『灰』の医師
病院の屋上。白衣を着た男は煙草を口に咥え、フェンスに背中を預け上空をぼんやり眺めていた。雲と煙草の煙が混じり合う様をただただ無心で。手術の後、夜勤明け、余りにも重過ぎる重圧と悪過ぎる環境で、肺がダメージを受けると理解していても止められない。
「このざまで患者にはアレを止めろコレを止めろと指図するんだ……誰が言ってんだって話だよなぁ……」
「なーに独り言を言ってるんですか?灰塚先生!」
「あれ、聖名さん居たの……?」
「今、来たんです!」
看護師の群青 聖名が呆れた様子で続ける。
「そんなに吸ってたら早死しますよー?」
「はは……まぁ僕は充分生きたよ」
根元ギリギリまで吸った煙草の最後の一吸い。携帯灰皿に煙草を押し付けると二本目は聖名の無言の圧で断念。やれやれと肩を竦めてみせる。
「……はぁ。灰塚先生が居なくなったらこの病院は回らないんですからねー?」
「そうだね、肝に銘じておくよ」
能力が公になってから物理的な怪我人が増え全国的に病院が多忙になり慢性的な人手不足・病床不足に陥っていた。
しかしこの男、灰塚 鋭治は能力を用いる事で常人には不可能な程の手術量をこなしてみせていた。
この現状を引き起こしたのは恐らくは警察……僕も能力とはいえ、普通の医師である僕には何も出来やしない。
力を持ちながらも自身を卑下・過小評価している灰塚には自ら動こうとする意志は微塵も無かった。
灰塚の後ろ姿は何処か諦念を感じさせていた。聖名は後ろに着いて行きながらその背中を黙って見詰めている。
灰塚が能力者だという事には4月1日、能力者が一斉に覚醒した当日には既に気が付いていた。普段から共に行動し、共に手術に立ち会い、苦楽を共にしてきたからこそ、そしてそんな彼にずっと片想いをして見続けて来たから……何より、聖名自身も能力に覚醒していたから、灰塚の些細な変化にも気付けた。
今後何が起ころうと、灰塚は私が守る――。そう心に決め、次の手術へと二人は歩みを進めていく。
設定。
灰塚 鋭治。
医師。灰色の髪、襟足を刈り上げたツーブロック。垂れ目で睫毛は長め。スクエア型の眼鏡。白衣の下は灰色で統一。煙草が無いと死ぬヘビースモーカー。
群青 聖名
看護師。ジト目がデフォ。瞳は群青色、黒髪ボブで片側だけ耳に掛けている。群青色のインナーカラー。仕事時は上だけ群青色、下は白。




