『屋上』
高校生、特に何の不自由もなく暮らしていた『僕』
ある日、自分が死にたがっていることに気づいて・・・
ここはこの街で一番高いビルの屋上。
もちろん観光なんかしにここに来た訳じゃない。
なぜなら僕はフェンスの外にいるからだ。
僕は死ぬためにここへ来た。
別に恋人に振られた、とか、会社を首になった、とか、そういう訳じゃない。
ていうか僕はまだ高校生だし。
なんだか、全てがどうでもよくなっている。
大学受験とか、就職とか。
就きたい仕事だってあるし、友達と残り少ない青春を謳歌したりしたいけど、それよりも「死にたい」という欲望の方が勝っている。
要は優先順位の問題なのだ。
もう生きていけないと思う程落ち込むような出来事もない。
昨日、やっと自覚した。自分が死にたがっていることを。
今までずっと感じていた気だるさの原因はこいつだったのだ。
謎が解けて少しすっきりした。
地面に目をやると、群れている人々が見える。
立ち入り禁止のここに人がいて、フェンスの外に立って下を見ている。
何をしようとしているのかは容易に想像できるだろう。
右往左往して、「止めるんだ」、とか叫んでいる。
耳を貸す気はさらさら無かったのだけれど、僕はそのまま同じ場所に立っていた。
このまま飛び降りれば怪我人が出るかもしれないし、下手なことをすれば死に損なう。
それは美しくない。
死に損なって後遺症で一生寝たきり、みたいな痴態を晒すのは絶対に嫌だ。
それに、他にも理由はあった。
風が、太陽の光がとても心地好かった。
死ぬ間際って言うのは、こんなに安らかなのか。
・・・自殺なのに、安らかでいいのか?
そんな下らないことを考えながら、あたりを見回す。
当たり前のことだが、空ばかりが見える。
少しだけ雲の浮かんだ、青く澄んでいる空。
突発的な自殺なのに、とても綺麗な空だった。
意外と僕は、運がいい方なのかもしれない。
っていうか、いい加減下の人いなくなってくれないかな・・・
そう思ったその時、後ろで扉が開く音がした。




