第20話:覚悟の証と沈黙の剣
剣戟の音が鳴り響く中、アキラはぐらつく足をなんとか踏みとどまらせた。既に息は荒く、全身の筋肉が軋んでいる。
「くっ……体が、思うように動かない……」
アキラの脳裏には、リリスの声がよぎる。
——私は……あなたが無事でいてくれることのほうが——。
その一言が、今の彼を支えていた。
グレイは目を細めながら、剣を下げたまま構えていた。
「……大した根性だ、アンタ。まさかここまでやるとは思わなかったぜ」
アキラは笑う余裕もなく、ふらつく足で立ち続ける。
「まだ……終わってません……!」
「いや、もう十分だ」
グレイはゆっくりと剣を地面に突いた。
「ここらで引いておけ。お前の意地、十分伝わった」
「……?」
観客たちはざわめいた。何が起こっているのか理解が追いつかない。
「俺は本気でぶつかった。お前も、命を張った。それで十分だろ?」
グレイはそう言ってアキラに背を向けた。
「この勝負、引き分けだ。俺はそれで構わねぇ」
「……っ」
アキラはその言葉に、胸の奥が熱くなるのを感じた。震える手で木剣を握りしめたまま、静かに頭を下げる。
——会場が、静かに湧いた。
一部の観客は戸惑い、一部は感動し、一部は大声で称賛した。
「おい……見たか?」「あの教育係、引き分けだってよ!」「奇跡じゃないか……!」
リリスは目元をぬぐいながら微笑んだ。
「ほんと、バカね……でも、よくやったわ」
隣ではエリオット王子がニヤリと笑っていた。
「面白い。ますます気になるな、あの男」
一方、グレイは退場しながら、背中越しに一言だけ投げかけた。
「おい、お前……もっと強くなれ。俺と再戦する日を楽しみにしてるぜ」
その声に、アキラは力なく微笑んだ。
「……もう、二度とやりたくないです……」
観客の笑いと拍手に包まれながら、アキラの戦いは、ひとまず幕を下ろした。




