発表会
未開の地との交流が始まって以後、人型の幻獣目が人間界に来る事はごく稀にある。それは未開の地のすぐ近くでのお祭りであったり、彼ら彼女らが来るのを前提とした観光地にのみ現れる。しかしその前例を覆すように、何人もの人型の幻獣目が私の発表会に現れたのだ。ドラゴン園のトカゲビトの職員、以前のトカゲビトのガイド、学者と思わしき者、そして当然、人間の同業者。トカゲビトの職員以外の人型の幻獣目は人間界の言葉を理解できるらしかった。
私の行ってきた研究は、サンプル数が一つしか示せていないが、多くの人々の興味を引いていた。それだけ、人間、人型の幻獣目にとって自分たち以外に自我を持つ生物がいるとは想像していなかったのだ。少しずつジョークを交えながら研究の説明を行い、そしてピカリュウの映像を見せた。とても地味な映像だったが、これに対しほとんどが感嘆の声をあげ、拍手をしていた。ただ二人を除いて。
トカゲビトの職員が急に立ち上がり、叫んだ。何を叫んだのかわからなかったが、すぐにガイドが通訳した。
「ドラゴンに自分自身をわかるはずがない! 自我も思考力も何もない下等な生き物なのだ!」
そう言っていたらしい。さらに壇上まで登ってきて、発表の最中にも関わらず、私を襲ってきた。明確な殺意を持っていたのがわかった。
しかし私は、死ななかった。
一緒に研究に付き合ってくれたドラゴンたちがトカゲビトの職員から守ってくれたのだ。最後に「今回協力してくれたスタッフ」としてお披露目しようとスタンバイしてもらってていたのだが、どうやら一足早く到着したようだ。研究チームの一人と、ドラゴンたちが私の身の危険を感じ、そして彼が咄嗟にドラゴン達を檻から出したのだ。トカゲビトの職員は腕に火傷を負い、ふくらはぎの一部を噛みちぎられたのだった。
ドラゴン園でのドラゴンの扱いは、トカゲビトの国では問題視されていたらしい。暴力的な調教を行い、残忍な扱いをしていたのだ。人間界の方で拘束しておき、その後身柄をトカゲビトの国の警察…みたいな方々に引き渡した。
トカゲビトの職員たちは、ドラゴンを奴隷のように扱っていた。なので私の研究が正しいとなるとドラゴン園の立場がさらに悪くなると思っていたのだ。逆に研究が失敗すれば自我は無いと証明され、ドラゴン園の行いは問題ではなくなると踏んでいた、と数週間経ってから聞いた。
今回の研究で、人間、未開の地の者にとって幻獣目との向き合い方が変わってくるだろう。
また、私の次の研究テーマは「ドラゴンは情を持つのか」になるのだが、それはもう私の中で目星はついている。




