鐘が鳴る
そして、婚礼の鐘が鳴る。
隣国の王子と我が国の王女の。
王と王太子はそれぞれ存在を廃された。二人は辺境の離宮で監視されながら生きていくことになる。
あの娘は人の精神に巣くい狂わせる力を持っていたらしい。その能力に驚異的な精神力で立ち向かい毒の茶を与えた王妃は恐ろしく精神を摩耗させたそうだ。
そんな話を淡々と彼女は伝えた。
私の傍らには彼女がそのままいた。
今更王宮に戻ることはできないとそう言って。
「さすがに王妃陛下はもう引退なさるそうですわ、国王陛下や王太子殿下のいらっしゃるところとは反対の場所にある離宮に住まわれるそうですの」
彼女の行き先はいまだに決まらないようだ。
中央に戻ればまだ、縁談があるのだろうか。
「君はその、結婚は考えていないのか」
行ってしまって自分を殴りたくなる。あまりにも直截な言葉に自分でも呆れる。
「高位貴族はほとんどが幼い時に結婚を決めるのものですわ、一度婚約破棄されたら行き先はまあありませんわね。もしかしたら幼いころからの婚約者を儚くされた方も探せばいるかもしれませんが」
カタリーナはそんなことを言う。
「かといってまたあちらに戻るのもどうかと。本当に私はああいうことに向いていないと骨身にしみましたから、むしろあの方に感謝すべきかもしれませんわ」
かつて自分を陥れた相手にそんなことを言う。
「怨んでいないのか?」
「怨んでどうするのですか、すでに亡くなった方ですよ、もしかしたらあの方も哀れな方だったのかもしれませんわ」
婚礼が終われば大使館というものが造られるのだそうだ。そこに様々な部署から精鋭が送られるのだそうだ。
「大使館では」
「ええ、この国の戦はこれからです。ここからあの国の中枢に食い込み浸食していく」
カタリーナは薄く笑う。
「そういえば、あちらの神殿が焼け落ちたらしい」
「あら、大変、さぞや動揺しているでしょうねえ」
俺は彼女の顔を見ないようにした。
私は暇だが、他の同僚はずいぶんと忙しそうだ。やはりかつての敵国の王子が婿入りしてきたというの国民感情に配慮して王族のパレードは行わないが。それでも警備は厳重でそれに自分たちの感情も複雑だろう。




