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金髪の聖女は、死霊を三度踏みつける  作者: tosa


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最終劇の始まり

 黒い甲冑の死霊達に空が埋め尽くされている。一時そう思わせる程、死霊達の数は尋常では無かった。


「な、なんて数の死霊だ!?」


 俺は驚愕の声を上げた。ハーガットは黒い羽を生やした改造死霊達を、予め空に配置していたのだ。


「来るぞ!メルダ!ビンセント!」


 ノホットが僚友に警告する。空に鎮座していた改造死霊達は、浮遊するノホット達に急降下して来た。


「姑息な手を!まとめて焼き払ってやるわ!」


 金髪の髪を振り乱し、メルダが杖から火炎を放つ。ノホット、ビンセントもメルダに倣い、三人の長大な炎の柱が改造死霊達を焼き尽くして行く。


 空の改良死霊達はその半数を失った。残りの半数は動きを止め降下する様子は無かった。


「死霊でも恐れを抱くのかしら?来ないのなら、こちらから出向くまでよ」


 メルダが力強く宣言した時、異変は起きた。メルダの背後に、突然改造死霊が出現したのだ。


 その光景に誰もが一瞬絶句した。改造死霊はメルダに抱きつき、そして自爆した。


「メ、メルダ!!」


 絶叫するノホットの背後に、改造死霊が現れ同様に自爆する。そして最後はビンセントもメルダ、ノホットと同じ自爆攻撃を受けた。


 三人は見動き一つせず地上に落下して行く。突然の惨劇に、俺はただ絶句するだけだった。


「キント!動きを止めないで!物質移動。あの白衣の男の仕業よ!!」


 後ろからレファンヌの声が聞こえた。俺は数瞬で過去の戦いの記憶を掘り起こす。物質を瞬時に意のままに移動させる呪文。


 ······アミルダを殺し死霊に変えた男。白衣の悪魔ロイエンスか!!


「アークレイはノホットの所へ!マコムはビンセント!俺はメルダの所へ行く!!」


 俺は左右の仲間に叫び、メルダの落ちた場所へ駆けて行く。地上の死霊達が俺の前に立ち塞がる。


 俺はラークシャサを振り抜く。紅い光に包まれた神喰いの一撃は、数十体の死霊を吹き飛ばした。


 死霊の頭。腕。足。人体の一部が雨のように落ちて来るが俺は構わず走り出す。


「おお。半身死霊の少年よ。相変わらずその神喰いの剣は素晴らしいな」


 ハーガットの感嘆の声を無視し、俺はひたすらメルダの元へ近づいて行く。その時だった。


 空に待機していた黒羽の改造死霊達が突然地上に向けて殺到して来た。空と地上。両方の死霊が自爆攻撃をするつもりか!?


 俺が絶望感に陥った時、この闘技場全体が白銀色の光に包まれる。すると、地上の死霊達が次々と断末魔の声を上げ蒸発していく。


 空から降下して来た黒羽死霊も同様に光に触れ四散して行く。こ、これは治癒の呪文を対死霊に使ったのか!?


 こんな事が出来るのは!俺はレファンヌを見た。金髪の聖女は、銀の杖を地に着け治癒の呪文を放っていた。


 降下して来た黒羽死霊達も白銀色の光に触れ同じ運命を辿った。


 ······同じだ。初めてレファンヌに出会った時も、彼女はこの光で死霊達を消失させた。レファンヌはゆっくりと歩き出す。


 その歩む先には、数多の命を弄んだ元凶が立っている。


「見事な力だ金髪の聖女よ。だが、その呪文は相当の魔力を消費すると見えるが?」


 ハーガットは細い顎に細い指を当てながらレファンヌを分析する。


「人の魔力の心配より、自分の命の心配をしたらどう?まあ、心配した所でアンタが死ぬ事には変わらないけどね」


 冷たい口調でレファンヌは狂気王に死の予告をする。金髪の聖女は凄絶と言っていい表情をしていた。


 想い人ミデットを二度に渡って死霊に変えたのだ。レファンヌの怒りは俺にはとても計り知れなかった。


 その時、レファンヌの背後に白い白衣を着た何者かが突然現れた。それは、自らの身体を物質移動させたロイエンスだった。


「自らが出てくるとはな。死霊達が全滅して手立てが無くなったか?元勇者の仲間よ」


 後方にいたメルサルが直ぐ様漆黒の鞭を振るう。だが、ロイエンスは再び姿を消した。鞭は空を切り、レファンヌの背中に直撃すると思われた。


「同じ手を何度も使うなんて芸の無い奴ね」


 レファンヌが冷たく言い捨てる。ロイエンスの行動を予測していたメルサルは、鞭の軌道を変えてレファンヌから外した。


 白衣の悪魔は空中に現れた。その白衣の左の袖は風に揺れていた。ロイエンスは俺に切られ、左腕を失っているのだ。


「······他の連中はともかく。ヒズケイトやベロスを倒すとはな」


 ロイエンスは指で眼鏡を直しながらそう言った。かつて世界を救う為に一緒に戦った仲間の死に、この白衣の悪魔も思う所があるのだろうか?


 だが、その真意は眼鏡に遮られ伺え無かった。


「ヒズケイトから聞いたわよ。元勇者一行の一人のアンタが、どうやったらそんなザマになれるのかしら?」


 レファンヌが冷笑しながらロイエンスを見上げる。


「······お前達などには理解出来ん。信じた正義の先にあった絶望。その絶望から私達を救ってくれたのはハーガット様だ。ハーガット様は教えてくれた。この世界の正しい姿を」


 ロイエンスは右手に握った杖をレファンヌに向けながらそう言った。ハーガットの言う正しい世界。それは、人間や魔族を根絶やしにする地獄の世界だ。


「さっさと仲間の後を追うといいわ。寂しがる事は無いわよ。アンタを救ってくれたハーガットも直ぐに同じ所へ送ってやるわ」


 レファンヌは言うと同時に、杖をロイエンスに向ける。白衣の悪魔は、口の端を釣り上げ杖をレファンヌに向けた。



 

 

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