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グランディルにて

 グランディルに降りた後にその場所すぐに向かった……

 訳ではなく2日ほど待機。付け焼刃だけどリアさんにお稽古をつけてもらった。


「ほれほれフィオり~ん、腰が入ってないぞ~へっぽこめ~」

「は、はい!」

「ナルるん~レストの命中率はいかがかな~?」

「約62%です」

「まだまだだなぁ~レスト~。感覚で撃つのはまだ早いと言っておろう~

 ちゃ~んと照準器(サイト)を使えよ~ぅ」

「で、でも多すぎ」

「言い訳むよ~う、にへへへ」


 フィオナはリアさんにみっちりしごかれているが、

 僕はお稽古開始10分ほどで接近戦は向いてないと言われて、

 お古のレイガンをもらった。

 レイガンの方はどうやら僕に向いていたようだ。

 フィオナもやってみたいと言って試し撃ちしてたが、からっきしだった。

 うん……まぁ、役割分担だよね、とお互いを慰めあった。

 

 リアさんと言えば1本の腕でフィオナの攻撃を軽々といなしつつ、

 残り3本の腕でその辺からかき集めた石だの岩だのをポイポイ投げる。

 それをただひたすら撃つ。多い。

 

 リューちゃんは、たどたどしいけどもう空が飛べるようになったので、

 石だの岩だのを集めてきてくれる。成長早すぎでしょ……

 原理はよく分からないが重力を操って、滑るように空を飛ぶ。

 宇宙空間もああやって飛ぶんだとナルが言っていた。

 さらに宇宙空間でも隕石龍は生活できるようで、他の宇宙生物も捕食するのだとか。

 いよいよ龍っぽくなってきたぞ、リューちゃん。


「いよっし、お稽古しゅうりょ~う」


 いよいよリアさんの最後のお稽古が終了した。

 今日のお稽古が終われば明日まで休んで、いよいよ救出作業だ。

 最初はナルがすぐに行こうとは言っていたけど、

 防衛装置フル稼働のところに行くのに、今のままではみすみす死にに行くようなもの、

 とリアさんに言われると確かに、と賛同した。

 ていうか、うん、死ぬかもしれないんだ……怖いなあ……

 リアさんは慣れっこらしいけど、人生経験豊富すぎでしょ。

 なんて考えつつ稽古場、っていってもミストラルの着地点そばの岩山地帯だけど……

 そこからエアバイクで飛ぶこと15分、

 グランディルの中でも大きな町、グランに到着した。


 この星での採掘作業は自動化も進んではいるが、

 経費削減だの、人の手でないと掘れない繊細な鉱石採掘だの、

 未だに人の手での作業も多い。

 そういった作業をする日雇い労働者たちの仕事の斡旋を行う、いわゆるギルドをはじめ、

 酒場や道具屋、果ては風俗街など、一通りの施設が揃っていた。

 ただ、戦闘向けの装備は余りなく、採掘の手助けのための道具がほとんど。

 リューちゃんの故郷に行く前に、ここで色々買っておけば良かったかな……帰りに見てみよう。

 でも、ここでは救出のための道具は揃えられないだろうなぁ。

 で、この街に何をしに来たかというと、今日はグランディル名物「岩丼」を食べに来たのだ。

 名物と言いつつ、出している店は少ない。その店のうちの一つに来たってわけ。

 店に入ると店主が迎えてくれた。

 珍しい……岩の精霊種(スピリッツ)岩男(ロックマン)だ。


 ちなみにざっくり説明すると、種族は大きく分けて3つ。

 僕やフィオナのような人間種。ヒューマンとも呼ばれる。

 まぁ猿から進化したタイプだね。

 星によって多少の見た目の違いはあれど、

 文明が発展している星だと結局こういう外見に進化する。

 

 ペルシャやリリスさん、リアさんのような亜人種(デミ)、デミ・ヒューマンは、

 それぞれの星で独自の進化を遂げ、色々な種類がいる。獣から虫から色々だ。

 僕らと体形は変わらずとも、それぞれの生物の特徴を備えていたりするので、

 実はちょっと羨ましい。進化の過程はまだまだ研究中だ。

 寿命も、僕らと同じくらいだったり、短かったり、長かったり……

 ただやはり、文明を発展させるとなると二本足で歩き、手が発達する傾向にある。


 最後に、精霊種(スピリッツ)、スピリチュアル・ヒューマンと言われる種族。

 まぁ亜人種の一種だけど。

 岩だの木だの水だのエーテル体だのが、人を初めとしたいろんな形をとってる。

 形態は各人の好みだったりするらしい。いいなぁ。

 知能は高く言語も話すけど、翻訳出来ていない言語もまだまだあるので、

 なかなかにコミュニーケションが難しかったりする。

 僕が初めて会ったのは木が狼の形をとったのだった。

 いきなり話しかけられてビックリしたなぁ……

 とにかく、人間種とも先に説明した亜人種とも違う種族をまとめてそう呼んでる。

 なので、それぞれの種族の人口はそう多くないけど、種類は多種多様だ。

 種族によっては無機生命体ともいわれる。目の前の岩男のおっちゃんもそうだ。

 見た目は人と変わらないけど、自然を操ったり超能力を持ったりしている種族も、

 精霊種に分けられる。《万年アイドル》アリスちゃんもそうらしい。

 基本的に、長命であることが多い。


 亜人って言い方、差別用語じゃないかって?

 まぁ確かに差別用語だからなくそう、って動きもあるにはあるんだけど、

 向こうからはこっちが亜人って言われてるからなあ……

 たまに向こうからは個性のない奴ら(ニュートラル)とか言われてるし。

 正直、みんなあんまり気にしていない。おおらかな世界だ。


「おっちゃ~ん! 岩丼4つよろしく~ぅ」

「あいよっ! 先払いだ!400ルイン!」


 高い! いやまぁお財布の中身的にはそうでもないんだけど……

 リューちゃんも入れて4人前で400ルイン。一人約1万円だと……?

 目立たないようにリューちゃんにローブを着せてきたけど、

 無理して連れてくることなかったかな……いや、仲間外れは良くない。

 まぁいい、色々お世話になってるし、ここは僕が出そう。


「ちょうど収入もあったことだし、僕が出しますよ」

「にへへ、かっちょいいじゃ~ん、でもこういうのは年長が出すって決まってるんだなぁ~」

「え、でも」

「いいのいいの、気にしな~い! フィオりんも……まぁお金ないもんね~」

「う……その通り……です……」

「てなわけでお姉さんに任せなさ~い」


 漢気のあるお姉さんだ。ここは素直に甘えておこう。

 てなわけで待つこと十数分。来ましたよ、岩丼。

 まず、量がすごい! 丼がでかい! 説明不要ッ! とはいかないよね。


「なんていうか……すごいビジュアルね」

「噂にゃ~聞いてたけどね~」

「これ食べられるんだよね……?」

「キュイ~?」


 ほっかほっかの紫色の米の上に……黄色い石粒がばらまかれてる。そんな印象だ。

 後は何もない。タレすら。石と米だけのストイックなお料理ですね……


「なんだなんだぁ? 怖気づいたかぁ? 騙されたと思って一口いってみろい!」

「マスター、店主もこう言っています。ささ、早く」

「ナル……味の感想が早く聞きたいだけでしょ……」


 仕方がないので先陣を切ることとなった。

 普通の人はスプーンで食べるみたいだが、僕は自前のマイお箸。

 とりあえず石を摘まんでみる。あ、カツンって言った。これダメなやつ。


 「…………」


 二人の方を見る。リアさんはまだ手を付けずに店主と談笑中。

 フィオナはなんか知らないけどサムズアップしている。いやいやいや。

 リューちゃんは……


「キュッキュッキュー!」


 うわすごいがっついておられる。

 なんだか勇気が出てきたぞ……ええい、ままよ!


「あむっ!」


 石粒を1つ口に放り込む。ん!? すごい濃い味だ! コンソメを更に濃くしたような……

 それに硬いけど……意外とかみ砕けそうだ!

 歯に力を込めると、ゴリゴリと砕けて砂になって、一粒一粒の味が濃い!

 パッと見、殆ど米じゃないかって思ったけど、なるほどご飯が進むなあ!

 米もなんだろうこれ、噛む度に中から暖かい汁があふれてきて……これも美味い。

 二つが混ざり合って上等なお粥でも食べてるようだ。


「な、うまいだろ?」

「マスター、マスター!どのような味なのですか!?」


 思わず店主に顔を向けると店主が二カッと笑う。僕は無言でコクコクとうなずく。

 僕がリアさんとフィオナの方を見ると、二人は顔を見合わせてようやく手を付けた。

 そしてやっぱり店主を見る。店主のサムズアップと黒光りする歯が眩しい。


「はぁー……ごちそうさまでした……」

「美味しかったけど……石よね? 体に悪くはないのかしら……」

「心配ご無用! 一応有機物だ! しいて言うなら消化悪いからよく噛めってくらいだ!」

「いやぁ~うちのお店でも出そうかね~。店主さぁん、作り方教えて~」

「いやリアさんそれは……」

「あぁ、いいぜ!」


 いいのか……なんて寛大な店主だ……


「いいの!? やったぁ~」

「まずこの岩を調理するにゃ特別な調理師免許がいる。

 見た目は普通の岩だからな、違いが判らなけりゃあお話にならねえ」

「えぇ~……」

「僅かだが匂いがするのさ。

 口に含めば分かるがそんなの客には食わせられねえからな。

 で、まずは500時間ほど水につける。塩水だが海水はだめだ。

 パッと見は分かりづらいが色が薄くなればOKだ。つけすぎると砕けて味が逃げる。

 その後、自然乾燥させた上で1000℃の熱をかけながら、200時間ほどかき混ぜて……」

「あ、やっぱりいいよぉ……」

「だっはっは! そりゃそうだろな! まぁ手間暇かかるってこった!」

「あ、店主殿……ぜひとも続きを……」

「お? なんだおめぇ? なかなか見込みのある……なんだ! 玉だな!」


 ナルが知りたがったので店主は喜々として語る語る。

 その後も十数個複雑な工程があるようで、納得のお値段でした。

 調理が終われば後は保存がきく食料らしく、盗まれることも珍しくないのだとか。

 でもナルはそれを知ってどうしようってんだ……


「宇宙は広い……まだまだ知らないことも多いです」

「ナルるんは熱心だねぇ」

「これもまた1つの知識です!」


 エアバイクでの帰り道、ナルが岩丼の調理方法について延々と語っていた。

 岩を食べるための人の終わりなき知的好奇心に感動したとかどうとか。

 確かにあんな複雑な工程を経て岩を食べようなんて、人は偉大だなあ……

 そんなこんなでミストラルに戻った時には日も傾いていた。

 明日はいよいよ、朝から救出作業だ!

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