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大阪府警AI制御室  作者: velvetcondor guild


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第七話:司令塔、現場へ――此花の咆哮

大阪府警AI制御室


第七話:司令塔、現場へ――此花の咆哮


1. 聖域の委託

「……川藤、あとの『イザナギ』は任せたぞ。俺が戻るまで、町田くんの端末からの逆パッチを最優先で通せ。上層部からの停止命令は……全部『通信障害』で握りつぶせ」

大阪府警本部地下3階、AI制御室。

サミエル・大貫は、長年愛用していたFBIのロゴ入りマグカップをデスクに置くと、コンソールの前に座る痩身の男、川藤明彦の肩を強く叩いた。

川藤は、2030年の大阪において数少ない「AIの癖を読み切る男」だ。

彼は、ブルーライトに照らされた無数のコードを見つめながら、不敵にニヤリと笑う。

「……了解ですよ、管理官。システム上の『バグ(町田と佐藤)』を守るために、イザナギの論理回路を少しばかり『お馬鹿さん』にしておきます。……でも、早く戻ってくださいよ。私の心臓、そんなに長く持ちませんから」

サミエルは答えず、壁のホルスターから愛用の45口径を手に取った。

最新の電磁パルス銃ではない。火薬の爆発で弾丸を飛ばす、物理の極致。

「俺も、たまには『現場の空気』を吸わないと、正義の感度が鈍るんでね」


2. 此花、長屋の包囲網

此花区、高架下。

かつての「下町の風情」を残すこのエリアに、突如として無機質な電子音が鳴り響いた。

町田由美と佐藤健太郎が身を潜める周囲を、大阪府警の特殊追跡ドローン隊が包囲しつつあった。

「……由美さん、気づいて。ドローンの編隊が、AIの『自動追跡モード』に切り替わった。……上層部は、僕たちを『抹消すべきバグ』として完全に認定したんだ」

佐藤が、煤まみれの顔を窓の隙間に向けた。

彼の肉眼が見たのは、路地裏に降り立つ、全身を強化プラスチックの装甲で固めた「タクティカル・ポリス」たちの影だ。

夢洲のゴミ捨て場から逃げ延びた二人を、今度は「組織の正義」が追い詰める。

「……そんな。……私たちの命は、この街の平和を維持するための『端数』だっていうの!?」

由美がタブレットを握りしめる。

その時、隠れていた、長屋の扉が、外から乱暴に、しかしどこか聞き覚えのあるリズムで蹴破られた。

「……おいおい、二人とも。そんなに悲観的な顔をするな。……大阪の警察は、まだ死んじゃいないぞ」


3. サミエル・大貫、降臨

逆光の中に立ったのは、ダークコートを翻すサミエル・大貫だった。

彼の背後では、ハルエの軽トラックがエンジン音を轟かせ、追手のドローンを物理的に弾き飛ばしている。

「……サミエル管理官! なぜ、あなたがここに!」

由美が驚愕の声を上げる。

サミエルは長屋に足を踏み入れると、一ノ瀬凛が潜んでいた影に向かって、迷いなく銃口を向けた。

「凛。……『余興』の時間は終わりだ。……君がこの二人に仕掛けた罠、そしてカジノのデータを盗み出した痕跡。……すべて、俺が現場で『精算』させてもらう」

影の中から、一ノ瀬凛がゆっくりと姿を現す。

彼女の銀髪は、ドローンのサーチライトを反射して妖しく輝いていた。

「あら、サミエル。……ついに冷たい制御室から降りてきたのね。……FBI仕込みの正義、この此花のドブネズミの匂いに耐えられるかしら?」

「……耐えるさ。俺の『オカン』が作ってくれた土手焼きの匂いの方が、システムよりよっぽど信頼できるんでね」

サミエルは、由美と佐藤を背後に庇い、凛と対峙した。


4. 此花の乱戦――精算の始まり

「川藤、聞こえるか。……今から此花区全域のAI監視網を、30秒だけ『オフライン』にしろ。……物理的な掃除クリーニングを始める」

『……了解。30秒ですよ、管理官。……これ、私のボーナスじゃ精算しきれませんからね!』

川藤の返信と同時に、此花の街を照らしていた最新の街灯が一斉に消え、ドローンたちが制御を失って虚空を彷徨い始めた。

暗闇と沈黙が、一瞬だけ街を支配する。

「……行くぞ、佐藤、町田! 凛を捕まえ、この街の『歪んだ記憶データ』を奪い返す! ……これは大阪府警の、いや、俺たち自身のプライドをかけた精算だ!」

サミエルが叫び、暗闇の中で銃声が響いた。

2030年、大阪。

北は東三国から南は住之江まで。

すべてを管理していたはずのAIが一時的に「盲目」となったその隙間を、一人の管理官、一人のエンジニア、一人の巡査長、そして一人のオペレーターの意志が、弾丸よりも速く駆け抜けていく。


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