第二百七話 心配したのが間違いだった
《覗き見》の魔術で映しだされた現在の王都は壮絶な戦場と化していた。
王都の街と空を埋め尽くして襲い来るは数千にもおよぶ天聖機械と魔神の群れ。
王城にて迎え撃つはこの島に残った最後の千人の民。
内乱の起こり得ぬこの国の王城に、なぜこれほど堅牢な城壁が用意されていたのか。
円卓がなぜ王城の最も高い塔にあるのか。
すべてはこの時のためだったのだ。
固く閉ざした城門の上――最前線とも言えるその場所で、総指揮官であるエドワード・コーンウォールが直剣を軍配代わりに指揮を執っていた。
「怯むな! 今しばらくの辛抱ぞ!」
鼓舞する彼の周囲では諸侯騎士団が鳥形天聖機械や黒い翼で空を飛ぶ魔神たちを相手に弩や大槍で奮戦している。
その中には彼の四人の子息もいた。末の子供――まだ十代半ばの少年が城門に襲い来る鳥形天聖機械の一体を大槍で突き落としてから進言する。
「父上、王城まで下がりましょう! すでに城壁を突破した敵は多数! このままでは挟撃の危険が!」
「まだだ。まだ持たせよ。ここを放棄すれば十分な時間は稼げん」
油断なく城下に目を向けたまま、冷静に答えるエドワード・コーンウォール。
彼の背後の上空から巨大な鷲型戦略級天聖機械が襲来する。
エドワードは振り向きざまに魔力を帯びた直剣を上段から振るい、敵を一刀両断した。その全身からは戦闘時のリクサと同じように白いオーラが湯気のように立ち昇っている。
齢六十を超えながら、エドワードは全盛期を超える力が体の内から沸き上がってくるのを感じているかのようだった。
「先代王様。私はずっと先代の円卓の騎士に選ばれなかったことを苦々しく思っておりました。退位後すぐに、先代の騎士たちと姿を消した貴女を恨めしくも思っておりました。しかしようやく分かりました。私がこの島に残ったのは今日この日のため。――最後にこんな晴れ舞台に立てたのです。もはや何の心残りもありませぬ!」
城壁をよじ登ってきた上位魔神の首を刎ね、エドワードは声高らかに激励する。
「総員、奮い立て! ミレウス王と円卓の騎士を信じよ! 世界の命運は我らの双肩にかかっていると知れ!」
彼の声に呼応して、諸侯騎士団のみならず、この戦いに参加している全員が勇ましい声を上げた。
「チューチュッチュ! 我らの双肩と来たよ。プレッシャーかけてくれるねぇ」
西の城壁の上で盗賊ギルドのスチュアートがシニカルな笑みを浮かべていた。
鉤爪で城壁を登ってきた鼬型天聖機械を、彼の隣にいた盗賊ギルドの構成員の一人が投石機でどうにか撃ち落とす。
「大鼠の兄さん、笑ってる場合じゃねーっスよ! このままだとマジでやべーって! ……ズラかるって手もそろそろ検討した方がいいんじゃ?」
「馬鹿言え。円卓が破壊されたら世界はおしまいだぞ? どこ逃げたって意味ねえよ」
スチュアートはさらに上がってきた鼬型天聖機械三体に同じ数の短剣を無造作に投げつけ、城壁の下に落とす。
彼らの周りでは他にも数十人の盗賊ギルドの構成員が戦っている。その中でもひときわ存在感を放っているのはスチュアートと同格である盗賊ギルドの四人の幹部。そして黒いロングコートを着た隻眼の初老の男――ギルドマスター『闇の右手のジョズ』である。
ウィズランド島の伝説的な盗賊は鋭い眼光を義理の息子へと向けた。
「実際どうなんだ、スチュアート。この戦い、勝算はあるのか?」
「チューチュッチュ! ええ、ええ。賭けろっていわれりゃ賭けますよ。全財産でもね」
「ほう? お前がそこまで惚れこむとはな。よほどの男のようだな、ミレウス王は」
ジョズは目じりを下げると、横へと目をやる。
そちらでは後援者の情報操作部隊が魔神たちを相手に奮闘していた。
その指揮者であるマーサ・ルフトが城壁を登ってきた下位魔神の喉笛を短剣で掻き切りながら、いつものように上品に笑う。
「おほほ、ジョズおじ様。その賭け、わたくしも一口乗りますわ」
「勝利する方にか? 不成立だな。そもそも負けに賭けたら配当を回収できん。その時は世界が滅ぶのだからな」
話しながらジョズは、息子と同じように無造作に自身の背後に短剣振るう。
すると突然そこから上位魔神が現れた。どうやら精霊魔法の《光学迷彩》で姿を消して近づいてきていたらしい。
短剣で胸を深く裂かれながらも上位魔神は驚異的な生命力を見せつけ、なおも鉤爪を振るおうとした。
だがそれは叶わなかった。
【影歩き】――盗賊系の最秘奥である短距離高速移動スキルで背後に現れたスチュアートに首を刎ねられたからだ。
「オラオラオラ、陛下たちが戻ってきたときに王城が落ちてましたってんじゃカッコがつかねえぞ! たんまり前金もらったんだ。俺たち地下社会の住人の恐ろしさを危険種どもに教えてやんな!」
スチュアートが発破を掛けると西の城壁の上は大いに沸き立った。
東の城門の上では傭兵ギルドのイライザが配下の傭兵たちを指揮していた。
「大型弩砲用意! ……撃て!」
彼女の号令に合わせて、側防塔から六発の大型金属弾が放たれる。そのうちのいくつかが空中を滑空していた鷹型戦略級天聖機械に命中した。
巨大な金属製の鷹は、たまらず市街地へと墜落する。
「生きてるわよ! 次弾装填、急いで!」
傭兵たちの手際は抜群にいい。この日のために十分な修練を積んだのだろう。そうでなくとも彼らは戦闘のプロだ。こういう場面では最も頼りになる連中である。
「おー、おー。すっかりマスター代行が板についてきたな。俺もそろそろ隠居生活かぁ?」
のんきな顔をしてイライザの隣で葉巻を咥えている無精ひげの中年男性は、彼女の実父にして傭兵ギルドの現マスター『鷹の目のグリム』である。
イライザは振り返り、苛立ち混じりに声をかけた。
「あー、もう! お父さんも仕事してよ!」
「やってるやってる。そらよ!」
グリムが矢継ぎ早に弩から太矢を放つと、それらはすべて寸分たがわず鳥形天聖機械を捉え、撃ち落とした。
マスターの見事な腕前に、傭兵たちから喝采の声が上がる。
一方、イライザは不満げだ。
「……いつもそれくらい頑張ってよ」
「予備戦力だよ、予備戦力。誰か一人くらい後ろで冷静に戦場見とかねーといけないだろ?」
一理なくもない父の言い分にイライザは反論できず、苦い表情でまた王都の街並みの方に向き直った。
傭兵たちの横ではエルフとコロポークルの連合部隊がデスビアの指揮の下、用意した大岩を城壁から投げ落として、天聖機械や魔神がよじ登ってくるのを防いでいる。
「皆サン、傭兵さんたちに負けちゃいけませんよ。息を合わせるんデス」
テコを使い、数人がかりで岩を落とすコロポークルたち。その中には、かつて勇者の試練で俺とリクサを妨害してきた連中もいる。
「ヒャッハー! やったやったぁ!」
「次だ、次。いっそげー!」
そんな風にはしゃぎながらコロポークルたちは鼠のようにせわしなく動いて次々と岩を落とす。
一方エルフたちは三人一組で岩を直接持ち上げて、投げ落としていた。常人の倍以上の筋力を持つというエルフならではの力技である。
デスビアに至っては、たった一人で岩を投げ落としていた。
「どっせーい! デスよ!」
両腕で抱き着くようにして大岩を持ち上げて、城下の魔神に叩きつけるデスビア。さすがはデスパーの妹と言ったところか。
この離れ業に東の城壁の上のあちこちから歓声が上がる。
「亜人さんたち、やるわねー。よっし、アンタたち負けてらんないわよ!」
イライザの言葉に、傭兵たちは威勢のいい声で答えた。
王城の中庭では城壁を突破した数百の敵を、ほぼ同数の民が迎撃していた。
その構成はあまりにも雑多。
一般の冒険者の姿もあれば、人狼の里の者たちもいる。南港湾都市の船乗りに、最貧鉱山の炭鉱夫もいる。野良の精霊使いもいれば、ガラティア荒野の部族民もいる。
その混成部隊の指揮官は共に四大公爵家の当主であるガラティア公グスタフ・ノルデンフェルトとアーツェンギラ公『魔性のオルテンシア』の二人だ。
もっとも指揮をしているのはほぼオルテンシアのみ。
グスタフは手ごわそうな相手を見つけては臣下の部族民と共にそこへ駆けつけ、自ら魔力を帯びた大剣を振るって討伐している。
「ギュスくーん、そんな飛ばしてると持たないよぉ?」
城壁を越えてきた上位魔神を仕留めて王城の正門前まで戻ってきたグスタフに、魔性のオルテンシア――ドレスを着た妖艶な女が声をかける。
グスタフは家臣からもらった革袋の水で豪快に喉を潤してから、にやりと笑って返す。
「飛ばす? なわけねえだろ。これでもだいぶセーブして遊んでんだぜ?」
「遊びじゃないよー。もぉー」
大貴族同士とは思えぬ軽いやり取りを交わす二人。実は幼馴染だという。オルテンシアはせいぜい二十歳かそこらにしか見えないのだが、グスタフと同年代で三十半ばらしい。
真逆の性格だが、なぜか昔から馬が合った――とはグスタフの談である。
「シアも楽しめよ。こんなお祭り、もう二度とないぜ?」
「世界の危機だもんねぇ。そりゃ何度もあったら困るけど。……親戚ちゃんも頑張ってるみたいだし、私もいっちょやりますかー」
「おお、頑張れ頑張れ」
城壁の方からバカでかい破壊音が届いたのはその時である。
見ると一際大きな馬型戦略級天聖機械が城壁の一角をぶち破って中庭に侵入してきていた。
周囲で戦っていた者たちは慌てふためいている。
グスタフは彼らに下がるように大声で命じると大剣を担いで再び走り出した。
オルテンシアは配下の者たちに手早く指示を送ると、右手の人差し指を馬型戦略級天聖機械に向けた。その指には大粒の深紅の宝石がついた指輪がはまっている。
彼女の一族――狂人ジョアンを祖とするアーツェン家は魔力付与の品や遺跡の管理を担当としている後援者だ。当然それらの利用法にも深く精通している。
その当主ともなれば、言うに及ばずだ。
「戒めよ――」
オルテンシアが呪文を唱えると宝石が輝きだし、無茶苦茶に暴れだしていた馬型戦略級天聖機械を深紅の光が包み込み、きつく拘束した。
あれはアーツェン家に伝わる魔力付与の品の一つだ。使用者の命を削る代わりに強力無比な力を授ける、禁忌の指輪。
それをためらいなく使うオルテンシアの瞳には、始祖である狂人ジョアン――そして遠い血のつながりを持つアザレアさんにも共通する狂気の光が見えた。
「ハハハ、そうそう、その調子だぜ」
グスタフは幼馴染の戦いぶりを見て愉快そうに笑うと、身動きの取れない馬型戦略級天聖機械の背中に飛び乗って、そこにあった核を大剣で叩き切った。
中庭の戦場は混沌を極めている。
しかしどうやら今しばらくは持たせてくれそうだった。
王城の奥に設営された医療本部ではアールディア教会のヌヤ前最高司祭が各教団の司祭と力を合わせ、次々と運び込まれる怪我人たちを治療していた。
「そやつはわしが診る。そやつは軽傷。そやつはもう死んどる。あとで蘇生魔法をかけるから体を清めとけ」
死傷者たちの具合を瞬時に判断してテキパキと指示を出すあたりは、さすがは前々回の円卓からの後援者経験者である。
ここにはこの島の最高峰の癒し手たちが揃っているのだ。どんな重傷を負わされた者でもたちまち全快し、また戦場へと戻っていく。
しかし用意された治療台に空きが出ることはほとんどなかった。
「ヌヤさまぁ! もう限界ですよぉ!」
また一人重傷者を癒して送り出し、床にへたりこんだのは三十路くらいの地味な女――アールディア教の現最高司祭『森の愛娘ユイファ』である。
あきれ顔のヌヤが閉じた扇子で彼女の頭を叩く。
「泣き言を言うな。みんな頑張っておるのじゃぞ」
「そ、そうですけどぉ。……ぎゃああああ!!!」
何かの気配を感じ取ったのか、絶叫して体を前に投げ出すユイファ。
その後ろの壁をぶち破り、六本腕の上位魔神が現れ、部屋中で悲鳴が巻き起こる。
四つん這いのまま逃げるユイファ。
そこに上位魔神の腕が伸び――。
「そぉい!」
「せいや!」
元気な掛け声と共に二つの巨大な槌が上位魔神の顔面を叩き潰した。
勇者信仰会の美人修道女二人組、エルとアールの槌だ。
上位魔神はなおも六本の腕を動かし、周囲の者を無作為に攻撃しようとしたが、周囲から飛んできた短剣や矢やダーツや《魔弾》やらを胸に喰らうと、前のめりに倒れて動かなくなった。
エルとアールが率いる勇者信仰会の会員たちの支援攻撃である。
「会員の皆さん! 一所懸命!」
「全力で! ここを護り抜きますよ!」
エルとアールに応え、勇者信仰会の会員から『おお!』と勇ましい返事が沸き起こる。
……勇者信仰会はただの互助会に過ぎないのだが、なぜか今日まで数十人も会員が残っていた。
頼もしい護衛たちを見てヌヤはうんうんと頷き、床にへたり込んだまま半べそを掻いているユイファの肩に手を置く。
「ほれ見ろ。頑張っておるのはわしらだけではない。ぬしも死ぬ気で働け」
「はぁ、分かりました。分かりましたよぉ。地下でシエナちゃんも頑張ってますしね。……それに」
手の甲で涙を拭って立ち上がるユイファ。
祈るように両手を合わせて、天井を見上げる。
「なにか――アールディア様とも違う大いなる存在の助力を感じますし」
「ほう、おぬしも感じるか? ふむ、お飾りの最高司祭ではなかったようじゃな」
「お飾り!? そんな風に思ってたんですか!?」
「かかか、冗談じゃ。ま、とにかく今なら蘇生魔法を失敗する気がせん。ぬしが殺されても絶対に生き返らせてやる。心配するな」
「そんな心配してませんよ! というか縁起でもないこと言わないでくださいよ!」
ぷんぷんと怒るユイファをなだめたのち、ヌヤは苦笑しながら次の怪我人の治療に取り掛かった。
円卓の間がある塔の屋上では魔術師ギルドのネフが拡声石を使って、きびきびと指示を出していた。
「フォーメーションB! 六時の方向から戦術級天聖機械の群れが来てます! 迎撃を!」
指示を受け、王城のあちこちから攻撃魔法が飛ぶ。魔術師ギルドの構成員数十名が円卓の最後の護りとして配置されているのだ。
ネフ自身も杖を構え、声高らかに呪文を詠唱した。
「熱量よ! 停滞し、嵐と共に、その本質を持って蹂躙せよ! ――《氷波風撃》!」
ネフが放ったのは一抱えほどはありそうな氷の固まりを無数に含んだ暴風。それは仲間たちの放った魔弾やら石の礫やら雷やらと共に、戦術級天聖機械の群れのすべてを撃ち落とした。
「うへー、えぐいー」
「この調子なら守り切れそうじゃない? あたしら何もしてないけど」
ネフの隣でこの大破壊を眺めて呟いたのは少女二人である。片方はネフと同じくらいの歳で盗賊風の格好をしており、もう片方は一つ二つ年上くらいで戦士風の姿だった。
この二人には深淵の魔神宮攻略作戦の時に会ったことがある。ネフの冒険者仲間の二人だ。今日は護衛役なのか共に遠距離用の得物を持ってはいたが、構えてはいなかった。
「そう上手くはいきませんわよ、お二人とも!」
ネフがキリッとした顔で冒険者仲間の方を向く。
「この塔には強固な防護魔術がかかっています。敵が《瞬間転移》などで直接乗り込んでこないのはそのためですわ。しかし魔術の媒介となっているのはこの城全体の完全性。敵の攻撃で城壁が崩壊しかけている今、敵がこの塔まで侵入してくるのも時間の問題ですわ!」
「へー。あ、だからみんな頑張って城壁で守ってるんだ」
「そうですわ!」
純朴そうな同い年の娘の方に親指を立てて見せるネフ。
年上の娘の方が王都の街並みを指さす。
「じゃ、アレとかヤバいんじゃないの」
「アレ? ……あああっ!」
指さされていたのは静かな冬通りの方。
そちらでいくつもの家屋を崩壊させながら、大型の土竜型天聖機械が地中から出現していた。
滅亡級ほどデカくはない――が、戦略級の最上位であることは疑いようがない。先ほど城壁をぶち破ってきた馬型戦略級天聖機械と比べても優に三倍は大きかった。
「あ、あれが城壁まできたらヤバいですわ! マスター! ちょっと、ねぇ、マスター!」
取り乱した様子のネフは、後ろの方でグデッと横になっているボサボサ髪の女性の肩を擦った。
しんどそうに体を起こしたローブ姿のその女性は魔術師ギルドのマスターにして本部学長、ネフとブータの師でもある『図書館塔の貴婦人リザ』だ。
リザは大きな欠伸と共に体を伸ばすと、ぽつりと一言で答える。
「もう唱えた」
ネフが首をかしげると、大気がビリビリと震動を始める。
その発生源は遥か上空。
ネフとその冒険者仲間たちが見上げると、天高くより一筋の白い光が落下してくるところだった。
いや、それは光ではない。小惑星帯から召喚された巨大な石塊である。
《隕石落とし》。
《存在否定》と並ぶ、魔術師ギルドの最秘奥だ。
超音速で落下した石塊は一瞬のうちに地上まで到達すると、王城に向かって進撃を始めていた土竜型戦略級天聖機械を粉々に粉砕し、ついでに王都の一区画を丸々吹き飛ばした。
地震のような激しい揺れと衝撃波と爆発音が王城まで届く。
作戦参加者たちはひと時戦いの手を止め、度肝を抜かれたような顔でその破壊の痕を見つめた。
無論ネフとその冒険者仲間たちもである。
ネフはしばらく呆気にとられたようにそちらを見ていたが、やがて我に返って師に向き直った。
「ああいう派手なのを使うときは事前に言ってくださいまし! 兵が動揺しますわ!」
「あー、ごめんごめん。次から気を付けるぅ……」
リザはポリポリと頬を掻くと、ふいに真面目な顔になってこちらを見上げた。
俺たちの、この視点を。
「ブーくんが見てるね」
「え? あ、そうですわね。……と、いうことは、陛下たちは一段落できるところまでついたということですわね。恐らく、黄金郷の扉の前あたりまで」
『よし』とネフはガッツポーズを作ると、大きく息を吸い込んで拡声石を口に近づけた。
「皆様、もうひと頑張りですわ! もう少しで陛下たちが滅びの女神を討伐してくれます! あと少し! あと少しだけ頑張ってくださいまし!」
この戦いに参加している全員が再び勇ましい声を上げ、あと少しの時間を稼ぐため、最後の力を振り絞り始めた。
更新遅くなってすいません。
あと少しです。
頑張ります。
作者:ティエル




