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海賊と私  作者: アルタ
1/15

プロローグ

 ――それはまだ海が果てしないものであった頃のお話


 大航海時代……それは、世界にまだ見ぬ大陸を求めて、一斉に人々が海へ乗り出した時代だった。緑豊かな地、豊富な鉄が産出される地、美しい人々が住む地、冒険の先には様々な土地とそこに住む人々との出会いがある。ある者はロマンを求め、ある者は国との約束のため、ある者は領土拡大のため、大海原を進んだ。


 ずっと南にある小さな島国にたどり着いたのは、その中でも財宝を目当てとした者達だ。

 黄金が豊富に産出されるその島では、黄金の宮殿や神殿は勿論のこと、一般の住民まで精緻な装飾が成された金の装飾品を身に付けて、平和に穏やかに暮らしていた。

 冒険者達は歓喜し、島の「金」と「財宝」と「女」を銃と剣によって奪い、略奪者となる。

 憂いた島の王は、自分の命と引き換えに残った人々の安全と女性たちの解放を願った。しかし、聞き入れられることはなく、首をはねられて略奪者達の戦利品の一つとなった。

 彼らが去った後、まだ体温の残る血だまりの上に残された島の人々は呆然としていた。どうしてこのようなことになったのかと海に問うても、地面を素手で何度も叩きながら泣いても何も変わらず、そしてその悪夢も覚めることはなかったのである。



 残された王子キースと、彼の幼馴染であり近衛隊員でもあるヨシ、そして筆頭大臣の息子シムは、それらを取り戻すため悪魔と契約した。

 手に入れたのは、真っ黒の幽霊船。

 彼ら3人と島の勇士を乗せて船は長い長い旅へ出る。

 盗まれた人々を取り戻すため、金や財宝を取り戻すため、あるときは商船を襲い、あるときは美術館に押し入った。


 不思議なことに、彼らは怪我をしてもすぐに治った。勿論病気にもかからない。それどころか……歳をとることすらなかったのだ。

 これは悪魔の呪いだと気づいたのは、しばらくしてからであったが、キース王子たちはそれを幸いと、黒い船を駆っては世界を飛び回った。

 いつか……連れ去られた自分たちの同朋に会えると信じて。



 ――五年後。


 彼らは島の女性を収容した船がひどい嵐に会ったこと、そして、嵐の原因は”船に女を乗せたからだ”という理由で全員海に放り出されたことを知る。取り戻せないことに絶望する暇もなく、今度はとある博物館で半ばミイラとなった王の首に対面する。ガラスのケースに入った父親の姿に、キース王子は泣きながらケースを銃で打ち破り、海を見渡せる丘に埋めた。

 もう涙も枯れてしまうのではないかというくらい泣いた後も、彼らは復讐の旅を続けた。それしか道はなかった。なぜなら、島はとうの昔に地震の影響で沈んでなくなってしまっていたからである。


 いつしか彼らの名は、最高金額の賞金がかけられた「お尋ね者」として世界中に知れ渡っていた。

 人は噂する。伝説の幽霊海賊 キャプテンキースがくると。




 ――悪魔に呪われたキース王子達を哀れに思った神様は、鳩の姿を借りて言いました。


「あなたたちの行いは上から見ていました。もう充分でしょう。悪魔の呪いを解くことは出来ませんが、あなたたちの止まった時を動かしてあげることは出来ますよ」


 けれど、キース王子は言い返す。

「余計な世話だ。大体、神様なんぞ国が襲われたときに何もしてくれなかったではないか。神は人に『人を試すことなかれ』と言うが、神は人を試す。悪魔は平等に誰の魂だとて取引した。ならば俺は、悪魔と取引したままで構わない」

 それは船の皆と同じ思いだっただろう。


「そうですか。ならばせめてあなたたちが『本当に盗まれた全てを取り戻せたら』、時を動かしてあげましょう」

 鳩は1枚の羽をひらりと落として去っていきました。




 ――百年後


 盗まれた財宝は全て取り戻した。取り返せるものは全て。しかし、彼らの姿は島を出た時のまま……時は動かない。

「しょせん口ばっかりだったんですかね?」

 気の遠くなるような年月を生きた。もう、あのときの略奪者もみな寿命で死んでしまっただろうと、落ち込むシムの肩をぽんぽんとたたきながら、すっかりキャプテンハットがなじんだキース王子は笑う。

「海賊として生きていこう」

 死ぬことは許されていない。ならば生きるしかないのだ。


 そうしてまた100年の時を刻むのかと思われたとき、運命の悪戯か、彼らは一人の少女に会うのである。

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