルトとは違い、仲間と共に予測不能な「ゲーム」を楽しむことが本当の『強さ』なのだと知った。


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