拾われた日
私は物心ついた頃には、すでにここ——夜西財閥に拾われていた。
先ほども言った通り、その理由は知らない。
正しくは、聞かされていないだけだ。
聞けば、少しくらいは教えてくれるのではないかと思ったこともある。
けれど、私はすぐにその考えを捨てた。
義父上のことだから私には絶対に教えてはくれないだろう。
——ここまで来たのだ。もう、はっきりと言ってしまおう。
私は、周囲の人間から陰湿な嫌がらせを受けている。
そして私の周りには、加害者か傍観者しかいなかった。
義父上は、私の何かを見抜いて拾ったのだろう。
有能だと判断したのかもしれない。
* * *
私は拾われて間もなく、この辺りでもっとも名の知れた令嬢学校へ受験させられた。
小等部、中等部、高等部まで備えられた名門校で、一般家庭ではまず通えないような場所らしい。
「落ちれば、お前に価値はない」——そう言われ、私は必死に勉強へと没頭した。
朝食はもちろん、時には夕食さえ抜きながら、文字通り死に物狂いで机に向かった。
——けれど、駄目だった。
合否が義父上の耳に入った瞬間、私は終わったのだと悟った。
その顔は、まさに鬼のようだった。
こめかみには血管が浮き上がり、眉間には今にも裂けそうなほど深い皺が刻まれていた。
——あの日、私は拾われて初めて殴られた。
……いろいろな人に。
義父上と義母上。姉たち。
時には、使用人にまで手を上げられた。
あの日から、地獄が始まった。
最初は、無理な話だと思っていた。
拾われる以前の私は、まともな教育など受けておらず、学力は壊滅的だった。
文字も言葉も、満足に理解できないような状態だったのだ。
そんなところから、たった一ヶ月で偏差値70を超える学校へ行けと言われても。
無理に決まっているじゃないか。
けれど、それを口にすることはなかった。
言えば、殺される気がしたからだ。
——それほどまでに、私は夜西家に絶望していた。
次の日には、私はもう生きていないだろう——そう思っていた。
……だが、私は生きていた。
当たり前のように冷淡な側近が私を起こしに来て、朝食もないまま一日が始まる。
それは、いつも通りの朝だった。
ただ、その日だけは珍しく書斎へ呼び出された。
そして義父上に意味の分からないことを告げられ——なぜか、私は学校へ通うことになった。
本当に意味が分からなかった。
私は近くに控えていた義父上の側近へ、恐る恐る問いかけた。
「旦那様は、あなた方のために多額の金を積んでくださったのです。
夜西家の三女が私立学校を受験したことは、すでに各所へ知れ渡っております。
もし不合格となれば、それは夜西家の名に泥を塗ることになる。
だからこそ、旦那様は高額な寄付金まで支払い、あなた方を入学させてくださったのですよ」
——と、冷たく言い放たれた。
なるほど、と私は妙に納得してしまった。
確かに、不合格にでもなれば、夜西家の面目は丸潰れだ。
それが世間に知れ渡るとなれば、なおさら。
——これが、私が家庭内で暴力や嫌がらせを受けるようになった理由。
そして、学校へ通うことになった経緯だ。




