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ドライとドラゴン〜対人恐怖症でも対竜は大丈夫な引っ越しばかりの異世界転移生活〜  作者: 極限改造されたエネルギーガトマシ@にっこりドラゴンとハシビロコウが好きな語彙力鸚鵡以下の人っぽいただのゲーマー
闇の翼編
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◯・魔術師同士の死闘

久しぶりの投稿です。いやはや中々モチベーションが上がらなくて

プロの方は本当に凄いですね

 目標の城らしき廃墟が見えてきた。地底世界に近い場所であるためか普段と異なる雰囲気を醸し出している。


 俺は廃墟の入り口に辿り着いた。


「来たぞ!」


 俺は廃墟に響き渡るほどの大声を出した。人見知りには辛い。


 俺渾身の叫びに応えたのは空中に浮かぶ魔法陣だった。

高音と共に魔力が集結しているのを感じた。まずい、罠だ。俺は慌ててその場から飛び退く。

次の瞬間、背後から気配を感じ振り返ると魔法弾が飛んできた。


 それらが魔法陣に着弾すると同時に爆発が巻き起こる。


「くっ」


 俺は爆風に煽られた。さらに四方に新たな魔法陣が出現する。

俺はそれをなんとか避けて建物の陰へと飛び込んだ。


「これでいいだろ」


 誰かの声が聞こえた。

声の主は魔法陣を手早く破壊すると廃墟の中へと進んで行った。魔法陣に残された声質とは異なっている。


 どうやら訪問者は他にもいるようだ。俺は身を隠しながら相手の後を追った。



 不気味な人影は大広間で立ち止まった。


「どなたですか?」


 俺は背後から声をかけた。すると、相手はゆっくりとこちらに向き直った。


「久し振りだな」


 男の正体は赤い目をした邪王、ガディウデュールだった。


「ったく、魔法陣如きで死にかけるとはな。俺様に感謝しろよ」

「ありがとうございます」

「礼はいい。俺様の城をトグモラットから取り戻すのを手伝え」


 トグモラット……。聞き覚えのある声だとは思っていたがラリッサ達を誘拐したのは神殺しだったのか。


「ガディウデュールさん、こちらの願いも聞いて貰えますか?」

俺はダメ元で聞いてみた。


「何だ言ってみろ蛇使い」

「ラリッサさんとアルデンさんを奴に誘拐されたのです。助けて貰えませんか?」

「俺様が城を取り戻したら、お前らは侵入者だ。ネズミは駆除しなければならない。だが、それはコーヒーを飲んでからにするとしよう」

「わかりました。ありがとう」


 邪王……案外いい奴かもしれない。


「よし、先頭はお前だ。奴は俺様の王座に座って威張りくさっているはずだ。魔法陣の照準を扉に合わせてな」

(俺は弾除けかよ)


 トグモラットは場所を指定した。つまり念入りに罠を準備しているはずだ。

そして、それを俺が喰らうって事か。


「ちょっと待って下さい」


 俺は魔力供給石の力を開放すると、指で地面と天井に魔法陣を刻んだ。

気分はさながらレーザービームだ


「おい、俺の美しい城に何をしている?」


 ガディウデュールは真顔で俺を見た。


「魔法攻撃を遮断する魔法陣を描いているのですよ。扉を開けて魔法が飛んできても、魔法陣に入れば安全です。おそらく」


 俺は描いた魔法陣に魔力を流し込んだ。すると水色の光を放ち始める。

術者が中に入ると魔攻撃を受け付けなくなるが、こちらからも攻撃出来なくなってしまう。敵からの攻撃を無効化する緊急時の避難所として利用すべきだろう。


「よし、行きますか」


 重厚な扉を開けると視線は王座へ。

トグモラットが足を組んでふんぞり返っている。


「やっと来たか」

「トグモラットさんですね」

「そうだ。オマケも連れてきたようだな」

「ラリッサさんとアルデンさんは何処ですか」


 俺が尋ねるとトグモラットは小馬鹿にしたように鼻で笑った。


「マヌケだな。上を見ろ」

トグモラットは指を上に向けた。


 俺は見上げる。天井に吊るされたシャンデリアの上にラリッサとアルデンがいた。気を失っているのか横になったまま動かない。


「ラリッサさん! アルデンさん!」


 俺は大声で叫んだが反応は無かった。


「さて、簡単な話だ。お前が勝てば、あいつらを拘束している魔法陣は消える。お前が負けたらあいつらの命は無くなる」

トグモラットは薄ら笑いを浮かべながら言った。


「単純明快で助かります」

「邪王がいるのは想定外だが、お前はマルスヌスとの戦いで相当消耗していると見える。ハンデとして受け入れよう」


 トグモラットがゆっくりと王座から立ち上がると、魔法陣を起動させた。


 魔法陣からは黒い霧が吹き出し、やがてその中心から巨大な影が現れた。

ナイトシェイド・ドレッドリーパーだ。漆黒の体を持ち、背中からは透明な翼が生えている。

鋭い爪の生えた両腕は対象に恐怖を与え、口からは鋭い牙が見え隠れしていた。


「ゲームスタートだ。いきなり死んでくれるなよ」

「地底神の下僕を犬にしているとは。センスがないな」


 ガディウデュールが嘲笑する。

巨大なナイトシェイドは邪王を無視して俺に突進してきた。

何故だ? ヘイト買っているのは明らかに邪王だろ。


 すぐさま氷の壁を生成するとナイトシェイドの爪が氷に突き刺さる。

俺はすかさず剣を抜きナイトシェイドに斬りつけた。

だが表皮に阻まれ弾かれてしまう。剣のメンテナンスを怠ったか。


 見かねたガディウデュールが魔法陣で追撃する。直撃したナイトシェイドはよろめいた。


「魔の力よ、焼き払え、フレイム!」


 俺の放った炎はナイトシェイドに命中すると爆炎を巻き起こした。

撃破だ。だが休んで入られない。魔法陣を破壊しなければ健康な状態の魔物が次々と補充されてしまう。


 俺は魔力を節約するために最低限の威力で炎を放ち、次々と魔法陣を破壊していく。

背後から邪王の気配が消えた。俺一人でトグモラットを倒せというのか。


「魔物と遊んでいるところを見たかったのだがもう破壊してしまったのか。面白くない、思い通りに行かないのはつまらない」


 トグモラットが新たな魔法陣を空中に展開する。


「次は俺様が相手をしてやる」


 魔法陣からは魔物ではなく魔法弾が放たれた。

俺は間一髪で回避すると、炎を放ち魔法陣を破壊する。


「中級魔弾を弾かず避けるって事はせいぜい魔術4段程度か? 8段相当である俺の相手ではないな」


 トグモラットは余裕の笑みを浮かべながら、次々と魔法陣から弾を放ってくる。

俺は回避したり相殺しながら立ち回るが、このままではジリ貧だ。俺の魔力が尽きる前にトグモラットを倒す手段を考えなければ。


 魔法陣を破壊しつつ、攻撃が手薄になる一瞬を突こうと剣にいつでも手が伸ばせるよう意識しているが、相手もそれがわかっているのか前進しようとすると魔法弾を打ち込むように乱射して来る。


 弾は地面に着弾すると小さなクレーターを作り出した。かなり威力が高いようだ。

せめて、魔力供給石の盾が使えれば奴の攻撃を一時的に吸収できるのだが既に右腕は悲鳴を上げている。


「そろそろ限界のようだな」

「まだまだ!」


 相手が魔法陣を張り直そうとする隙を俺は見逃さなかった。


「我に風の加護を!」


 俺は風を纏うと剣を抜きトグモラットに向かって走り出した。

トグモラットは魔弾を放ってくるが俺はそれを斬り払うと一気に距離を詰めた。


「これで決める!」


 俺は剣を振るうと同時に叫んだ。


 トグモラットは両手を突き出すと魔力を込めるが、今対応したのでは遅い、そう思っていたのだが甘かったのは俺の方だった。


 剣はトグモラットを斬りつける直前に突如として現れた魔法陣に弾き返された。


 しまったと思った時にはもう手遅れだった。

俺は魔法陣から放たれた雷撃の直撃を喰らうと後方に弾き飛ばされた。


 トグモラットは手慣れた様子で周囲の魔法陣を俺の左右に展開し直すと、静かに着々した。


「自分の力を過信したな。戦いの鉄則は相手を騙すことだ。驕りや油断は己を破滅へと導くぞ」


 俺は意識が朦朧とする中立ち上がった。

まだやれることはあるはずだ。


「さあ、続けようか」


 トグモラットは前面の強力な魔法陣を起動させたまま、一歩ずつ近付いて来る。


「もう勝ったつもりですか。侮って貰っては困ります」


 俺はふらつきながらもゆっくりと来た道を戻る。

トグモラットはそんな俺を見て鼻で笑った。


「勝負は既についているだろう? さあ、その剣で突撃して来いよ。ゲームは終わりだ」

「そうさせて貰いますよ」


 俺はトグモラットの挑発に乗らず、後ずさりを続ける。


「邪王なら助けには来ないぞ。それに……」


 トグモラットは詠唱すると、俺の背後で爆発音がした。

振り返らずに地面に手を置くが、俺が描いた水色の魔法陣の魔力を感じなくなっていた。


「魔術を受け付けなくなる魔法陣か。たかが人間とはいえマルスヌスを消したお前だ。奥の手を用意しているとは思ったが……相手が悪かったな。んな幼稚な罠に気付かないとでも思ったのか?」


 トグモラットは俺を嘲り笑いながら魔法陣に魔力を込めていく。


「そのまま入口まで這え。後片付けが楽だからな」

「そうはさせませんよ」

「何?!」


 罠にかかった。トグモラットが展開していた魔法陣が消えていく。


「貴様、何をした?」

「マヌケだな。上を見ろ」


 天井には俺が描いた予備の魔法陣が起動していた。


「油断していたのはあなたでしたね」


 俺はトグモラットに向かって突撃する。


「ま、待て!」


 苦し紛れに両手を突き出すが魔法陣は出ない。

俺はそのまま剣を振り下ろす。


 奴は何も言わずその場に崩れ落ちた。

俺は剣を納めると静かに息をして歩み出す。


 邪王の城は取り返した。

奴が騒ぎ出す前にラリッサとアルデンを助け、村へ戻ろう。


 死闘を乗り越えたからか、不思議と晴れやかな気分である。


 まるで光が指しているかのように、暖かい。


 いや、これは……。

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