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夜巡りの星継者〜月に祈った少女〜  作者: 月城羽蘭
プロローグ 星の序章
2/2

拾われた日

 私は物心ついた頃には、すでにここ——夜西財閥に拾われていた。

先ほども言った通り、その理由は知らない。

正しくは、聞かされていないだけだ。


 聞けば、少しくらいは教えてくれるのではないかと思ったこともある。

けれど、私はすぐにその考えを捨てた。

義父上のことだから私には絶対に教えてはくれないだろう。


——ここまで来たのだ。もう、はっきりと言ってしまおう。


 私は、周囲の人間から陰湿な嫌がらせを受けている。

そして私の周りには、加害者か傍観者しかいなかった。


義父上は、私の何かを見抜いて拾ったのだろう。

有能だと判断したのかもしれない。




 * * *




 私は拾われて間もなく、この辺りでもっとも名の知れた令嬢学校へ受験させられた。

小等部、中等部、高等部まで備えられた名門校で、一般家庭ではまず通えないような場所らしい。


 「落ちれば、お前に価値はない」——そう言われ、私は必死に勉強へと没頭した。

朝食はもちろん、時には夕食さえ抜きながら、文字通り死に物狂いで机に向かった。


 ——けれど、駄目だった。

合否が義父上の耳に入った瞬間、私は終わったのだと悟った。


 その顔は、まさに鬼のようだった。

こめかみには血管が浮き上がり、眉間には今にも裂けそうなほど深い皺が刻まれていた。


 ——あの日、私は拾われて初めて殴られた。


……いろいろな人に。


 義父上と義母上。姉たち。

時には、使用人にまで手を上げられた。

あの日から、地獄が始まった。


 最初は、無理な話だと思っていた。


 拾われる以前の私は、まともな教育など受けておらず、学力は壊滅的だった。

文字も言葉も、満足に理解できないような状態だったのだ。


 そんなところから、たった一ヶ月で偏差値70を超える学校へ行けと言われても。

無理に決まっているじゃないか。


 けれど、それを口にすることはなかった。

言えば、殺される気がしたからだ。

——それほどまでに、私は夜西家に絶望していた。


 次の日には、私はもう生きていないだろう——そう思っていた。

……だが、私は生きていた。


 当たり前のように冷淡な側近が私を起こしに来て、朝食もないまま一日が始まる。

それは、いつも通りの朝だった。


 ただ、その日だけは珍しく書斎へ呼び出された。

そして義父上に意味の分からないことを告げられ——なぜか、私は学校へ通うことになった。


 本当に意味が分からなかった。

私は近くに控えていた義父上の側近へ、恐る恐る問いかけた。


「旦那様は、あなた方のために多額の金を積んでくださったのです。

夜西家の三女が私立学校を受験したことは、すでに各所へ知れ渡っております。

もし不合格となれば、それは夜西家の名に泥を塗ることになる。

だからこそ、旦那様は高額な寄付金まで支払い、あなた方を入学させてくださったのですよ」


——と、冷たく言い放たれた。


 なるほど、と私は妙に納得してしまった。

確かに、不合格にでもなれば、夜西家の面目は丸潰れだ。

それが世間に知れ渡るとなれば、なおさら。




 ——これが、私が家庭内で暴力や嫌がらせを受けるようになった理由。

そして、学校へ通うことになった経緯だ。




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