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16-1・目指すは帝都

 朝一でずんだパンを買って宿場町を発つ。もちろん真田さんの格好は、いつも通りの男装。可愛いドレス姿は、真田さん本人が「ガラじゃない」と言って、昨日のうちに返却をしてしまった。 僕的には「ちょっと惜しい」と思う反面、いつも通りの真田さんを見られて安心をする。可愛い格好のままだったら、そのうち僕の脳内で何かの回路が誤作動をして、とんでもない間違いを起こしてしまいそうだ。


「何もトラブルが無ければ昼過ぎには到着できるよね」


 西の宿場町(ミドオチス)から帝都(テーレベール)までは約25㎞の道のり。昨日みたいな「あるある連鎖」が発生しなければ、日が傾くまでに充分に到着できるはずだ。


「あっ!剣が落ちてる」


 2㎞くらい歩いたら、街道から30mくらい離れた原っぱに、使いやすそうな細身の剣と、豪華に装飾された鞘が落ちていた。真田さんが小走りで寄って行って拾う。


「ありゃ?見た目は立派だけど刃はボロボロ。ナマクラかな?」

「見せて」


 真田さんに寄って行って剣を受け取る。僕の所持する先生の剣に比べるととても軽い。レイピアタイプの剣だ。刀身が傷だらけってことは、突くタイプの剣なのに、振り回して切り結びをしちゃったのかな?


「誰かが落としていったのかな?貰ってっちゃおうか?」

「いや・・・やめとこう」


 僕は先生の剣を持っている。ちょっと重いけど“斬る”と“突く”の両方ができるので、戦いには使いやすい。真田さんは大きなナイフを所持している。研いだらそれなりに斬れるようになったし、背の低い真田さんには刃の長い武器は向かない。


「もらっても、僕達が使い熟せる武器にはならないよ」

「高値で売れそうだよ」

「前にさ、真田さんの剣を持っていかれて売られちゃってムカ付いたよね。

 だから、僕達は、そーゆーのはやめよう」

「そっか・・・そうだね」


 真田さんが納得してくれたので、剣を鞘に収めてから地面に突き刺して墓標代わりに立てておく。真田さんに伝える気は無いけど、多分これは根津くんの剣だろう。

 見た目が綺麗な剣だから、誰かに持っていかれる可能性はある。だけど僕は、それをしたくない。

 真田さんには気付かれないように軽く黙祷をしてから歩き出す。


「帝都なら、絶対に誰かいるよね?」

「うん、絶対にいると思う。問題はどうやって見付けるかだね。

 帝都は西都市(セイ)の町より大きいみたいだからさ」

「尊人くんは誰がいると思う?」

「頭が良い吉見くんや菅原さんは真っ先に帝都に行きそう」


 菅原涼華さんはテストの成績がクラストップで生徒会長。典型的な「委員長タイプ」の女子。吉見陽輔くんは学校の勉強より模試や入試の勉強を重視しているので、学校のテストの成績はクラスで3番。時々、授業中に違う勉強をしていて先生に怒られてる。


「縫愛(ぬあ)と詩(うた)ちゃんと凪(なぎ)ちゃんに会いたい」


 沼田縫愛さん&上杉詩さん&長野凪さんの3人は、クラス内でいつも真田さんと一緒にいる女子達。目立つグループってわけじゃないけど、何事も卒無く熟すので周りからは一目置かれている。


「そうだね。沼田さん達がいてくれれば、真田さんは安心できるね」


 今頃になって気付いた。真田さんが僕に親身になって接してくれるのは、周りに他の人がいないから。この先の町に真田さんの友達がいれば、真田さんは友達と行動をするようになり、必然的に僕等のコンビは解消される。少し寂しいけど、当たり前のことだよね。


「あと、オシャレな前田さんも都会を目指しそう」


 前田愛央さんは、クラス内で一番オシャレな子。時々お化粧しているのが先生にバレて怒られてる。


「愛央(まお)ちゃんの場合、最初の『どこに行きたいか?』で都会を選びそうだね。

 ・・・てゆーか、尊人くんの予想で考えると、お勉強がそれなりにできて、

 オシャレもちゃんとできちゃう子は、帝都にいる可能性が高いってことかな?」


 僕の脳内に「勉強をできてオシャレ」に該当する子が浮かび上がる。でも、その女子の名前を言葉で表現するのが恥ずかしい。


「おうかっち(織田櫻花)・・・帝都にいると良いね」


 僕が脳内に思い浮かべた子と、真田さんが名前を出した子は同じ。僕の幼馴染みで、僕が初恋&片想いをしている子。


「おうかっち、すっぴんでも可愛いし、私服はオシャレだよね」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「どうやれば、おうかっちみたく超可愛くなれるんだろ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 見た目勝負なら、真田さんは同等。昨日の真田さんはメッチャ可愛かった。だけど、上手に真田さんに伝える度胸や、櫻花(おー)ちゃんへの評価を言葉にする勇気は無い。


「な~んで、そこで黙るかなぁ~~~」


 黙ってしまったのは、帝都に櫻花(おー)ちゃんが居た場合の「会えて嬉しい安心感」と、沼田さん達が居た場合の「真田さんが僕から離れる喪失感」のどっちが強いのか解らなくなったから。

 僕、頭がおかしくなっちゃったのかな?櫻花(おー)ちゃんに会いたいのに、なんで真田さんに離れてほしくない?僕ってそーゆー軽薄なタイプだったの?


「いてっ!」


 真田さんの「どうやれば可愛くなれるんだろう?」をスルーしたからかな?ちょっと膨れっ面になった真田さんの軽いローキックが、僕の裏腿に入る。


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