第22話:忍び寄る闇と新たな決意
王都支部の執務室に重い空気が漂っていた。
アキラは、先ほど聞いたばかりの衝撃の情報を頭の中で必死に整理しようとしていた。
(あのアホ王子……まさか敵対する可能性があるなんて……!)
冷や汗が背中を伝う。
彼は、異世界に来てからの短い間に、数多くの理不尽を経験してきた。
だが、今回はそれとは比べものにならないほど、大きな渦に巻き込まれようとしている。
「……レオン様。敵の動きについて、詳しく教えていただけますか?」
リリスが、落ち着いた声で尋ねた。
レオンは地図の上に指を滑らせながら答える。
「クラウゼル家の商隊を襲撃した部隊は、かなり訓練された集団だ。偶発的な盗賊団じゃない。おそらく、どこかの貴族か組織が裏で糸を引いている。そして、その黒幕が王子と繋がっている可能性がある……」
「……厄介なことになったわね」
リリスは静かに目を伏せた。
その横顔には、彼女なりの覚悟がにじんでいた。
アキラは唇を噛みしめた。
(リリス様には、辛い思いをさせたくない……!)
「……ハロルドさん、今後の対策は?」
アキラの問いに、ハロルドは深々とうなずいた。
「まずは、リリス様の安全確保を最優先といたします。そして、王都内で味方になり得る貴族たちへの働きかけを始めましょう」
「でも、敵が内部にいるなら、うかつに動けないわね……」
リリスは椅子にもたれかかり、難しい表情を浮かべる。
レオンも腕を組んで考え込んだ。
「少なくとも、今はまだ動くべきじゃない。まずは情報を集めるべきだ。焦った方が負ける。」
「……わかりました。慎重に動きましょう」
リリスがうなずく。
その時、アキラは、ふと自分の拳を握り締めていることに気づいた。
(ブラック企業時代、俺はただ耐えるだけだった。だけど……)
(今度は違う。守りたいものがある。)
「俺もできる限り協力します!」
アキラが力強く言うと、リリスは驚いた顔をして、すぐに柔らかく笑った。
「ええ、頼りにしてるわよ、アキラ」
その微笑みは、アキラの胸に温かいものを灯した。
──だが、この時、彼らはまだ知らなかった。
王都に渦巻く陰謀は、彼らの想像を遥かに超えるものだったことを──。
そして、次なる波乱の幕が、静かに上がろうとしていた。




