ある貴婦人の疑問
窓の向こうに宮廷が見えた。
巨大な建物は白い大理石をふんだんに使われて常に輝いていた。
窓の向こうをながめていた女は小さくため息をついた。
女はまだ若く針のある肌に高価な白粉で化粧し金と等価の紅をさしている。
長い金色の髪は宝石の櫛でまとめられている。
真紅のドレスに埋もれるように絹張の長椅子に腰掛けてただ宮廷をこれだけは自前の美しい青い瞳で見ていた。
長椅子の横にある猫足のテーブルの上に置かれた奇麗な形に焼かれた焼き菓子を一つつまむ。
「おかしなことばかり起こるわね」
そう傍らにいた男に言う。男は部屋の隅に微動だにしないで建っていた。
男の顔は図形のような文様が全体的に描かれていた。
「王太子がこの非常時に更なる非常識な行動をとったのもあるけれど、まったくあの事なかれ主義のあの小物が男爵令嬢ごと期のためにねえ」
小さな赤いドライフルーツの乗った焼き菓子をつまむ。
「それにおかしいのは陛下たちよねえ、どうしてあの愚行を止めないのかしら」
男は無言だ。返答がないのを当然として女はお茶を一口飲んだ。
「もっとおかしいのはカタリナよ」
そして女は目を伏せる。
「あの子は確かにあの王太子を愛していなかったでしょう。でもそれはあの王太子も同じではないの?それなのにどうしてカタリナが王太子に対し負い目を感じなければならないの」
そして女は傍らの男を見た。
「ああ、確かにカタリナは優しい子よ、思いやりがありすぎるのがあの子の欠点かもしれないわね」
女は無表情なまま呟き始める。
「でもね、確かにあの男を愛していなかったかもしれない、それは確かだけれどそれでもまったく怒らないのはおかしいの、だって愛は嘘だったけれども間違いなくあの子は立場のための努力は怠らなかったのだから」
そして男に目をやった。
「どう思う。あの男爵令嬢だけど」
男の目が明らかに鈍い光を宿し始めた。
「もしかしたらかもしれないわね」
魔法は魔法使いだけのものだが例外がある。ごくまれに魔法のような現象を魔法使い以外の人間が魔法のような現象を起こすこともあるのだ。ただそれは魔法使いのように活用できるものではなく弊害しかないことが多い。
そうした人間は街や村に行き場がなくなるので魔法使いの集落に送られるのだ。
そうした人間は魔法使いにとっても福音だ。そうした人間によって近親結婚の弊害を減らすことができるのだ。
「あの女が。お前たちに孕み腹として扱われるのならいい気味かもしれないけれど、それはダメよ、危険すぎる」
男は唇をゆがめる。
「あの子が遠くにやられたのは案外よかったのかもしれない」




