15-5・真田さんが戻ってきた
結局は無駄な時間を過ごしただけで、欲しい情報は得られなかった(知りたくなかった情報は得たけど)。
真田さんを探す為に冒険者ギルドを出ようとしたら、厳つい冒険者2人が立って通せんぼをしている。スキンヘッドで片目に黒い眼帯をした男と、モヒカンの男だ。
「うっへっへ!ボウズ、随分と羽振りが良さそうじゃねーか?」
「女達を置いていけ!そうすりゃ通してやる!」
異世界あるある⑨
理由はよく解らないんだけど、冒険者ギルドでトラブルに巻き込まれる。相手は屈強な漢や知名度の高い冒険者なんだけど、楽勝をして噛ませ犬扱いにしなければならない。
「あ、貴方達はなんなんですか?」
言うまでもなく、僕にはこんなゴツい人達に圧勝できるスペックなんて無い。アンさん達を差し出せば許してもらえるみたいだし、アンさん達には思い入れや守る義務は全く無いんだけど、さすがに「はいそうですか」「ならどうぞ」ってワケにはいかない。
「ミコト様を舐めないで下さい!
この方は、古の勇者の58番目の落とし胤なんですよ!」
白いドレスの令嬢(名前忘れた)が啖呵を切る!
「あ・・・あの・・・雑な占い信じちゃってるの?
仮にその占いが正しかったとしても、全然、有難味が無いんだけど・・・」
「ひゃっひゃっっひゃ!
だったら、その『勇者様』とやらの血統の実力を見せてみろよ!」
「ミコト様は、あくび1つで山脈を破壊できるんですよ!」
緑のドレスの令嬢(名前忘れた)が余計なことを言う!
「うっへっへ!怖い怖い!
なら、ソイツが本気を出せば、こんな小さな宿場町なんて、一瞬で更地だな!」
「もちろんですっっ!見てらっしゃい!
今からミコト様が、貴方達ごと更地にしてさし上げますわ!」
アンさんが更に煽る!バカなの?宿場町が更地になったら、アンさん達も死ぬよ。それを解らないで喋ってるの?・・・まぁ、僕にそんな実力は無いんだけどさ。
「僕が時間を稼いでいる間に、アンさん達に逃げてもらうしかない・・・かな?」
多分だけど、根津くんはゴブリン達に襲撃された時、アンさん達の安全を最優先に考えて、逃げずに戦ったのだろう。根津くんの生き様には共感できないけど、死に様には共感できる。
「僕が活路を作るからアンさん達は逃げてっ!」
剣と盾を装備して屈強な男達に突進をする!
「そこに立ってると邪魔。退いてよ」
直後に、外側から顰めっ面の真田さんが入ってきて、男達の背中を軽く押して、掌から発した電流を流した!
「ぐぎゃぁぁぁっっっっっっっ!!!」×2
無防備な背後から電流の直撃を喰らったスキンヘッドとモヒカンは、口から泡を吹いて意識を失って倒れる!
「バカな女の子達なんて放置すればイイのに、なんで命を賭けちゃうかな~!?
全くもうっ!このお人好しっ!」
異世界あるある⑩(もしくは創作物全般あるある)
美少女キャラは優遇され、多少の無礼は許してもらえる。作中で明確な設定が無いまま「露骨なキャラ補正」という神スキルを発動させる。且つ、作者次第では「主人公補正<美少女補正」になることもある。「何故、そんなに優遇されるのか?」の理由は、「作者が贔屓しているから」としか説明できない。
「・・・真田さん?」
「今のと、尊人くんがあたしを見捨てずに選んでくれた分でチャラね」
真田さんが暴漢共を瞬殺したんだけど(死んでないけど)、そんなのは、もう、どうでも良い。真田さんに会えたのが嬉しい。
「あ・・・あの・・・なんでドレス着てんの?」
真田さん、いつもの男装じゃなくて、豪華とは言えないけどアンさん達と同等くらいのドレスを着て、ちょっとだけお化粧をしていた。原形が美少女なので、メッチャ綺麗に見える。
「あんまりにもバカにされたから、
晩餐会でギャフンって言わせてやろうと思って」
「・・・誰を?」
「誰でも良いでしょ
あ~あ・・・戦闘で借りを返せるなら、ドレスなんて借りて、
着慣れない格好なんてしなきゃ良かった!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
真田さんをバカにしたのは7人の令嬢だけど、彼女達が着飾った真田さんを見て「ギャフン」と言うとは思えない。「ギャフン」されちゃったのは、電流を喰らった暴漢達、そして真田さんに見取れてしまった僕です。
「どうして僕がここにいるって解ったの?」
「派手なドレスを着た7人のバカを連れ回しているんだから、
どこにいても目立ちまくりでしょ」
「まぁ・・・そうだね」
とりあえず、真田さんが7人の令嬢を嫌ってるのはよく解った。まぁ、僕もどっちかと言えば彼女達のことは苦手。仲が良くない人に褒められるのって信用できなくて嫌なんだけど、今回は状況に流されてしまいました。
「ちょっと強くて助けてくれる人なら、誰にでも付いていく軽薄な人達・・・
今後は、そんなのに浮かれないように気を付けなきゃだよ」
「・・・うん」
胸を押し当てられて浮ついていたのは事実なので、反論できません。根津くんを見捨てて、アッサリ僕に乗り換えたって知った時は驚きました。
「雛鳥の刷り込みじゃないんだからさ。
現実で、1回助けただけで懐いてベタベタしてきたり、
尊人くん以外の男を一切認めずにディスるような単純な子なんていないからね。
そ~ゆ~子は騙す気満々というか、現実だったら完璧に騙されているよ。
女の子との接点が少なくて慣れてないところが尊人くんらしいとは思うけどさ」
仰る通り、現実世界だったら、そんな単純な女の子はいないでしょうね。それに気付かずに寄ってこられて喜んでいたら、確実に騙されます。・・・てか、今回の件では、真田さんの信頼を失いかけたのが一番メンタルをやられました。
真田さん、気付かずに根津くんもディスっちゃってるけど、そこは黙っておきます。
「ハニーハントってゆーんだっけ?気を付けます」
「それを言うならハニートラップ。
ハニーハントは超有名なアトラクションの名前。
現実世界に戻ったら、一緒に遊びに行こうね」
「はい。・・・・・・・・・・・・・・・えっ?」
さっきまでムスッとしていた真田さんが笑っている。原型が美少女+ドレス+お化粧+笑顔=メッチャ可愛い。もしかして、許してもらえた?
「だいぶ探し回ってくれてたね」
「うん」
「今から帝都に向かう?もう、時間的にチョット厳しいかな?」
「うん。今日はここで休んで、明日の朝一で向かおっか」
「なら、宿を探さなきゃね」
「夜ご飯はずんだパンが良いな!」
「それはセンス無い。夜は普通に食べて、ずんだパンは朝でしょ」
僕達が宿を探す為に冒険者ギルドから出たら、7人の令嬢達が付いてきた。
「晩餐には来ていただけるのですよね?」
「お宿は我が屋敷を提供しますわ」
「日が暮れたらお部屋に伺いますね」
「おもてなしを考えてくれるのは嬉しいんだけど、
僕、そーゆーの必要ないので、ごめんなさいっ!」
キッパリと断ったら、7人の令嬢達は、もう纏わり付いてこなくなった。
「なによ、あの小娘っ!」
また真田さんがディスられてる。でも、さっきとは違って、僕の隣を歩いている真田さんはムスッとしていない。むしろ笑ってる。
7人の令嬢達が諦めてくれたのは僕がキッパリと拒否したから・・・だよね?それとも、おめかしをした真田さんを見て「勝てない」って思ったから・・・かな?
出席番号24番【根津稔治】・・・脱落
当初は、セイの町を出る次のストーリーで帝都に入り、クラスメイト達と合流をする予定だった。だけど、新しい仲間達と合流する前に、尊人と早璃の関係を一歩縮めるストーリーが欲しくなって、急きょ宿場町の設定を入れた。
智人は「異世界あるある」をすんなりと受け入れたけど、尊人に「異世界あるある」が発生したらどうなるんだろう?と考えた。結果は、タイミングがズレているせいで、「異世界あるある」は全て空回りした。




