第107話 三大天使降臨(Part2)
【桜花】メンバーと相談した結果、リュウ、ケイ、LIZ、ミミの4人と一緒にアイリたちは浮島方面へと歩いていく。
「そういえば、LIZさんと一緒に冒険するの久しぶりな気がする」
「そうね。たまには素材採取以外のこともしようと思ってついてきちゃった。足手まといかしら?」
「そんなことないです」
「そうそう。ワンパン火力は任せた」
「それじゃあ、期待に応えないとね」
気合十分といった様子で一行が歩いていくと、プカプカと浮いている島々にたどり着くが、浮島へと続く道は見当たらない。
「徒歩は無理そうだね」
「ってことは飛行スキルかモンスターに騎乗だね。ケイはリュウとミミちゃんを、私とLIZさんは火の鳥を温存してワイバーンで一緒に飛ぶよ」
「わかったで。ちび太郎とワイバーンのワイ太郎に乗りや~」
アイリは飛行スキルがあるので単独で飛行し、途切れた道から一番近い【イチノ島】に到着する。青々とした木々は生えているが、地上のような広大な森というわけではなく、ちょっとした雑木林程度。探索範囲もそこまで広くない。
「スコップ作ってきたから、このあたりの土を回収できるけどそれだけで良いの?」
「天空の土をいくつか集めないといけないから、ここだけだと厳しいかも」
「それなら、いろんなとこ回ってみよう」
「そうだね。まずは採取ポイントからどれだけの土を取ることができるか確かめよう。リュウ、力仕事任せた」
「おう、まかせとき」
LIZと一緒にスコップでガッガッと土を掘って回収袋の中へと詰め込んでいく。袋いっぱいに詰め込んだところで、「これ以上のは採取ができません」と表示される。
「次はどこに行く?」
「順当にいけばニノ島かしら」
「ううん。全部回っていたら効率が悪いから、奥にあるゴノ島へ行こう。あそこは大きな島だし、それに採取ポイントも多い。敵もわきやすいけど、こっちはフルメンバー。そう簡単には負けないはず」
「そうしよう!」
今度はここから離れた場所にあるゴノ島へと向かっていくと、その道中水色の空飛ぶ魚、スカイフィッシュの群れと遭遇する。スカイフィッシュが彼女たちを認識した瞬間、その姿を消す。
「あれ、逃げちゃった?」
「戦闘中扱いだから、逃げてないよ」
ユーリの忠告を受けたと同時に背後から何かぶつかって、アイリのHPを削っていく。何がぶつかったのかと振り返るも、そこには何もない。
「この天界が物理不遇と言われている原因その2、スカイフィッシュ戦。アイリ、ポイズンミストお願い」
「良いけど、毒にならないよ」
「大丈夫」
「わかった。ポイズンミスト」
毒の霧を放つとスカイフィッシュの動きの軌跡がくっきり見え始め、その速い動きに驚くばかりだ。
「見えたなら、こっちのもの!乱舞の太刀!」
火の鳥から跳んだユーリがスカイフィッシュに負けないほどの速度で切り込んでいき、真っ二つにしていく。だが、彼女の最速の攻撃である乱舞の太刀でも、避けるスカイフィッシュがいる時点で攻撃を当てるのは相当に難しいのが容易にわかる。
「見えても当てるのが難しい……その分、防御が低いから火力の低い私でもワンパンできるのは楽なんだけど」
「こういうときこそ、ヘイト稼ぎで敵をひとまとめにできるタンクの見せ場や。ちょいと敵のヘイトを集めて――」
「あっ……」
ヘイトを稼ぎすぎたリュウと乗っていたワイバーンに向かって突撃していくスカイフィッシュによって、乗っていたワイバーンが落とされる。飛行スキルがないリュウが真っ逆さまに落下していくが、すぐさまワイバーンを召喚して、ことなきを得る。
「わかった? ここでヘイト稼ぎすると逆に不利になるの」
「初めて来たけど、なんちゅう場所や!底意地悪いわ」
「普段とは違った対応が求められるのがこのスカイフィッシュ戦」
「長く戦いそうなので、リジェネフィールドを使います」
ミミが一定時間、持続回復する結界を張って攻撃を耐えやすくすると、ヒールヘイトでミミと同乗者のケイを狙っていく。
「ちび太郎、一網打尽や!」
ケイのアクアドラゴンが水のブレスを放つもスイスイと躱していくスカイフィッシュ。これにはたまらず、ケイがスピードアップを使ってスカイフィッシュの突撃から逃れようとするも、徐々に差を詰められていく。
「なんちゅう速さや。こんなんどうやって倒すんや」
「ここは私に任せて。こっちに引き付けてくれば何とかなるかも」
「わかったで」
「あと3,2,1……レインソード!」
ケイの背後を追いかけていたスカイフィッシュに向けて無数の剣が天より降り注ぐ。あまりにも膨大な量に逃げ場を失ったスカイフィッシュはどんどん串刺しになっていく。
「鍛冶師専用の広範囲攻撃、使えるでしょう。装備をいっぱい作らないと攻撃範囲が狭いけど」
「LIZさん、頼りになる」
「伊達に装備を作っているわけじゃないわよ」
「アイリとミミちゃんはサポート、リュウとケイが囮になって、私とLIZさんでスカイフィッシュを倒すよ」
各々の役割を果たしていく【桜花】メンバーにスカイフィッシュは翻弄され、ついには全滅していく。ようやく戦闘が終わったことで、近くにある名もなき小島で一息つく。
「ワイバーン召喚できる魔法をもらっていなかったら、マジできつい」
「知力が低いから対して強くないワイバーンしか呼び出せないけど、ワイバーンさまさまと思ったの初めてや」
「ウチみたいなテイマーかサモナーが活躍できるのはええわ」
少し寝転がったり、軽いストレッチをしたりして自由に過ごして休息をとっていたとき、上空から何か飛来してくる。敵だと思った一行は直ちに起き上がって空を飛び始める。
飛来してきたのは天馬にのった赤い甲冑を着た女騎士。彼女の背中にも大きな翼が生えており、上位の天使だとわかる。
「私の名は女神アテナ様に仕えし、大天使ミカエルである」
「ミカエル!ラファエル、ガブリエルに並ぶ三大天使の一人!」
「私のことを知っているならば話は早い。ルシフェルとラファエルが認めた者とはどれほどの実力があるか確かめてみよう」
天馬に跨ったミカエルは手にしたランスでリュウに向かって突撃していく。あまりにもまっすぐな軌道。それは彼女の油断、いや言い換えるならばこの程度の攻撃を防げるかという彼女なりの煽りかもしれない。
「防御バフかけて耐えてやるで!」
「潔し!だが、ひよっこではな!」
ミカエルのランスに一撃でシールドを砕かれ、胸元を貫かれてリタイアになる。あまりの強さに各自が一斉に距離を取り始める。
「距離を取るのは定石だ。悪くない。だが、それは同格の場合だけだ!」
「リヴァイアサンに進化して迎撃や!」
今度は手にした盾から放たれたビームがケイを襲う。ケイのインテリジェンスアップを受けたリヴァイアサンが迎撃するも拮抗すら許されず、どんどんと押しつぶされていく。
「ミミ、飛び降り!」
「はい!」
ミミがリヴァイアサンの下に来ていたユーリのワイバーンに飛び移るも、ケイはリヴァイアサンと共に落ちる。
「守ったら負ける。攻めないと」
「ユーリちゃん、一緒に行くよ!」
「OK!」
「カースインフェルノ!」
「火遁・葬送業火の術!」
ミカエルの背後を取ったアイリが挟み撃ちにする形で彼女たちの攻撃がさく裂する。だが、彼女の周囲にバリアが張られ、二人の攻撃は水泡に帰す。
「このアイギスの盾がある限り、私にダメージを与えることはできん!そして、後ろのやつが厄介と見た」
「アイリ、よけて!」
「わかっているけど……後ろを取るために【高速飛行】を使ったから振り切れない!」
「落ちろ!」
閃光とともに駆け抜けるミカエルのスピアを避ける方法のないアイリも瞬時にリタイアとなる。戦闘開始して1分もたたないうちにパーティーの半分も落とされてしまうほどの圧倒的な実力差を【桜花】に見せつける。
「所詮はこの程度か」
「つ、強すぎる……」
「ユーリお姉ちゃん、【神の奇跡】を使います」
「わかった。どうせ負けるなら、最後の大博打、やってみようじゃないの!」
「ふっ、これほどの逆境でまだ諦めぬか。その闘志だけは認めてやろう」
「神の奇跡!」
ミミが光の粒子となってその姿を変えていく。それはすなわちサイコロ。カランコロンと空中で転がるサイコロが出した目は3だ。すると、LIZの身体からオーラが噴き出て赤く光り始める。
「何が起こっている!?」
「よくわからないけど、出たところ勝負よ!」
LIZが力強く跳躍すると、消えたかと思うほどの速度でミカエルに肉薄する。あまりの出来事にすぐさま反応できなかったミカエルは振り回されたハンマーが直撃する。
「はやい!? これほどの手を残していたのか!」
「残ったMPで口寄せの術、火の鳥!LIZさん、足場に!」
「わかったわ!」
「さっきは不意を突かれたが、アイギスの盾がある限り、私は無敵だ!」
「あいにくだけど、装備を作れるってことは壊すことにも熟知しているということよ。バリアブレイク!」
パリンと音を立ててアイギスが放つバリアが粉砕される。そして、目の前にはLIZのハンマーが差し迫ってくる。それを反射的にランスで受け止める。
「この程度の攻撃で!」
「ウェポンブレイク!」
ランスにひびが入っていき、粉砕する。彼女に攻撃を防ぐすべはなく、振り下ろされたハンマーが再度直撃する。HPゲージ自体はそこまで減っていないが、頭から血が流れ、かなりの手負いに見える。
「……私に1度ならず2度までもダメージを与えるとは。彼らが認めるだけのことはある。降参だ」
ミカエルが降参したことで戦闘が終了し、リタイアしたメンバーがHP1で復活する。すると、ミカエルが話があるというので、再び小島に降り立つ【桜花】メンバー。
「さてと、単刀直入に聞こう。この天界を見て、お前たちはどう思った?」
「どうって……いわれても……」
「質問の仕方が悪かった。人間たちが強いられているのをみて、どう思った」
「ひどい仕打ちだと思いました」
「横暴すぎるよね」
「そのとおりだ。返す言葉もない」
「あら? ミカエルさんは反対の立場なの?」
「当然だ。強者とは弱者を庇護するためにある。彼らのように罪無き者を罰しようなどともってのほかだ!」
「でも、堕天使じゃないですよね」
「疑うのも無理はない。だが、私の主君であるアテナ様もルシフェルの横暴にはご立腹だ。ゆえに私は神々を裏切ってはいない」
「なるほどね。それじゃあ、私たちと協力してくれるわけ?」
「立場上、表立ってはできん。だが、私の装備を直すのに一度アテナ様のところに戻らなければならん。客人として招き入れるくらいは可能だろう」
ミカエルに導かれて、【桜花】は浮島の中を突き進んでいくのであった。




