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潜入、迷宮都市

「で、ここがその遺跡ってわけか」

「えぇそうよ……兄さん、待ってて……!」

 

 フィオナが残したビーコンをたどると何の変哲もない洞窟があった。

 グランから2000kmほど。といってもミストラルならすぐの距離だ。

 ただ僕は残り100kmほど走った。

 足のスプリントブーツを目敏くリアさんに見つけられたので、

 練習も兼ねて走りなさい、との仰せだった。

 普通に断ろうと思ったけど、

 ナルがどこでどのような価格で手に入れたかぜひ聞かせて、と言ってきたので、

 ナルを船に置いて喜んで提案を受け入れた。

 でも去り際に確かに聞いた。マスターには救出が終わったら聞きましょう、と……

 そう、確かに聞いたんだ……はぁ。


 この辺りは質のいい鉱石が採れないらしく、施設もなく荒野が続いている。

 なので最大出力でも気兼ねなく走れた。

 最初は最低出力でもバランスを崩してまともに走れなかったけど、

 しばらく走っているとだんだんと慣れてきた。

 そして最大出力だと100kmでもあっという間だった。恐ろしい靴……

 帰りはグランまで走れ、とリアさんの仰せが。流石に断った。


「ロックがかかってる……無理矢理こじ開けたのも直されてる……」

「警備装置が復旧したので、電源が回復したのでしょう」

「だったら破壊工作の対策に、修理ドローンが走っていても不思議はないね」

「なぁ~るほどね~」


 洞窟の奥まで進むと、不釣り合いな人工物のメカメカしいドアがそこにあった。


「ナル」


 ナルの本体……球体の部分ね。実は取れます。僕しか取れないけど。

 ナルを土台から外してドアのパスコード入力装置にくっつける。


「了解」

「え? え?」

「警備システムに感づかれないようにね。入ったらお出迎え、はやだよ」

「分かってますよ」

「さっすがぁ~ナルるん」

「何? 何してるの?」


 フィオナはよく分かってないみたいだけど、ハッキング中。

 ピー、と音がした後、ドアが開く。

 まずはリアさんが滑り込むように身を屈めながら中に入る。

 辺りを見回した後、手招きされたので僕らも中に入った。

 

「そんな……」

「どうしたの、フィオナ?」

「前に来た時と構造が変わってる……」

「ん~…………仕方ないねえ~、とにかく進みましょ~」


 構造が変わってる? どういう事だろう。よく分からないな……

 でもリアさんの言う通り、とにかく先に進むしかないだろう。

 3人一列になって、少し距離をあけて進む。

 前列は僕。正直怖いけど、防護服のおかげで不意に何かあっても大丈夫だろう。

 後列はリアさん。特に何も気にするでもなく、鼻歌を歌いながら歩いている。暢気すぎる。 

 真ん中にはフィオナ。フィオナに何かあっては元も子もないので一番安全な場所だ。

 リューちゃん? 置いてきたよ当然。

 今頃《万年アイドル》アリスちゃんの旅番組を見ている頃だろう。


 にしても無機質な遺跡だなあ。

 床も天井も真っ白いよく分からない素材でできている。

 等間隔にライトがついていて、中はすごく明るい。

 どこまでも続く道、時折、道が二つ三つに分かれてたりするけど、

 部屋の類がまるでない。

 床には時々天井を通りぐるりと一周するように溝がある。

 よくよく見ると、等間隔であるようだ。


「フィオ、何か見覚えのある景色はないのですか?」

「何もない……というより本当に同じ場所かしら? 前は色んな部屋があったのに……」

「リアさん、何かわかりません?」

「うぅ~ん、そうだねぇ~……これは……」


 リアさんが何か言おうとしたとき、突然壁に穴が出来る。

 その中から飛行ドローンが出てきた。

 止まったり急に動いたりしながら、こちらに動きを悟らせないように近づいてくる。


「マスター、警報ドローンです! 撃ち落として下さい!」

「う、うわわっ!」


 ナルに言われて慌ててレイガンの狙いをつける、

 が、不規則な動きをするドローンには当たらない。

 

「レスト君、落ち着いて!」

「くっ……狙いが……」


 クソ、ある程度動きが予測できるリアさんのお稽古の時と全然勝手が違う……

 攻めあぐねていると、突然僕の背後からレイガンが発射され、

 一撃でドローンのど真ん中を打ち抜いた。


「にっへっへ~まだまだ甘いねぇ少年」


 クルクルとレイガンを回すと腰のホルスターにしまう。まるで熟練のガンマンだ。

 なんなんだろう、この人の戦闘スキルの高さは……

 それよりも、警報ドローンって言ってたな……


「ナル、警報ドローンって」

「その名のとおりです。遺跡の中を巡回しているのでしょう」

「それに見つかったって、まずいのかしら」

「まずいだろ~ねぇ~」

「う……ごめんなさい……」


 あぁ、リアさんみたいに一発で仕留められていたら……


「マスター、仕方のないことです。

 見つかった時点で他のドローンに情報は発信されているでしょう」

「そうよ、私の武器じゃそもそも届かないし」

「こっからどうするかを考えようねぇ~」


 はぁ、なんだか慰められてる。でも確かにくよくよしても仕方がないな。

 僕は僕の役割を果たそう。フィオナを守りながら確実に前に進むのだ。

 攻撃ドローンの攻撃も、僕ならある程度耐えられるだろう。

 時間が経てば防護服も回復するし、休み休み安全に進もう。


「そぉ~ら、おいでなすったよ~」


 リアさんは暢気に構えているが、通路の曲がり角からドローンが飛んできた。

 丸鋸を高速回転させながら、こちらにまっすぐ向かってくる。


「次こそ、任せて!」


 リアさんの教えを思い出す。目測で狙いをつけず、

 照準器(サイト)を使って……撃つ! 当たった!

 

「よっし!」

「やったぁ! レスト君!」

「そ~そ~、落ち着くことが大事だよ~」


 今度は一発で撃ち抜いた。

 さっきのドローンと違ってまっすぐ向かってきたのもあるけど、

 少しばかり自信を取り戻した。ふっふっふ。


「レスト君、次!」

「任せ……! て……?」


 また曲がり角からドローンが出てきた。その後ろに続いてドローンがもう一つ。

 その後ろに続いて更に一つ。その後ろに……

 ひい、ふう、みい、よぉ、あ、もう数えられない……


「フィオナ! 僕の後ろに!」

「わ、分かったわ!」


 フィオナを僕の後ろに隠れさせる、次はリアさんだ。


「リアさ……」


 そこまで言いかけて、絶句した。

 床の溝に沿って、音もなく高速で通路が切り取られていた。

 いや違う、別の通路と入れ替わろうとしてるんだ。

 リアさんはこっちに向かって手を伸ばしていたがもう手遅れで、完全にはぐれてしまった。

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