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死闘の予感

 スプリントブーツの出力を半分入れる。

 僕だけならまだしも、背中にはフィオナだ。

 フィオナごと壁にぶつかるってのはあってはならない。慎重に大胆に……

 行くぞ!

 と踏み出そうと瞬間、ゾクリとした。僕の第六感が足を止めろと全力で警告する。

 足が地面に着く直前に、スプリントブーツの出力をゼロにする。

 思わず前のめりになる。


「ちょ、ちょっとレストく……ん」

「マスター! 作戦……は……」


 そこまで言うと二人は黙った。

 あのロボット、動いていないのではなくて、機を窺っていたんだ。

 今、その眼が煌々と蒼く輝いている。 

 部屋も一瞬で明かりがついて明るくなっている。

 あのまま行けば、僕はともかく、

 すれ違いざまにフィオナが真っ二つにされるイメージが浮かんだ。

 

「…………千年…………」


 そう言いつつ、大刀を杖のようにしてロボットは立ち上がる。

 がちゃり、と無機質な音を立てながら。


「千年ぶりの来訪者がこの間来たと思えば……また来たか。賑やかなことだ。

 ……お前はあの時逃げ出した……そうか、助けに来たのか。

 安心せよ、まだあの男は生きている」


 立ち上がると、僕の身長の優に1.5倍はある。

 左手にはさっきの大刀を提げている。

 気づけば、音もなく壁が下りてきて、閉じ込められた。


「中からは開かん。壊して逃げようなどと考えるなよ。

 その間に切り捨ててくれよう。

 つまり、進むも戻るも、我を倒してからの話だ。」


 と、僕の携帯が鳴る。


「お前、連絡が来ているぞ。あの4本腕の女だろう。

 何、手は出さん。まだな(・・・)


 そう言われて、目線を切らさないようにじりじりと携帯に手を伸ばす。

 そして素早くメールの文面を読んだ。


『罠かも。ダメ、待機』


 それだけ、書かれていた……しまった……


「ドローンの報告を受けていたが……あの女は腕がたつ。

 何と書かれていた? 大方待つように書かれていただろう?愚か者。

 全員でかかれば、まだ勝機はあったやもしれん」


 なんだこのロボット……妙に人間臭いぞ……

 でもそのせいか、殺気がビシビシと伝わってくる。


「……気が逸ったか? 我が動かぬとみて油断したろう。

 我に女子供をいたぶる趣味はない。

 あの4本腕も含め……大人しく帰るなら見逃してやろう。

 だが、お前は別だ。その程度の覚悟は持ってここに来たのだろう」


 そう言いながら、ゆっくりと大刀を抜き放った。

 しゅら、と澄んだ音とともに刀身が露わになる。

 月光に照らされて、青白く艶めかしい輝きを放っている。


「我が名はシャンガル。《勇将》シャンガル・アーミテイジ。

 我が王より《勇将》の名を賜りし者。

 この霊廟の守護を仰せつかりし者。

 機械の身に魂を移し、永久にこの都市を護りし者。

 侵入者よ、名を名乗れ。せめてもの手向けに墓標に名を刻んでやろう」


 やばい、やばい。体が動かない。


「名乗らぬのか? ……そうか……では逝け、名もなき者」


 瞬間。やっと体が動く。咄嗟にスプリントブーツを使って後ろに跳んだ。

 僕の首が在った所を刃が駆け抜けた。

 防護服は全快している。でもこいつが相手じゃいつまでもつか……


「なるほど、よい反応だ」

「私もい……」

「ふん」


 フィオナがスタンロッドをシャンガルに向けた瞬間、

 スタンロッドが真っ二つになった。

 半ばから断たれたスタンロッドをシャンガルに向けたまま、フィオナは固まっていた。


「次はない」

「フィオナ! 下がってて!」

「く、悔しいわ……」


 フィオナが部屋の隅に離れていく。

 あーもう、なにかっこつけてんだ僕は!力の差は歴然じゃないか!

 でも……戦えるのは僕しかいない!


「マスター!」


 いや、ナルもいてくれている!

 今までだって何度も二人でピンチを切り抜けてきたじゃないか!

 ドローン全排出(オールイジェクト)


「接続完了!」


 シャンガルの周りをドローンが取り囲む。


「ほう、これは先ほどの……」

「食らいなさい!」


 ありとあらゆる方向から一斉射撃。

 

「効かんな。我が装甲はそれでは抜けんよ」


 けれど、無傷。装甲には傷ひとつない。

 そうしている内に、あっという間にドローンの1体が切り捨てられて地面に落ちた。


「そんな……」

「なんて装甲ですか……」


 これじゃあ、僕のレイガンだって効かないだろう……

 だったら!


「マスター!? それは……」

「やるしかないだろ! ナルも気張ってよ!」

「……分かりました!」


 エーテルブレードを取り出し、両手で握り正中に構える。

 取っ組み合いに備えてパワーグローブも身に着けた。


「ほう、珍しい得物だ。それであれば我が装甲も裂けよう」

「ナル、ドローンの攻撃を集中! 一点に射撃だ!」

「了解!」

「ぬ」


 ドローンのビームを一点に集中させて放つと、流石に身を躱した。

 これなら効きそうだ!


「臆病なだけかと思っていたが……なかなかやる。

 もう一度言う、名を名乗れ」

「……僕は! レフ……」


 あー、噛んだ。ごめんなさい、こんな大事な場面で。

 息を大きく吸って、呼吸を整えて……


「僕は、レスト! レスト・スレインズ! トレジャーハンターだ!」

「承った。行くぞ、レスト・スレインズ」


 シャンガルの目の輝きがいっそう強くなる。

 今まで何度か修羅場をくぐってきたけど、過去最高かな……

 でも仕方ない、怖くて仕方ないけど、やるしかないんだ!

 行くぞ!



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