14-2・女神の胸当
昼頃には宿のベッドで真田さんを休ませたので、夕方までには、それなりに元気を取り戻してくれた。僕が「大丈夫?」と確認したら、「月に1回くらい、今より体調が悪い日がある」と言われたんだけど、よく解んないので「大変だね」と言っておく。
ホーマン邸での晩餐会では、真田さんが「ホブゴブリン退治」を語る。なんか、僕のことを「的確な判断をしつつ、凄く大活躍した」みたく説明してて恥ずかしい。
「それは勇ましいですわ」
「英雄は英雄を知る。ミコト様も英雄なのですね」
真田さんが勇ましく語り、シリーガルさんとバクニーさんが高評価をして、安藤さんが笑いを堪えてる。多分、安藤さんの評価が正解です。
「・・・ぼ、僕は兵士Dですから」
「あら、何のことですの?」
真田さんが「死闘を経て鎧を獲得したこと」を語り、シリーガルさんとバクニーさんは「その勇姿を拝見したい」と熱望し、安藤さんは「兵士D」でウケている。
「ミコト様が鎧を得たお祝いで、
以前、お姉様が着けていた鎧を、サリ様にプレゼントしてはどうかしら?」
「それは名案ですわね、バクニー」
シリーガルさんが執事を呼んで「持ってきなさい」と指示をする。
「気持ちは嬉しいんですけど、それはちょっと・・・」
真田さんが遠慮をする。当然なんだけど、鎧は高い。だから今まで「買う」って発想が無かった。
「お気になさらないでください。
戦う機会など無いのに、過去に興味本位で衝動買いをしてしまった安物です」
この人達の金銭感覚はおかしいので、「安物」って表現はアテにならない。
「成長に伴いサイズが合わなくなったので、処分するつもりだったんです。
サリ様が引き継いでくださるなら、これほど喜ばしいことはありませんわ」
「きっとサリ様にお似合いになりますよ」
執事さんがシリーガルさんのお古の鎧を持ってきた。胸の中央に石が埋め込まれ、女神のレリーフがあり、銀色なんだけど光の当て方次第で七色に輝く、美しい胸当てだった。石の埋め込まれた2つの腕輪とセットになっている。
僕の鎧は「最初の村で売ってる」ようなレザーアーマーで、真田さんのは「ラストダンジョンの宝箱に眠っていそう」な女神の胸当て。「これがゲームだったらバランスぶっ壊れてねーか?」って次元の差だ。ちょっと・・・いや、かなり羨ましい。でも、Sサイズなので、僕には装着できそうにない。
「さすがに、こんな高そうなのもらえませんよ」
「そう言わずに受け取って下さい」
安藤さんは「くれるってもんは貰っとけ」と言う。困惑気味の真田さんは、僕に視線を向けて、無言で「どうしよう?」と訴えてきた。
「とりあえず借りれば良いんじゃない?
真田さんが使わなきゃ処分するってならさ」
「そう・・・だね。借りるだけなら」
「是非、試着してみてください。ピッタリだと思いますよ」
執事さんに手伝ってもらって、真田さんが女神の胸当て、銀の小手、ベルトを装着した。
「わぁっ!思ったより軽いし動きやすいっ!」
真田さんが、体を捻ったり跳び跳ねて装着感を確かめる。
「素敵。サリ様なら着こなせると思っていましたわ」
「女神レリーフの額にある宝石は魔力発動の補助をします。
今までよりも、魔法を操りやすくなりますよ」
「すっげー!」
しかも、今の真田さんにピッタリな付与効果付きだ。
「どうかな、尊人くん?似合ってる?」
「うん」
真田さんが神々しく見える。
「女神様が付いてて可愛いよね?」
「・・・うん」
可愛いってよりメッチャ格好良い。真田さんも気に入ったようだ。
「こんな素敵な鎧なのに、なんで使わないんですか?」
僕の質問に対して、笑いを堪えていた安藤さんが「バーカ」と言いたげな眼を向けた。安藤さんの呆れ顔の意味と、今のが失言だったことに気付いたのは、ここから十数秒後になる。
「お姉様が子供の頃に購入した少年用の胸当てなんです」
「ですが、発育と共に胸が苦しくなって装着が難しくなり・・・
早くから私以上に発育をしたバクニーでは装着する機会が無く・・・」
さっきまで笑顔だった真田さんの表情がフリーズした。
「 (*`Д´*) & (゜´Д`゜) 」
直訳するとアレだ。子供の頃に買ったんだけど、胸の膨らみを考慮していない男性用なので、シリーガルさんの胸が大きくなって着られなくなった。シリーガルさんよりも胸が大きいバクニーさんでは着られるはずがない。でも真田さんなら着られる。そう言う意味だ。
さすがはホーマン姉妹。悪意ゼロなのに真田さんをディスってる。安藤さんは手で顔を隠して笑ってる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
なるほど・・・御都合主義が発動してるのかと思ったら、ちゃんとオチがあったんだね。
「 (゜Д゜) 」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
真田さん、金縛り状態のまま動かない。ゴメン、僕が余計な質問をしちゃった所為だ。
「そのうち大っきくなるもん」
「・・・もう無理だろ?」
真田さんが小声で抵抗するが、安藤さんが即座に冷めたツッコミを入れる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
僕は無言。今朝は「真田さんは可愛い」とフォローできた僕だけど、「真田さんは胸が大きい」とはフォローできない。「胸が小さい方が好き」ってフォローもなんか違う気がする。
つまり、今の僕は手詰まりだ。真田さん、今日は色んな意味でごめんなさい。
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※早璃について若干のフォロー
元々平均と比較して発育が遅く、且つ、陸上競技の為に体を鍛えている為、体脂肪がかなり低い。




