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14-3・現実世界②

 翌日、冒険者ギルドでのクエストの二重獲得が可能になった。真田さんが立派な鎧を着けたおかげで、子供扱いをされなくなったのだ。まぁ・・・鎧1つで対応が変わるシステムに問題有りというか、やはりこの世界の住人は知能が少しアレというか・・・。


「あれ?無い?」


 薬草探しのついでで、昨日放置した真田さんの剣と道具袋を取りに来たんだけど無かった。


「モンスターに持っていかれちゃったかな?

 真田さんの新しい剣、買わなきゃだね」

「どうせ、重たくて満足に振れないから無くてもいいや。

 あたしには、魔法と尊人くんにもらったナイフがあるし」


 地図は腰布に挟んでおいたから無くさずに済んだ。ホーマン家から借りた道具袋は弁償しなきゃだけど、中身は採取をした薬草だけ。


「ちょっと悔しいけど諦めるしかないね」 


 クエストの二重獲得、鎧装着による安全率の向上、女神の胸当が真田さんの魔法を補う、これらの効果で、日銭稼ぎは大幅に楽になった。僕がホブゴブリンから奪ったレザーアーマーを装着しているおかげで、オークやコボルトレベルのザコモンスターは寄って来ない。

 僕達の冒険者の真似事は、一定の軌道に乗る。


「うわっ!マジかっ!?」

「超ムカ付く~~~~!!」


 真田さんの剣、町の道具屋で売っていた。1回も人やモンスターを斬っていないから美品扱いで、そこそこの値が付けられている。


「どうする?買い戻す?」

「ムカ付くから買わな~い。

 あたしには、魔法と尊人くんにもらったナイフがあるし」


 モンスターに持っていかれたのではなく、他の冒険者に持っていかれたらしい。納得できないんだけど、「放置しちゃった僕達にも責任があるんだから仕方が無い」と考えて割り切る。・・・全然割り切れないし、すっげームカ付くし、歩いてる冒険者が全部窃盗犯に見えてしまうんだけど。


・

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・


 緊急時に安全圏に逃避できるのが僕の切り札。

 これまでに何度か「使うべきだった」と反省したことがある。そして、あまり考えたくはないけど、これからも「使わなければならない」状況に追い込まれる可能性はある。

 真田さんに“あの光景”を見せたら、きっと動揺するだろう。でも、危機回避の過程で突発的に見せるより、事前に見せてキチンと説明をした方が良いか?ずっと迷っていた。


「ねぇ、真田さん。僕の特殊能力、前にちょっとだけ説明したよね」

「レンタルって言ってたね。リターンを借りてて、現実世界に帰れるんだっけ?」

「うん、それ。ちゃんと説明しておきたいんだけどいいかな?」

「うん、もちろん」 


 特殊能力を発動させてリターンを選択する。僕達の目の前に直径1.4mくらいの光穴が出現した。良かった。真田さんとベッタリ密着しなくても、何とか通過できそうだ。


「いざとなったら、僕と同時に光の穴を通れる人は、確実に安全圏に逃げられる。

 僕を含めて2~3人くらいかな?ちょっと情けないけど、これが僕の切り札」

「通れば現実世界に帰れるってことだよね?」

「帰って終わりじゃなくて、またこっちに戻って来なきゃだけどね」

「そっか。あたし達だけ現実に戻って終わりってわけにはいかないもんね。

 でも1回、行ってみたいな」

「うん、付いてきてもらいたい。

 現実世界に1分滞在するだけで、こっちでは1時間くらい経っちゃうから、

 あんまり長居はできないけどね」

「うん、解った」

「きっと驚いちゃうだろうけど、できるだけ落ち着いてね」

「難しそうだけど、できるだけ頑張る」


 僕達は光穴の前に並んでたって、「いっせーのせ」で踏み込み、視界がホワイトアウトをする。


・

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 以前と同じように、僕は廊下側の壁を背凭れにして座っていた。以前と同じように、真田さんが僕の上に覆い被さっている。


「真田さん・・・起きて」

「・・・んんっ」


 以前と違うのは、真田さんは仮死状態のままではないこと。意識を取り戻した真田さんと目が合う。気恥ずかしいんだけど、真田さんを問答無用で退かすのが正解とも思えない。捲れ上がってるスカートくらいは元に戻した方が良かったかな?


「わぁぁっっっ!!尊人くんっっ!!!」


 これも、こっちに来る前に説明し解くべきだったかな?あとで「現実世界に戻る度に同じ状況になる」ってことは伝えておこう。


「なんで尊人くんと抱き合ってるの?

 驚くけど落ち着けって、こ~ゆ~こと?」


 真田さんが飛び起きて僕から離れる。まぁ、当然こうなるよね。


「違う、これじゃない。できるだけ落ち着いて周りを見て」

「・・・え?」


 周りの状況に気付いた真田さんが言葉を失う。倒れているクラスメイト、半壊した教室、壁にメリ込んだ隕石、充満している青い靄・・・真田さんが立っている以外は、僕にとっては全て見覚えのある光景だ。

 露骨な接触は控えるけど、櫻花(おー)ちゃんは「穏やかな仮死状態」を維持している。


「縫愛(ぬあ)っ!凪(なぎ)ちゃんっ!詩(うた)ちゃんっ!」


 真田さんが、友達の沼田さん&長野さん&上杉さんに声をかけて起こそうとする。だけど誰も起きない。


「みんな死んじゃう。誰か・・・お医者さん、呼んでこなきゃっ!」

「待って、真田さんっ!」


 教室から飛び出していこうとした真田さんの腕を掴んで止める。


「ちゃんと説明してなくてゴメン。この青いモヤモヤから出ちゃダメなんだ」

「なんでっ?このまんまじゃ、縫愛達がっ!」


 やっぱり、真田さんに見せるべきじゃなかったかな?力石先生が僕にしてくれたみたいな上手な説明ができない。


「この状況を見ておいてほしかったの。

 異世界に戻ってから、真田さんがちゃんと解るまで説明するね」


 フィンガースナップをして「現実への帰還状態」を解除。周囲がホワイトアウトをする。


・

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 異世界に戻ってから、「事故直後の状態のまま時間停止をしている」、「穏やかな仮死=異世界で生存、瀕死の仮死=異世界で死亡」、「青い靄の外に出たら仮死状態の全員を見捨てて生還できる」、「多数決による帰還をすれば皆が救われる」、時間をかけて下手なりに説明をする。


「なら、縫愛や凪ちゃんや詩ちゃんは、どこかで元気にしてるってことなの?」

「うん、無事ってこと」

「会いたい」

「うん、探しに行こう。でも力不足のまんま探し回っても、僕達が脱落しちゃう。

 だから僕達は冒険者をやって、力を付けて、旅立つ準備をしているんだよ」

「ホーマンさんのお屋敷から出て自立を目指してたのって、その為だったの?」

「うん、ちゃんと説明してなくてごめん」


 真田さんは納得をしてくれた。


「ねぇ、尊人くん。

 自分だけ青いモヤモヤから出るってゆーのは考えなかったの?」

「ん?」

「恥ずかしいんだけど・・・尊人くんの話聞いて、あたしちょっと考えちゃった。

 そうすれば、『あたしだけは普通の生活に戻れるのかな?』って。

 そんなのダメに決まってるのにさ」


 一度も考えなかったわけじゃない。

 さっきだって「状況を把握していない真田さんが青い靄の外に出る」という不可抗力を起こせば、「真田さんの所為で仲間達は見捨てられ、僕達は異世界に戻れなくなる」って形で、僕は「僕の所為」以外の理由で現実世界に生還できた。

 あの時は、一瞬、そんなセコい発想を持ってしまったけど、直ぐに自分を「愚か」と感じた。


「そーゆーズルいの、なんか苦手なんだよね。

 僕だけが助かるんじゃなくて、現実世界でみんなに会いたい」

「尊人くんが真面目な子で良かった~」

「えへへっ」


 悪口に近い「真面目」は頻繁に言われる。自分でも「真面目すぎる」って思っているので、言われても特に気にしない。だけど真田さんの言ってくれた「真面目」は、同じ言葉なのに嬉しかった。僕は「真面目で良かった」と感じる。


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