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婚約破棄されたので冒険者になります

作者:彼名輪
 王都最大の夜会で告げられたのは、祝福ではなく「婚約破棄」だった。

 公爵令嬢イリスは、涙で庇護を乞う“妹”リーナと、体面を繕う王太子、波紋を呑み込む両親を前に、ひとつだけ静かに決める――
家を燃やす怒りではなく、縁を守るために自ら遠ざかる道を選ぶ、と。

 身分を伏せ、新しい名「リス」で踏み出した先は、冒険者の世界。
 派手な栄光ではなく、退路を作り、仲間を守り、地味で確かな仕事を積み重ねる日々だ。
 初任務の失敗を抱えた肩の痛みも、見知らぬ少年を背負って歩いた温度も、すべてが次の一歩の糧になる。

 やがて渓谷の討伐で、寡黙な騎士アルバートと共闘し、「名もなき英雄譚」は尾ひれをつけて王都へ届く。
 復縁を迫る王太子、嫉妬に笑む妹、速すぎる噂――渦の中心に立ちながら、イリスは揺れない。
「決めた者は、悔いも糧に変える」。

 国境では古き魔獣が目覚め、騎士団とギルドの総力戦が始まる。
 情報と退路を繋ぐ要として走り抜き、彼女はひとつの戦いを終わらせる。

 凱旋後、父から届く手紙は「家より先に父でありたい」と綴り、イリスは自分の答えを選ぶ――
 冒険者として、生き続けることを。

 やがて訪れる求婚は華やぎの言葉ではなく、責務を分け合う誓い。
「君となら剣を誤らない」。

 新たな肩書は奇妙でまっすぐ――“冒険者公爵夫人”。
 彼女は現場に立ち、家と街と「名もなき人の時間」を守る。

 掲示板に掲げたのは、若き者のための「退路班」募集札。
 温かいスープの湯気のように、人の善意が灯へと育つ世界で、奪われたはずの人生は、選び取った未来へと書き換わっていく。

 剣と知恵と誇りで、帰る道を作る物語。
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