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リリモリでお買い物

 さてさて、これだけあればたいていの物は買えてしまうだろう!

 テンション上がるなあ……

 店内をぐるっと見て回る。このお店はモリスさんこだわりの木造だ。

 武器屋ってこういうイメージだろ? との事。


 武器屋、というだけあってやっぱり武器とかが飾られている。

 剣やら槍やら銃やら……日本だと銃刀法やらなんやらあるが、

 宇宙廃品回収スペーススカベンジャーの生業には必須だし、

 人気のない宇宙空間だと宇宙海賊(スペースパイレーツ)の危険も。

 てなわけで需要は高い。

 エーテルブレードに代表される、エネルギー体で構成された武器が主流だけど、

 実体を持った武器もそれなりに人気だ。

 エネルギー体に耐性のある生物や種族もいるし。


 ところでここ、ジャンクショップじゃないんですかって……?

 ご安心下さい、武器の展示スペースはほんの一角です。

 というかモリスさんが奥さんに頼み込んで、ようやく確保した一角らしい。

 モリスさん曰く、ロマンスペース。

 あとは……色んなパーツやらなんやらが乱雑に箱に入れられてたり、

 船内装置の追加機能の入った記憶媒体が並べられてたり、

 パワーグローブを初めとするお役立ちツールが並べられてたり……

 梯子を上って2階に行くと、さらにマニアックなものが眠ってるらしい。

 とにかく種類を選ばずいろんなものが売られている。


 後、大きな窓に面したところはおススメの品々が並ぶショーケース。

 奥さんが選んだおススメの品が並ぶのでホントにおススメだ。

 稀に、奥さんが気まぐれに作ったハンドクラフトの雑貨やアクセサリが並ぶ。

 センスが良くてすごい人気なんだけれど、

 ホントに気まぐれにしか作らないので、もはや希少品だ。

 今はなんかよく分からない機械が一つだけ置いてある。後は売れたみたいだ。

 なんだろう、買ってみようか……2万ルイン……やっぱりいいです……


 うーん、一通り見て回ったけど元々買っていく予定がなかったから、

 お目当ての物とかないんだよね。困った。


「何か買っていきたいんだけど。おススメはあります?」

「おう、あるぞあるぞ。このフロストアックスなんてな……」

「いや、武器はいらないです」

「んだとぉ……? 武器はロマンって何回言えば分かるんだぁ?」


 ホントにロマンって言葉が好きな人だな……

 モリスさんは何かと武器を勧めてくる。

 エーテルブレードも実は半ば無理やり買わされたのだ。

 あれは結構役に立ってるけど。


「ねえねえこれは!? バスターナックル! おススメだよー!」

「だから武器はいいって!」

「レスト君、ケンカ弱いんだから買えばいいのにー」

「うるさいなぁ……物騒なのじゃなく実用的なのが欲しいんだけど」

「じゃあーそのお金でペルシャを買っ」

「いやそれはタダでも欲しくないかな……」

「ンニャアー! なんで!」


 ペルシャもやっぱり武器を勧めてくる。

 この店には脳みそが筋肉の人しかいないのかな。

 そういえばペルシャもモリスさんの廃品回収に付き合うらしい。

 獣系の亜人種だけあって勘が働くのと運動神経がいいので、

 『それなりに使える』とはモリスさんの談。


「レスト君は一体ペルシャの事をどう思っ……! ひっ! お、奥様!」

「はぁ……うるさい……なんて……うるさいのかしら……」

「あ、リリスさん、こんばんは」

「おお……リリスどうした……?」

「も、申し訳ありません! 奥様!」


 がりがりと頭をかきながら、店の奥からふらっと現れたその人は

 鮫の亜人のリリスさん。

 何を隠そうリリモリのリリの方で、モリスさんの奥さんだ。

 普段は店の奥に引っ込んで、安く買ったジャンクの修理とか加工とか、

 取引先との折衝とかで忙しく、ほとんど顔を出さないレアな人。


 日に当たると乾燥するとかで年がら年中、黒のローブに身を包んでいる。

 テンションもいつもこんな感じだし、

 腰まであるロングヘアーから片目だけ覗かせるその風貌は、

 それだけで人を呪えそうだ。

 モリスさんは完全に尻に敷かれてる。

 ペルシャに至っては一度ケンカを売って返り討ちに遭ってから、

 ずっとこの調子らしい。

 本気で殺されかけたと彼女は語る。


「あによ……レスト君じゃない……この騒ぎはあなたが原因……?」

「はい! そうです奥様!」

「違う! 主にペルシャだろ!」

「あー、レストがエレキストーンを持ってきてよ。

 まとまった金が入ったから何か買いたいって言ってなぁ」

「エレキストーン……? あらほんと……

 綺麗にカットして高く売りつけましょ……ふ、ふ、ふ……」


 この人、色々な技能を持ってるけど石のカットまで出来るのか……

 ホントに手先、器用だからなぁ。

 僕のポーチもリリスさんに作ってもらった。この店で初めての買い物。

 リリスさんのハンドクラフトはその頃から希少品だったが、

 なるたけこの店を使うことを条件にお安く売ってもらった。

 浮気したら沈めるわよ、と言われたが、幸いにしてまだ沈められてはいない。

 ペルシャは一度沈められたそうだ。

 沈めるってどういう事か聞いたけど、どうやら沈められるそうだ。

 彼女は震えながらそれ以上は語らなかった。

 

 ちなみに四次元ポケ……ごほん、四次元収納装置は今やファッションだ。

 みんな、お気に入りのカバンやらなんやらを四次元化している。

 あ、そういえばリリスさんならいいものを勧めてくれそうだ。


「リリスさん、何かおススメはないですか?」

「おススメぇ……? こないだ……グインのスプリントブーツが入ったでしょ……

 それが……いいんじゃない……モリス、後よろしく……店内はお静かに……

 そうよね、ペルシャ……?」

「は、はいぃ!」


 それだけ言い残すとリリスさんはまた奥に引っ込んでしまった。

 脳みそが筋肉に支配されていないので、なんかよさげなものをお勧めしてくれたぞ!

 でもいい人なんだけど、どうにも緊張するなあ。ペルシャは自業自得として。


「で、モリスさん。スプリントブーツって?」

「おぅ、お前にゃちょうどいいかもな。要はすげえスピードで走れるようになる靴だ。

 あまりに速すぎて大体の星の街中じゃ使用禁止だ。

 しかも《極匠グイン》が作ったからとんでもなくピーキーだろうな」

「これ売った人も制御しきれずに壁にぶつかって大怪我したから、

 もう二度と使いたくないって売ってきたんだよねー」

「え……なにそれ怖い」

「だが使いこなせば、まさに風になれるだろうよ。

 なに、お前ならちょっとやそっと壁にぶつかっても大丈夫だろ。

 使いどころさえ間違えなけりゃ、何かあったときの危険回避にゃもってこいだ」


 うーん、リリスさんもやはり脳みそが筋肉に汚染されて……?

 いや、ふとナルと二人で演じた鬼ごっこを思い出す。確かにあの時これがあれば……


「買います」

「おう毎度。フリーサイズだから試着はいらねえな」

「3千ルインになりまーす!」

「た、高っ!」

「スプリントブーツ自体が扱いづらくてなっかなか出回らない代物の上、

 輪をかけてのグインの一品物だからな。

 出力調節ができるってのに逆に驚いたぜ」

「なんですか、そのグインさんって人は……」

「んーとね、とにかく扱いづらいけどすっごい性能のツールを作る人だよ!」


 あぁ……《極》ってそういう……極まってるんだ……


「まぁ……よりによってグインに、

 よりによってスプリントブーツを作らせるその心意気。ロマン、だな……」

「慣れたら、ペルシャおんぶして走ってね!」

「あぁ、はいはい……」


 高いけどこういうものは持っておいて損はない……だろう。

 ナルには今回の収穫は1万2千ルインになったと言っておこう。


「有難うございました、またよろしく」

「じゃーあねーんレスト君」

「おいレスト、この後はまたあそこに行くのか?」

「えぇ、そうですね」

「そうか、リアによろしくな」

「ペルシャも行……痛った! 痛ぁい!」


 Bar『ブラックアップル』

 僕の行きつけだ。

 お酒は飲めないけど、久々だし楽しみだ。

 そうして拳骨を食らってるペルシャの悲鳴を背に店を出た。


「…………」


 店の中から僕を見つめる視線にも気づかずに。

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