便り
私はお嬢様のご実家からの手紙を受け取った。
お嬢様宛と私宛。お嬢様に渡したのはおそらくご家族の励ましのお言葉であろうと思っていた。そして私宛の手紙には。
「なるほどね」
お嬢様の姉君は他家に嫁いでいらっしゃる。その姉君からのご連絡だった。
お嬢様より十二歳上の姉君は年の離れた妹をとても可愛がっておられた。
お嬢様が幼い時に嫁がれたので会いにいらっしゃることはそれほど多くなかったがお嬢様が王太子の婚約者に内定した時にはその後見としてお嬢様が王宮内ではお嬢様が将来の王太子妃、そして王妃として教育を受ける際には常にお嬢様の傍にいて温かく見守っていてくださった。
そんな姉君は当然王太子にお怒りでした。
姉君は国の重鎮である方のご子息に嫁いでおり、あと十年もすれば姉君のご夫君が後を継がれるだろうと言われております。
つまり将来のために姉君はいろいろと根回しや情報収集を怠っておられません。そんな情報網や手下たちの手を使ってきっちり王太子を潰すために頑張っておられるようですがいま戦時下であるため表立っての行動はとることができないそのことにずいぶんといら立っておられるようです。
そして、姉君の筆はくだんの男爵令嬢のことを記し始めました。
マリア・メタリア・フォンタンジュ、それがその男爵令嬢の名です。
まったくもって男爵令嬢の面汚しです。私自身男爵令嬢ですがあのようなふざけた女と同類に思われたくありません。
男爵令嬢は王太子の持つ離宮に今はいるそうです。王宮から一番近い離宮で王太子は三日も空けず通っているのだとか。
そして王太子の側近たちも王太子に付き従い王宮と離宮を行き来しているという。
王太子の側近となれば当然要職にある親族を持っている。その行動はその親族たちの顰蹙を買っているが物ともしていないという。
そして何よりおかしいのは王と王妃だ。
王太子が身分低い女にのぼせ上り高貴な血を引く婚約者である令嬢をないがしろにしたとなれば当然王太子にそれなりの対応をとるはずだ。
そしてそうしていればそもそもお嬢様はこんなところに送られるはずはなかった。
そうした王たちの動きを姉君は不審に思っていられるようだった。
最後にその手紙は必ず救い出すのでそれまで絶対にお嬢様を守り抜けという言葉で占められていた。




