女神様ハ残酷ダ
『世界』とは一つでは無い。幾多もの世界が存在している。能力等何も無い世界、死後は無だけの世界、死後に天国や地獄にて存在は残り続ける世界、死後は輪廻転生し循環し続ける世界、剣と魔法のファンタジー世界、此処に列挙し切れない程の世界。それ等を総称し『全界』と呼称されている。
その数多ある世界を統括しているのが『神』様だった。
主に『女神』様が管理しているが一部『男神』様も関わっている。全界には『異世界転生』と『異世界転移』という制度が存在している。前者は死者を、後者は生者を元いた世界とは別の世界へと神の力で移動させる事。
ソレを行う理由は様々だが、全界のバランサーである神にとっては重大な役目だった。
しかし、神様も全員が全員善人である筈も無く……。
「……アー。クッソ詰まんねー。『下』に降りて好き勝手してる女神共も居やがるならアタシも下に降りてー。降りてイーよなー?『エリス嬢』」
燃えるような赤い瞳とサイドテールの髪の女神は椅子に踏ん反り返っていた。目の前の机に両の脚を投げ出して天井を見上げながら文句を垂れている。
「良い訳が無いでしょう?わたし達まで好き勝手しては全界のバランスが崩れてしまう。バランサーとしての役目は果たさないと。理解したなら真面目にやりなさい、『エリスさん』」
冷たさをも感じさせる青い瞳とウェーブさせた胸元程の髪の女神は対照的に真面目に着席し女神の役目に取り組んでいた。
この空間は床も壁も天井も全てが宇宙空間のように真っ暗闇だった。彼女達の眼の前には幾つもの小さな世界が拡がっていた。これらは只のミニチュアの模型では無い。彼女達が今眼の前の小さな世界を握り潰してしまったら、その世界は実際に消滅してしまうのだ。
それ程までに女神とは力を持った存在だった。
「でも〜、あ〜しも一寸思うんだよね〜。あ〜し達だけ負担多過ぎワロタ〜って感じで草〜」
森林を思わせる緑の瞳とゆるふわなボブヘアの女神は棒付きのキャンディを口から出すと舌先で舐めながら机の上に座っていた。
「だよなー?『エリス氏』とは同意見だわー。つーかこんなに沢山世界必要か?っつー話だよなー」
「それな〜。まぢで要らんくな〜い?特に能力とかな〜んにも無い世界ってさ〜?一つあれば充分過ぎな〜い?異世界転生と異世界転移させる人材を選ぶ為の只の牧場ぢゃ〜ん?一つくらい消しちゃわな〜い?」
「エリス氏も、大変なのはわたしも同じ。それにわたし達の一存で勝手に世界を減らしたらバランスに歪みが生じるでしょう」
「エリス嬢は相変わらず頭が固過ぎて草〜」
「貴女達が無責任なだけでしょうっ」
「おやおや、君達?仲良くしないとイケないよ?僕達は『僕達』なのだからね」
高貴さを漂わせる紫の瞳と優雅に揺れる長い前髪の男装の女神は掌の半分程の黒の本革のハーフグローブを口で嵌めながら何処からとも無く歩いて来る。
「え、『エリス卿』!?エリス卿は本日も美しい……わたし鼻血が出そう……」
既に出ているのだが、青髪のエリス本人は気付けない程に紫髪のエリスに見惚れていた。
「エリス嬢大興奮で草〜」
「仕方の無い子だね。僕が拭いてあげる」
「ちゅき……♡」
「つーか真面目な話、減らさねーとアタシ達の気力も持たねーよー」
「そうだね、エリスさんの言う事も理解出来るよ。だから、取り敢えず世界を一つ減らそうと思っているんだ」
「っ!?え、エリス卿!?しかし、わたし達の一存では――」
「そう。だから別の女神に渡してしまうんだ」
「お〜ん?世界を渡しちゃうって事〜?」
「そういう事さ☆」
「ぢゅき――っ!!」
青髪のエリスは失神した。椅子から落ちる前に紫髪のエリスが彼女をお姫様抱っこして受け止める。
「既に手筈は整えてあるんだ」
其処に二人が入って来る。
「ヤッホヤッホー!ウチが彼女を呼んできたゾー!」
真夏の向日葵のように明るい黄色の瞳と腰ほどの長さのツインテールの女神は元気に喋り出した。
「有難う『エリスちゃん』。そして待っていたよ。
『灰麗』」
「貴様等が妾を呼ぶとは意外じゃのう。
しかし……本当に良いのかのう?妾は一度譲り受けた物は二度と手放すつもりは無いのじゃが?」
髪も瞳も肌の色さえも、その全てが虚無のような灰色をしている幼女は女神とは到底思えぬ下衆な表情を浮かべている。
「あー、全然問題ねーぞー。寧ろさっさと持って行ってくれー。転生牧場の世界なんざこんなに必要無ー」
赤髪のエリスは世界の一つを灰麗に投げて寄越した。
「おっとっと。雑に扱うで無いわ。『コレ』はもう妾の大切な玩具なんじゃからな……♡」
「ナハハー!灰麗ちゃん遊び道具増えて良かったネー!ウチも嬉しくなって来ちゃうナー!」
黄色の髪のエリスが嬉し気に飛び跳ねる度にツインテールが可愛く跳ねていた。
「それにしてもエリス卿も残酷な事考えるよね〜?あ〜し引いちゃう〜」
「何も残酷なんかじゃあないよ。何もせずに世界そのものがある日一瞬で消えてしまう……その方が残酷だとは思わないかい?それならたとえ『ゲーム』であったとしても、平等にチャンスを与えてあげるのが慈悲ってものなのさ」
「そのゲームがとても慈悲とは思えなくて草〜」
「では妾はそろそろ失礼するのじゃ」
「あいあ〜い。モニターは有るから暇潰しにゲームは見といてあげるね〜」
「暇潰しとか言ってるエリス氏も充分残酷じゃねーか」
エリス達の空間から出て自分の空間へと戻った灰麗は手に持つ世界を覗き込んでいた。
「……キヒ♡妾の玩具……♡」
手の中の世界は4月の1日……エイプリルフールだった。能力も無ければモンスターの類も居ない平和な現実世界。その世界へと灰麗は魔力を流し込む。それは本来で有れば女神が異世界転生者や異世界転移者へと授けるチート能力……『賜り物』。
ある日突然、普通の世界に異能者が現れるのである……。
「さぁ、ゲームスタート……♡」
設定
灰麗
女神。髪も瞳も肌の色さえも、その全てが虚無のような灰色の幼女。髪はボサボサで後ろは膝丈までのロング。服は綺麗だが女神とは思えないラフなもの。ダボダボのパンツにダボダボのTシャツ。脚は裸足。
エリス・カメリア=ブーゲンビリア
赤髪のエリス。燃えるような赤い瞳とサイドテールの髪の女神。一人称は『アタシ』。他エリスからは『エリスさん』と呼ばれる。顔はツリ目。歯が若干鋭目。赤のノースリーブジャケットに黒のタンクトップ。赤のショーツに黒スパッツ。黒の厚底ヒールブーツ。ネイルは赤。面倒臭がりで大雑把。
エリス・サルビア=ヒヤシンス
青髪のエリス。冷たさをも感じさせる青い瞳とウェーブさせた胸元程の髪の女神。一人称は『わたし』。他エリスからは『エリス嬢』と呼ばれる。ややタレ目で睫毛が長い。青のベレー帽。リボンのような青いチョーカー。袖と裾がフリルの白のブラウスを後ろへ下げて項を見せている。インナーは青のトップス。パンツはテロンテロンの紺色のワイドパンツ。黒のハイヒール。ネイルは青。真面目な性格。エリス卿にメロついていて鼻血を出しがち。
エリス・アイビー=スプルース
緑髪のエリス。森林を思わせる緑の瞳とゆるふわなボブヘアの女神。一人称は『あ〜し』。他エリスからは『エリス氏』と呼ばれる。切れ長で若干目尻がツリ気味。とある世界の『平成ギャル』にハマっており、制服姿。緑のカーディガンに白シャツ、首には赤のリボン。膝上丈の黒のスカートに白のルーズソックス。短い黒のスパッツで完全ガードしている。靴は厚底のローファー。ネイルは緑。オタク丸出しの口調をしている。常に棒付きの丸いキャンディを舐めている。
エリス・ピアニー=ウィスタリア
紫髪のエリス。高貴さを漂わせる紫の瞳と優雅に揺れる長い前髪の男装の女神。一人称は『僕』。他エリスからは『エリス卿』と呼ばれる。後ろ髪は刈り上げ。白のフリルシャツに紫色で細身のジャケットとパンツ。黒のネクタイには紫色の藤の花の刺繍。掌が半分見える黒の本革ハーフグローブ。黒のソックスに薄い紫の本革のヒールブーツ。ネイルは紫。王子様気質。
エリス・サフラン=サンフラワー
黄色の髪のエリス。真夏の向日葵のように明るい黄色の瞳と腰ほどの長さのツインテールの女神。一人称は『ウチ』。他エリスからは『エリスちゃん』と呼ばれる。サイズの合っていないどデカいブッカブカのフーディを着ている。黒がメインで蛍光イエローがデザインで入っている。一見何も履いていないように見えるが下は股下5センチの黒のショーツ。黒のニーハイヒールブーツ。フーディとブーツには蛍光イエローのベルト付きで紐が垂れているサブカル系。黒マスクを常に顎に着けている。首には黒と蛍光イエローのヘッドホンをしているがファッションらしく音楽は聴いていない。常に明るいムードメーカー。




