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Ghost helpers!  作者: 北風
第二章
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27話 柊 佑人 2

「え? 部室棟の幽霊ですか? 私見たことありますよ」

「私は声を聞きました」

「うちらと同じくらいの年の子だったよね」

「そうそう、胸くらいまでの黒髪で」

「冬服着てたよねー」


柊が言った『お願いしたいこと』とは、幽霊を目撃した部室棟を使用する生徒への聞き込みだった。

やはり女子中学生というものは噂話が好きな性分のようで、目撃者証言を聞いて歩いていると、多くの女子生徒が名乗りを上げてくれた。


「それにしても、随分と目撃者が居たな。空手部だけでも十人近く証言が集まったぞ」

「そうなんですよ。最早あたしみたいに見てない人の方が少数派になってるんです」

「……羨ましい……」


中等部の屋上階で、俺は証言を纏めたメモ帳を捲った。

傍らには雪と布倉。

今は一通り聞き込みを終え、三人で収穫を確認していた。


メモを見ていると、重複している証言も多いが、全ての証言にほとんど矛盾が無いことが分かる。

目撃者の数といい、やはりただの怪談話の類ではなさそうだ。


幽霊は部室棟内のみに現れる。

部室棟利用者の多くが目撃している。

中学三年生の少女。

冬服のセーラー姿。

身長は150cm強。

黒髪セミロング。

受験に疲れて首を吊り、自ら命を絶った。

名前は──朝田(あさだ)(みのり)


分かったのはこのくらいだ。

まさかフルネームまで明らかになるとは思っていなかった。

話によると本人が名乗ったらしい。

存外フレンドリーな幽霊のようだ。


「ひとまずこれだけ分かれば充分だろ。柊に報告に行くか」

「えー? あいつに教えちゃうんですかー?」

「当たり前だろ。元々そういう話だったんだから」

「……あたしはそんなつもりで言ったんじゃ……」


布倉は不満げな様子だが、こいつの意見をいちいち聞き入れていては話が進まない。

俺はメモ帳を閉じると、部室棟に向かうべく階段を下った。


     ※


「ありがとうございました」


柊は機械的に礼を言うと、にこりともせずにメモ帳を受け取った。

彼は今日も部室棟の一室でビデオカメラ片手に椅子に腰掛けていた。


「そのカメラ昨日も見てたよな。今日も仕掛けてたのか?」

「ええ。帰る時に録画状態にして部室棟に仕掛けておいて、次の日の朝回収するんです。そして放課後にチェックしてるんですよ。それを一週間前から毎日」

「毎日!? バッテリーの消費量バカになんねえだろ……」

「まあそれはそうですけど、授業中に部室棟で充電してるんで問題ないですよ」


問題しか無いわ。

教師に見付かったら普通に怒られる事案だぞ、それ。

一週間前からと言っていたか。

ほとんど使用していない部室棟の電力使用料がおかしい事に誰か気付くまで、あとどれくらいの時間が残されているだろう。


「柊……悪いこと言わねえからせめて三日に一度ペースにしろ」

「言われなくてもそろそろやめようかと思っていたところです……こんな無意味なこと、いつまでも続けてても仕方ないですし」


柊は独り言のように呟くと、カメラの電源を切って手元のメモ帳を捲った。


「無意味なこと……? どういう意味だよ」

「……」

「幽霊やら心霊現象やらを撮影するためのカメラじゃないのか?」

「……」


今度は無視か。

無言でメモに目を通していく柊は、まるでこちらの問いかけに反応しようとしない。


「先輩、いい加減こいつ本気で叱らないと付け上がる一方ですよ」


布倉が真顔で淡々と告げた。

怒りが一周して無に帰したのだろうか。

怖い。


「いや……俺年下を本気で叱るのとか苦手だし……」

「何甘っちょろいこと言ってんですか。そんなんだからあたしにもあいつにもなめられるんですよ」

「お前俺のことなめてたのか」


薄々分かってはいたがこんなに悪びれず正面から言われるとは思っていなかった。


「そ……宗哉は優しい、から……」


雪のフォローが心に沁みる。

この場で俺の味方はお前だけだ。


「……あの、すいません」


柊が唐突に口を開いた。

どうもペースが掴みにくい奴だ。

柊の方に視線を向けると、彼は食い入るようにメモ帳を見つめていた。


「これ、幽霊の名前……? ですか?」


聞かれてメモ帳を覗き込めば、そのページには『朝田稔』という名前が走り書きしてあった。


「ああ。それに関しちゃ結構多くの証言が聞けたからな。間違いないと思うぞ」

「…………」

「柊?」

「あ、いえ……」


黙り込んだ柊に声をかけると、彼は慌てたように首を振った。


「な、何でもないです」

「? そうか……」


何でもないようには見えなかったが。

柊は元々変な奴ではあるが、どうも今日は輪をかけて様子がおかしい。

そんな意を込めて雪と布倉に視線を送ると、二人も不思議そうに俺を見返した。

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