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商星ウィロー

「あー長い、もう1時間も待ってる」

「まだ1時間、ですよマスター。長い時は3時間ほど待つでしょう」


 何を待ってるか? ワープの順番待ち。

 ウィローのような交易の盛んな星では日常茶飯事だ。

 みんなが好き勝手にワープするとワープした先で他の船とぶつかったりするからね、

 申請してから許可が出るまで待たないといけないのだ。

 そんなわけで今は、


「恋の加速度は~危険領域~♪」

「キュキュイキュイキュキューイ♪」


 リューちゃんを膝に乗せて《万年アイドル》アリスちゃんの出てる歌番組を見ている。

 僕の趣味ではない。リューちゃんの趣味だ。

 隕石龍ってのは人語は話せないが知能はすごく高いらしい。

 リューちゃんも生まれたてだがどうやら5歳児くらいの知能はある。

 そして彼女は歌って踊るアリスちゃんを見るなりはまってしまったのさ。

 女の子だからね、憧れたりしてるんだろうか。


「お、来た来た。ワープ許可だ」


 さらに30分ほど待つとウィローの交通管理局から連絡が来た。

 星に上陸する手順は、指定された座標にワープ。

 その後は指定のランディングゾーンに着陸するって寸法さ。

 ずいぶん待ったから早速ワープ。

 あーやれやれ、久しぶりにナル以外と会話できるよ。


「着いたーっ」


 商星ウィロー。大きく分けて商区、居住区、工業区に分かれる。

 宇宙連邦の中でも割と古参の星だ。

 古参だけあって遥か昔から交易拠点として栄えてきた星で、

 毎日毎時間、色んな船が出入りしている。


「それじゃちょっと行ってくる、リューちゃんは任せたよ」

「えぇ、任されました」

「キュイイ」

「こら、顔を出さない」


 ナルと話し合った結果、リューちゃんはまだあまり人目には晒さないことにした。

 隕石龍は公的な記録では千年以上も前に絶滅した種らしい。

 あの星はどうやら隕石龍の存在を隠していたようだ。

 そんな種のデータもあんまり残っていない。

 でも羽の形状など、見る人が見れば分かってしまう恐れがあるらしい。

 そうなると騒ぎになるかもしれない。

 そういう訳でしばらくウィローには滞在するつもりだけど、

 僕一人での行動になる予定だ。

 正直ナルとリューちゃんを二人きりにしておくのは不安だけど仕方ない。

 帰ってきたらリューちゃんの趣味がまた増えてたりしそうだ。


(ええと、転移装置はっと)


 船着き場に船を置いて空港から出る。

 空港は全ての区画からはるか遠く離れた場所にあるけどご心配なく。

 このような星だと星中いたるところに相互転移装置があるのは珍しくない。

 車もいっぱい走ってはいるけど、観光目的が殆どだ。

 慣れた人なら転移装置でお目当ての場所にだけ行って用事を済ませる。

 僕は敢えてプラプラ歩いて初めて見るお店に入ったりもするけど、

 取りあえずは収穫をお金に換えたい。

 なので商区の……Cブロックの……あったあった。

 僕は馴染みのジャンクショップのある通りの近くの転移装置に転移した。



「こーんばんはー」

「おーう、レストか」

「あ、レスト君おいーす!」


 スキンヘッドに顔中傷だらけの筋骨隆々の大男、彼が店主のモリスさん。

 僕と同じ人間種だ。たまにひと月ほど店を留守にして自ら廃品回収に出てしまう行動派。

 半袖半ズボンだが、晒されている腕や足も傷だらけだ。

 昔は腕利きの傭兵だったのだとか。ちなみに冬でも半袖半ズボンのことも多い。

 店員のペルシャは猫型の亜人種。僕と歳も近いせいかいつも馴れ馴れしい。

 今日も腕まくりしたTシャツとホットパンツの上から

 ロングエプロンといつもの格好をしている。

 今日は珍しく店内に人もまばらなので、ゆっくり会話もできそうだ。


「久しぶりじゃねえか、いいもん持ってきたんだろうな?」

「まぁまぁ、かなぁ」

「なになになになに? ほらほらペルシャに見せてごらん」


 ペルシャが顔をズズイと近づけてくる。近い、ほんとに近い。胸とかあたってる。

 勘違いする人も多いだろう、そういうところ疎いからこの娘。

 服からしてそうだ。普通尻尾持ちの人はズボンに尻尾用の穴を開けているが、

 ペルシャはズボラなのでそれをせず、いつもズボンの上からぴょこんと出ている。

 おかげでズボンが浮いて目の遣りどころに困る。

 モリスさん曰くそれ目当ての人も多いらしい。

 「男のロマンだからな、仕方ねえ」といって実害がない限り黙認しているそうだ。


「あぁもう、これだよこれ」


 ポーチからエレキストーンを入れた袋を取り出す。

 ペルシャに渡すとカウンターまでそれを持っていき一つ一つ丁寧に並べていく。

 働きだした頃のペルシャだったらカウンターに中身をぶちまけてたな……

 モリスさんによく拳骨をもらってた。


「なにこれキレー! 見たことない! レスト君いっこ頂戴よ!」

「やだよ! 買えよ!」

「おいおい、また珍しいの持ってきたな。エレキストーンか……相当貴重だぞこりゃあ」

「そーなの? ペルシャでも買える?」

「お前にゃ無理だ」

「ウニャアー!」


 ジャンクショップ『リリス&モリス』略してリリモリ。

 いや、みんなそう言ってるんだよ?

 ここの店主は良い目利きが出来て、変に吹っかけたり安く買い上げようとしない。

 だがあんまり交渉も受け付けない。

 たまに無理を通そうとして鉄拳で追い出されている人もいる。

 商売人としてはどうなのか、という声もあるが実際結構繁盛している。

 僕も面倒な交渉事はしたがらない性質なのでウィローで換金するときは殆どここだ。


「ペルシャにはあげないとして……いくらになる?」

「そうだな……っと。1万5千ルインでどうだ?」

「いち……!」

「ニャアー! レスト君結婚して!」

「い・や・だ・ね!」


 宇宙連邦が定めた基準通貨にルインと言うものがある。

 1ルイン=日本円で100円程度。つまりなんと150万円くらい!

 日本での1円に相当するリコって通貨もある。

 今はほぼ全ての売買は電子取引か物々交換なので、

 実際のルイン貨幣やリコ貨幣をお目にかかる機会は少ない。


「え、これってそんなに価値のあるものなの? 5~6千ルインくらいかと思ってた」

「お前な……今はもう殆ど見られない鉱石だ。鑑賞物としての価値が高い」

「そうなんだ……ナルと相談したんだけど」

「ナルちゃんあったま固いからね~」

「今日はあいつは留守番か? ナルなら実用的な意味合いの価値しか見ねえだろうな」

「ナルが聞いたら怒るよ……まぁいいや、それでお願いします」

「おう、毎度ありぃ」

「レスト君さぁ、どこでこんなの拾ったの?」

「んー……内緒」

「そっかぁ」


 ペルシャとの付き合いもそれなりに長くなるから、

 こういうところで変に追及してこない。

 予想外に大きな収入が入ったので何か買っていこうか!

 ここにも結構「お宝」あるんだよね!


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