発音
楽しんで頂けたら幸いです。
数日後、英語の授業での出来事。
英語という科目自体は、洋平は特に好きでも嫌いでもなかった。しかし、クラス分けされた授業でも洋平は瀬奈と同じ教室であったため、最近は好きになりつつある。もはや彼女の姿を見ることは、洋平にとって必要不可欠なことになっていたのだ。
「英文和訳してきた?」
教室から英語の課題についての会話が聞こえてくる。
「一応やったけどさー、当てられんのマジだるいわ」
教室には重く、どこか間延びした雰囲気が漂っていた。
授業が始まると、英語教師は次々と生徒を当てていく。
指された生徒らはいわゆるカタカナ英語の発音で英文を読み上げた。よほどやる気が出ないのだろう。
瀬奈の番も来た。
「道谷、次の英文を読んで、和訳してみろ」
「はい。……Practice makes perfect。習うより慣れろ、です」
洋平はそれを聞きながら、「道谷さんって英語の発音上手かったんだな」とか、「意訳するとそのことわざになるのか」とか、「そういやLとRの違いって何だったっけな」などと、瀬奈に視線を向けながら素直な感想を心に抱いた。
だが、教室の反応は違う。
「んっ……」
「ふふっ……」
クスクス、と軽い笑い声が聞こえてきた。
何かおかしいことを言ったか?一瞬、洋平の頭に疑問符が浮かぶ。瀬奈の発音はむしろ上手い方だ。
だが、すぐに気づく。クラスメイトたちは、「Rの発音が上手すぎた」ことに笑っていたのだ。
「Rやば…」
そんな小声も耳に届く。洋平は、腹の底から怒りがこみ上げてきた。
瀬奈はどうしているかと目線をやる。傷付いてはいないだろうか。長い髪が顔を隠していて、表情はよく見えない。もしかすると、わざと隠しているのかもしれない。彼女の気持ちを思うと、洋平の胸が痛んだ。
「静かに。意味はそれで合ってる。じゃあ次は…」
いや、お前も何かフォローせんかい、と心の中で教師に突っ込んだが、それよりも「自分が言うべきだ」と洋平は思った。
ざわつく教室に向かって洋平はため息を吐きながら、
「何笑ってんだよ…」
と苛立ちを込めて言った。
思いのほか声が通ったのか、その瞬間、教室は水を打ったように静まり返った。
瀬奈は、恐る恐る洋平の方に視線を向けた。
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