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砦の春
その村は巨大な城塞の陰に隠れるようにあった。
砦は森の入口に作られていた。
それは巨大な石の構造物で逆翼の形状で周辺を包むような配置になっていた。
そして、今砦はとても大勢の人間が毎日のように駆けつけている。
そして大量の物資が毎日のように運び込まれていた。
それが意味することをその村の人間はわかっていた。こわごわと砦に吸い込まれていく人間と物資を見つめていた。
そして、今度は小さな馬車が砦を目指していた。
一頭立ての小さな馬車は馬の足音以外はいたって静かに進んでいく。
そして砦の入口で止まると馬車から人が下りてきた。
藍色のお仕着せを着たメイドがまず降りる。そしてその後を灰色のドレスを着た美しい貴婦人が下りてきた。
貴婦人はメイドに手を取られたまま歩きだし砦の前に立っていた門番の兵士がまるで目を落としそうなくらい目を見開いていた。
その光景を村人たちは奇妙なものを見るような目で見ていた。




