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星の賢者と召喚された姉と俺  作者: 秋見 京也
不帰都市の領主 編
18/33

18話 グウロさんの転移と演奏者

 どうやらグウロが外で待っているらしいので、出発する。昨日渡し忘れたらしきご飯代などをしっかりと手渡し、フロディは「いってらっしゃいませ……」と見送りした。


 グウロの背中は馬車よりも速くて快適だ。セイカも迷子にならないし、ちょうどいい。


「グウロさん、不帰都市ってこの世界のどこらへんにあるんだ?」

「ガウ!(ない!)」

「ないのか!?」

「ガウガウ(この世界には、ない)」


 ヨウキの質問に即答するグウロ。ではどこに向かっているのだろうか。


「ガウガウ(誰も巻き込まない所まで離れてから転移するのだ)」

「転移?」

「ガウガウ(ヨウキ様、不帰都市は世界樹ではなく"星"に依存している、言わば異世界なのだ)」


 世界を越えるためには転移する必要があるそうだ。


「異世界に来たのにさらに異世界に行くってことだね」

「ふ、複雑だな」


 グウロの説明に出てきた"星"とは一体なんだろうか。ヨウキは聞いてみた。


「なー、グウロさん、星って?」

「ガウガウ(昨夜、一際大きく眩しく瞬いている星を目にしなかったか?)」

「寝る前に窓から見えたね」

「見えたな」


 グウロの説明では、不帰都市は"星"の賢者である魔王が創った世界のため、"星"に頼って存在している……らしい。

 ヨウキにはさっぱりわからなかった。


「ガウガウ(簡単に説明すると……"星"は偉大な力を宿しているということだ)」

「なるほど!」


 セイカはヨウキの顔を見て、よくわかってないだろうなと確信した。


「走っていけたら、帰れる都市なのにね」

「ほんとだよな」


 森の中まで来てグウロは足を止めた。生えている植物を見る限り、グウロのいた地底都市へと向かうときに馬車で通った辺りだろう。

 人里から離れている場所らしく、人はいない。


「ガウガウ(星を治める賢者よ 飢える者グウロに応えて 空間を噛み砕く牙を与えよ)」


 グウロは金色の炎を纏った犬歯で何もない場所を噛み千切り、出来た空間の穴を爪で広げた。

 紙が破られたような金の裂け目はグウロが通れるほどの大きさとなった。


「ガウガウ(これより先は不帰都市だ。吾輩にも行くことはできるが帰ることは叶わん。よろしいか?)」

「「うん!」」


 片や愉快そうに、片や覚悟した面持ちで返事をした。


「ガウガウ(では必ず領主の異常を直そう)」


 グウロは金の空間の裂け目に入った。



 * * *



「!」


 何者かが無理やり世界に穴を開けて入ってきたことを感じ取って、赤い帽子の少女はヴァイオリンを演奏する手を止めた。


「あ……れ? あたし、なんで……?」


 少女は自分でも信じられない、と言いたげにヴァイオリンと手を交互に見た。


「あぁ、そんな……!」


 少女のいる広場には目を虚ろにした沢山の人がおり、おそらく観客として演奏を聞いていたことがわかる。しかし、これも問題なのだが、それ以上に知らない顔がかなりの人数いることが問題だ。

 把握できていないことは不帰都市に正規の手順で入って来ていないということを意味する。侵入してきたか、あるいは……


「あたしが……呼びこんだってこと。還さなきゃ、今すぐに!」


 ドクン

 せっかく取り戻した理性がまた剥がれ落ちていく感覚と激しいめまいに襲われる少女。頭を押さえて「あうぅ……」と苦しむ。


 顔をあげたとき、少女の目はその場に留まり続けているオーディエンスたちと同じ、虚ろな目になっていた。


 観客は多い方がいいから、もっと呼ばなくちゃ。

 もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっともっともっともっと――


 あたりには再びヴァイオリンの音が響き始めて光が現れた。この世界でのお迎えと言われる、人を連れた金色の光が。

グウロでも帰っては来られないらしい……さすが不帰都市。

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