転移装置?あれって物語の中のものでしょう?
「あれ?仁たん、もしかしてまだ説明してない?」
「ですから仁たんではなく仁丹だと・・・。はぁ。もういいです。おっしゃる通りまだ説明してません。誰かさんが早く帰りたがっていたのであちらで説明することにしましたから。」
「うっ・・・。それって私のことですよね?」
「さぁ?誰のことでしょうね?」
言い合いをしてるというよりも仁丹さんがシェリルさんをからかってじゃれてる様なので、私は機械の方に意識を向けた。
目の前のドーム型の機械は中が見えるように全面硝子で出来ていて、土台と天井部分には機械がつけられている。
入口部分から少し中を覗いてみると、床には丸や星や紋様が所狭しと書かれていた。
これって・・・小説とか漫画で見たことある・・・確か、魔法陣とかいう名前だったはず。
でもどうしてここにそんなものが?
落書き?それともオシャレデザイン?
そういえばさっきシェリルさんはこれを見て「やっと帰れる」って言ってたけど、もしかしてこれでどっかから来たってこと?
魔法陣の描かれてる機械・・・転移装置?
ははっ。いや、そんなまさかぁ。
理解できないことが立て続けに起こって、もう笑いしか出てこない。
「お、気になってますー?じゃあ『百聞は一見にしかず』ってことで、ほらほら乗った乗った!」
「え?いや、えーっと」
いやいや。
シェリルさんはこれを使って来たんだろうけど、私は今日、初めて見るんだから「はい喜んでー!」って乗れないよ?
ちょっと、ジリジリにじり寄ってこないで!
いやー!こんな得体の知れない物にすんなり乗れるわけないじゃん!!
それなりに抵抗してみたが見た目に反してシェリルさんはかなりの力持ちだった。
私を軽々と持ち上げると一緒に機械の中に入った。
少し遅れて仁丹さんも入ってくると扉は自動的に閉まり始め私もようやく下ろしてもらうことができた。
「シェリルさん。強引すぎますよ。」
「こうでもしないと乗らなそうだったから、つい。」
「はぁ〜。市村さん、申し訳ありませんが目を瞑ってて下さい。」
「・・・はい。」
ここまで来たらもう腹をくくるしかない。
祈るように両手を胸の前で合わせて目を瞑った。
目を瞑ってすぐに暖かい空気に包まれる感覚がしてフッと身体が軽くなった。
あ、ヤバい・・・意識が・・・。
浮遊感と共に私の意識は遠くなった。