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救出成功!

 リアさんが、そこにいた。

 汗だくになって、ぜいぜいと息を切らしている。


「お前も来たか。だが、それがどうした」


 おかまいなしに、シャンガルの刀が振り下ろされる。

 リアさんは一瞬で紅いエーテルブレードを2本抜き放つと、

 交差させて刀を受け止める。そのまま、弾き飛ばした。


「ぬう」


 シャンガルが体勢を少し崩し、そのまま後ろに跳んで体勢を立て直した。


「頑張ったねえ~二人とも、にへへへ~」

 

 リアさんはいつもの調子だ。

 残りの腕で僕らを引き寄せると、ぎゅ、と抱きしめられた。


「あ……リアさん、血が……」

「気にしない気にしない。にへへ」

「あぅ……私、何も、何もできなくて……」

「フィオり~ん、泣くのはまだ早いよ~?」

「すみません、リアさん、私もお役に……」

「いいってことよ~。ナルるんがいなきゃあここまでは来れなかっただろ~し~」


 僕らの背中をポンポンと叩きながらリアさんが優しく声をかけてくれる。


「感動的な再会だな」


 いけない、一瞬忘れてた。

 後ろにはシャンガルがいたんだった。


「隙だらけだぞ? 切り捨てられても文句は……」


 そこまで言うとシャンガルが黙った。どうしたんだろうか、

 ふと、リアさんの顔を見ると目が深紅に変色していた。

 あの路地裏で見せた目よりももっと紅く、明らかな警告色だった。

 あの紅い目で睨み付けられたら、さしものシャンガルも怯んだってわけか……


「さて、レスト、ナルるん、フィオりん」

「は、はい」

「あの色の違う壁の向こうにお兄さんがいるんだね?」

「えぇ、そのはず……」

「じゃあ、壁ぶち破って先に進んでな~、お姉さんはあのポンコツと遊んでくよ~」

「でも……」

「拳骨するよ~? 早く行った行った~あれは気にしなくていいからねぇ」


 リアさんに促されて、フィオナのお兄さんのいるはずの道に続く壁に駆けだした。

 

「それを我が見逃すと思うか?」


 シャンガルが当然、僕らの前に立ちふさがる……けど

 リアさんが僕らの前に躍り出た。速い! そのままくるりと一回転。

 勢いをつけて左薙ぎに2本のエーテルブレードで切り付けた。


「ぬぅおお!?」


 刀で受け止めようとしたけど受け止めきれず、シャンガルの巨体が吹き飛ばされる。

 今度はシャンガルが壁に叩きつけられる番だ。

 ざまあみろ! と言ってやりたいけどそんな暇はない。

 走った勢いのままエーテルブレードを壁に突き刺してみると、

 少しばかり抵抗があったけどやがて貫通したようで、抵抗がなくなった。

 むりやり割れ目を作ると、後はパワーグローブで穴を広げていく。行ける!


「行かせん……その先には……」


 シャンガルが立ち上がる。今のではさしてダメージもないようだ。

 蒼い目が僕らを見ている。

 でも、僕らとシャンガルの間にリアさんが立ちはだかった。

 シャンガルの動きが止まる。

 流石にリアさんをあしらって僕らを止めるのは無理みたいだ。


「私ね~思うんだ~。君とは気が合いそうだってね~」

「む?」


 リアさんとシャンガルが何か会話している。

 その間に僕らはようやく人一人通れる穴を広げた。


「私もねぇ、君と同じ。だぁい好きなの~」

「何がだ」

「……そりゃあもちろん、弱い者いじめさ~」


 ひぃー! 怖! リアさんの声を聞いた瞬間、背筋が凍った。フィオナも一瞬固まった。

 ちらと後ろを見ると、リアさんが残り2本のエーテルブレードを展開させていた。


「…………面白い」

「……ち~っとも、面白くないよぉ?」


 口調はいつもの調子だが、あんなリアさんの声色、聞いたことがない。

 明らかに怒ってる。怒ってるよあの人。怖えぇ……シャンガルより怖え……

 

「行けるね~? 二人とも~。じゃ、いってら~」

「は、はい!」

「兄さんを助けたら、すぐに戻りますから!」

「にへへ、頼もしいねぇ~」


 こちらに背を向けたままリアさんが話しかけてくる。

 言われなくとも行きますよ!

 シャンガルはリアさんに任せよう!

 今のうちに僕らはフィオナのお兄さんを助けないと!



「フィオナ! 道はわかる!?」

「大丈夫! ここは見覚えがあるわ!」

「生体反応が近づいています! 近いですよ!」


 さっきまでの景色とはうって変わって、壁の色は白やら赤やらオレンジやら、

 暖色系の色で彩られている。

 色んな部屋があるけれど、今は探索してる場合じゃない。

 僕らは脇目もふらず、ただただ走った。

 はじめはフィオナと並走してたけど、そんな暇はない!

 なのでフィオナをおんぶしてスプリントブーツで駆ける。胸が背中に当た

 違う違う! お兄さんも助けないといけないし、

 その後は急いでリアさんの加勢に向かわないと!


「あった! あの部屋!」


 フィオナが指さす先には小さな部屋があった。

 中から青白い光が明滅しながら漏れてきている。

 中に入ると、まず目についたのが大きな宝石。

 これでもかというくらいに豪奢な台座に載せられて、すごく目を引く。

 これは確かに思わず近寄るかもしれない。

 でも今はそれどころじゃない。台座の手前には電磁牢が展開されていて、

 中で男の人が倒れている。


「兄さんっ!」


 フィオナが叫ぶと、男の人が跳び起きた。よかった、無事みたいだ。


「フィオナか!? その人は誰だ!?」

「後で! まずは何とかして電磁牢を解除しないと……」

「ナル!」

「やってますよ……ありました! 床の下! 

 ちょうどマスターが立っているところです!」


 僕の真下!? 這いつくばって床を見回すと……

 あった! 巧妙に隠されているけど、床の一部が蓋になってる!

 パワーグローブで無理矢理に蓋をぶっ壊す。

 これだ! 多分これが電磁牢の発生装置!


「任せて!」


 蓋を外した瞬間、フィオナが発生装置にスタンロッドを振り下ろし、電撃発生。

 5秒ほど電撃に晒すと、やがて発生装置が煙を上げて電磁牢が消えた。


「兄さん! よかった!」

「フィオナ……お前良く来れたなあ……!」

「よかった……もうダメかと……」

「バカ、俺がそう簡単に死ぬかよ! ははっ!」


 フィオナが男の人に飛びつく。胸に顔をうずめて声を上げて泣いている。


「あんたがフィオナを助けてくれたのか! そんな怪我までして……助かった。

 俺はルークだ」

「僕はレスト。レスト・スレインズです」


 軽く自己紹介だけ済ませると、場が静寂に包まれた。

 フィオナがすすり泣く声とだけが辺りに響く。

 ルークさんはそんなフィオナの頭をずっと撫でていた。

 いいなぁ、年上の兄弟って…………あ!


「ちょ、ちょっと! 邪魔して悪いけど! リアさんのところに戻ろう!」

「いけない! 早く戻らないと」

「リアさん? 誰だ?まだ誰かいるのか?」

「走りながら話すから、着いてきて!」

「お、おう!」


 こうしてる間にもリアさんはシャンガルと戦ってるんだった!

 感動の再開もそこそこに、僕らは来た道を引き返した。


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