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19-4・アンさん再び

 良い機会なので、道中では以前から疑問に思っていたことを尋ねる。


北都市ノス東都市アーズマでは、秘境者狩りって盛んなんですよね?

 それなのに、ブラークさんは、なんで僕達を見逃してくれるんですか?」

「主の為に戦うなら忠義がある。故郷の為に戦うなら大義がある。

 戦いを強要される者は、いつ、手の平を返すか解らん。信頼できぬ者は不要だ」


 僕等への親切心かと思っていたけど、もっと高潔な思考だった。確かに、いつ裏切るか解らない人なんて、信頼できるわけがない。ちょっと突き放すような解答だったけど、飾らないからこそ、信頼できる言葉に思える。


「騎士さん達が手を出しにくいと思って帝都に来たんですけど、どうですかね?」

「人目が多いからこそ手が出しにくい。

 確かに帝都ならば4公の騎士団は露骨な武力行使はできない。

 そして帝皇の兵は、争う理由が無いから特殊な戦力を必要としない」


 予想通りだ。やはり、帝都に転がり込んだのは正解だった。


「尊人くんの発案なんですよ」

「良い着眼点だ」

「えへへっ」


 僕が褒められてるのに、何故か真田さんが嬉しそうに微笑む。ちなみに褒められるのはチョット苦手。なんか恥ずかしくなって黙り込んだ。

 真田さんはお喋りだけどブラークさんのことをあんまり知らないし、ブラークさんは雄弁とは言えない。僕が黙った途端に会話が途切れてしまう。


「あの・・・トロールとオーガの攻略法なんてあるんですか?」


 僕は会話が得意ではないけど、僕が間を持たせるしかなさそう。仕方が無いので、「何を喋ろう」を思案の末に、話題を変えて会話を繋ぐ。


「圧倒的な火力で瞬時に蹴散らす。これが最も有効だ」

「・・・でしょうね」


 もの凄く当たり前の答えが返ってきたので、真田さんが僕の袖を引っ張って、小声で「この人もバカなの?」「この世界の住人だからバカなんだね?」と、もの凄く失礼な質問をしてきた。


「ミコトかサリの富醒が攻撃系の能力なら話が早いのだがな。

 今の反応を見て『その類いではない』と把握した」

「正解です」

「一瞬で見抜かれちゃった。この人、バクニーさん達と違って頭いい人なの?」

「まぁいいさ。先を急ごう。

 君等の戦闘能力を理解する為にも、今日中にホブゴブリンを討伐したい。

 トロールやオーガと戦う手段は、それを見て考える」


 ホブゴブリン戦を見てもらって、「オマエ等ではトロールやオーガと戦う手段は無い」と愛想を尽かされたらどうしよう?不安で仕方が無い。

 辺りの景色が平原から森の中に変わり、「そう言えばオーガは街道に出現するんだっけ?」と周囲を警戒しながら歩く。



 出発から4時間が経過。森を抜けて真正面に宿場町が見えてきた。甲羅の盾が重い。町中を歩くくらいなら「革の盾の比べてちょっと重いかも」程度で済んだけど、ずっと歩いてると、僅かな重さの違いがジワジワと積み重なる。対照的に、軽装の真田さんは足取り軽くポンポンと歩いている。


「あと少しで着くよ!」

「サリは小柄なのに大したものだな」

「はい、常に僕よりも真田さんの方が元気です」

「なるほどな」

「ん?何がですか?」

「初めて会った時より北都市ノスで会った時、そしてノスの時より今、

 良い表情をするようになったな」


 自覚はある。いっぱいいっぱいなのは変わらないけど、今が楽しい。この世界を肯定する気は無いけど、今の充実感は、この世界に来たおかげで気付けたことかもしれない。


「きゃぁぁっっ!誰か助けてっ!!」


 森側から悲鳴が聞こえて、赤いドレスの女の子が飛び出してきた!背後からゴブリンに追って来る。


「げっ!アンさんだ。」


 異世界あるある①(再確認)

 唐突に、モンスターに襲われる女の子に遭遇して、助けた途端に好かれる。高貴な女の子のパターンが多い。

 1回助けた時点で囲うので、ほぼ同じ状況で2度も助けるパターンは珍しい。


「マジか!?」


 また追いかけられている。学習能力が無いのかな?それとも、わざと「あるある」を演出している?


「無視しちゃダメかな?」


 真田さん、「え~、助けるの?」的な、もの凄く面倒臭そうな表情をしていた。


「気持ちは解らなくもないけど無視はダメでしょ」


 アンさんとゴブリンの間に割って入りながら、背負っていた剣を抜刀してゴブリンに叩き付けた!弾き飛ばされたゴブリンは、奇声を上げながら逃げていく!


「やばいっ!仲間を呼ばれるっ!」


 狼狽えながら構える!


「尊人くん!アイツに呼んでもらった方が良いんじゃね?

 討伐対象の方から来てくれるかもしれないってことだよね?

 こっちから探しに行く手間が省けるじゃん」

「ああ・・・そっか」


 真田さん、すっげー冷静。


「ミコト様!またもや助けていただき、ありがとうございます。

 私に会いに来てくださったのですね」

「違います!尊人くんは、アンさんのことなんて忘れていました!

 だから、お礼のご馳走とか、お礼の夜這いは不要です!」


 僕が喋るより先に真田さんが牽制をして、アンさんを押し退けながら僕の隣で構える。アンさんのことが嫌いで、俯瞰で状況を見ていたから物事を冷静に見極められるのかな?


「ミコトはサリの尻に敷かれているのか?」

「まぁ・・・そんな感じです」


 ブラークさん、今、その質問は不要です。ブラークさんから見ればゴブリンやホブゴブリンなんて片手間で倒せる雑魚かもしれないけど、僕にはまだ強敵なので緊張しています。


「ガルルルッ!」


 いくつかの咆吼が聞こえ、ゴブリン5人とホブゴブリン1人が姿を現した。ホブゴブリンは大きな剣を持って、革の胸当てと小さな鉄の盾を装備して、偉そうな革のマントを羽織っている。

 アンさんの護衛はブラークさんに頼むとして、僕と真田さんの2人で計6人を相手にするのはチョット厳しい。ホブゴブリンは後回しにして、逃げながら戦って、先ずはゴブリンの数を減らしていくべきか?


「ミコトとサリはホブゴブリンに集中しろ。

 ご婦人の守りと、ザコ5匹は俺が引き受ける」


 さすがは仕事ができる男。ブラークさんは、僕が頼む前に僕が期待する以上の役割を引き受けて、負担を大幅に軽減してくれた。


「わぁぁぁっっっっ!」


 いつも通りに、甲羅の盾に身を隠しながら突進!ホブゴブリンが振るった大剣の刃先が甲羅の盾の滑らかな表面を滑ったおかげで、僕の突進は押し戻されずに持ち堪える!そのままの勢いで、ホブゴブリンの腹にシールドアタックを叩き込んだ!


「富醒・ピークエクスペリエンス!!・・・やぁっっっ!」


 僕の真後ろを走っていた真田さんが、掌に魔力の電気を溜めて、僕が持った盾に身を隠しながらホブゴブリンの一部を触れた!


「ガルルルルッ!!」


 ホブゴブリンが感電で硬直をして悲鳴を上げる!


「今だっ!」


 盾の一押しでホブゴブリンの体勢を崩し、素早く剣を振るう!ダメージを受けて仰向けに倒れたので、すかさずプロテクターで覆われていない部分を突き刺した!

 ホブゴブリンは悲鳴を上げて動かなくなる!


「倒した・・・かな?」 


 少しは強くなれているってことかな?まだ、気を抜けない強敵なんだけど、前よりも楽に倒せた。


「戦い方を見せてもらった」


 振り返ると、5人のゴブリンは倒されていて、ブラークさんは僕達を眺めている。さすがはブラークさん、仕事が早い。いつ戦ったのかすら解らなかった。


「ミコト・・・オマエが足手まといだ」

「・・・へ?」


 聞き間違い・・・じゃないよね?「強くなったな」くらいの言葉をもらえると思ったのに、ちょっと意外というか、とてもショッキングな感想を喰らう。

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