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海賊姉妹  作者: 柳田健二
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第9話「復活の花」

「復活の花?」


「あぁ、死者を蘇らせることが出来るという不思議な花だ

この世のどこかに自生してるらしい」


グレイブの話をナギは目を丸くしながら聞いていた


「俺はその花を求めて旅をしていたんだ」


「…そんな話知りませんでした」


「お前には関係のない話だと思ってな」


腕を組みながらそう語るグレイブを前に

ナギは静かにメイの方を見た


「言ってもおとぎ話だ

本当にあるかどうかはまだわからん

もしかしたら眉唾かもしれん」


「どうする?賭けになるが」


グレイブの問いにナギはしばらく黙り込み

そっと口を開いた


「グレイブ、私行くよ…復活の花を探しに」


「そうか、なら早速船に戻るぞ

少しとは言えここには瘴気が充満している

長居するとマズそうだ」


「(メイ…もう少しだけ待ってて

必ず助けに戻るから)」


ナギはメイを残し、二人は遺跡を(あと)に船へと戻ったーーー


グレイブは地図を広げると、ある島に指を差した


「俺たちが今いる場所がここ、アルベルト大陸周辺海域」


「俺たちが今まで周ってきたのはここ、オーストビウ周辺海域」


「お前と出会うまでに俺が周ってきたのがここ、ディートリヒ大陸周辺海域だ」


グレイブはなぞるように各大陸に指を合わせ

今まで周ってきた地域のおさらいをした


「この広大な世界から一つの花を探すのは困難だ、まずは近場から探していくぞ

まずはこの島からだ」


現在地に指を戻し、そこから少し上に位置する小島を指差すグレイブ


その後、船は大きな波を渡り目的地へと目指した


数日経ち、島へと到着後、二人は早速陸地に降り、探索を開始した


「花は太陽のもとに咲くらしい

その光は他の植物を寄せ付けず、周りには小さな花々が円を(えが)くように咲いてるのが特徴だ」


「見た目は青白く、フワフワした丸い花びらで

大きさは腕に抱くほどらしい」


森の中を歩きながら淡々と花についての説明をするグレイブ


「どうしてグレイブは花を探しているの?」


ナギが何気なく聞くとグレイブは立ち止まり、服からあるものを取り出しナギへと手渡した


「これは…」

「ルーナ、俺の娘だ」


それは一人の幼い少女を写した写真だった


「随分と前にマモノに食い荒らされてな

俺はそいつを蘇らせるために島々を周っていたんだ」


「……」


グレイブは写真を取り上げると

服の中へとそっとしまった


「結局見つからんかったがな」


それを聞いてナギは複雑な顔をした


森を歩いてしばらく

「まるでジャングルだな」と

枯れた草などを見て呟くグレイブ


島は瘴気の影響で荒れ果てており

ところどころ腐った木々などが目立った


「ここもかつては綺麗な場所だったんだろうが

形すらないな」


やがて森を抜けると奥の方で大きな建造物があるのが見えた


それは縦に伸びたピラミッドのような形で

四方に階段があり頂上には四角い神殿があった


ナギは神殿を見て立ち止まり

入り口を見つめて険しい表情をした


「気になるか?花は太陽のもとに咲くからな、どのみちマモノは倒す事になるだろう」


グレイブの言葉にナギは頷き、二人は神殿へと入っていった


神殿の内部には何段にも積み上げられた灰色の石壁に解読できない古代文字や

太陽や月などを崇める人々を描いた壁画などがあった


「まるで宗教だな

この島の人間はどうやら熱心な信教派だったらしい」


グレイブがそうつぶやくと

二人は祭壇のようなものがある広間へと辿り着いた


しばらく歩くと背後から黒い蛇のようなマモノが二人の方へと忍び寄った


「フンッ!!」


グレイブは剣を振り下ろし

蛇のマモノを撃退した


「無粋な奴らだ」


グレイブがそうつぶやくと

奥の方からも複数体のマモノが近づいてきた


それは眼球のような形をしており

神経のような触手をうねうねと動かしながら

ふわふわと浮いていた


「いいな、ナギ!」

「はい!」


ナギは構え、グレイブと協力しながらマモノ達を倒し、退けていった


その後も尻尾に電気を帯びたトンボのようなマモノや地中から這い出てタイルを投げつけてくるマモノなど多様なマモノを退けながら奥へと進み

やがて広々とした壁画のある部屋へと到着した


「この奥へと進めば最深部のようだ」


グレイブは直感でそう判断し、ナギは息を呑んで進んだ


少し進むと違和感を覚え

「気配がする…」と二人は立ち止まり

辺りを慎重に見渡した


すると壁の方から視線を感じ、

壁画に(えが)かれた人型の狐、その(ひとみ)が瞬きすると

ボコッと壁から飛び出し、二人の方へと迫った


壁画達は細い槍を構え、ナギ達へ激しく槍を突き出した


「フンッ!!」


グレイブは咄嗟に力の魔石を握りしめ

その顔に剣をぶつけ、素早く壁画を処理した


その後も数体の壁画達を相手に戦い何とか倒し

二人は奥へと進んだ


最深部に辿り着くと、奥の方で何やら蠢く物体があるのが見えた


「フシュルルルゥゥ〜」


「まて、こいつは…」


それは鋭い牙を向けた巨大な大蛇(だいじゃ)だった


大蛇は赤い目を光らせると

唸り声を上げながら突進し、鋭い牙で二人に襲いかかった


二人がその場から離れると

マモノは体をひねり、二人を尻尾で薙ぎ払おうとした


ナギはその場でかがみ

グレイブは剣で弾いて尻尾の軌道を変えた


ナギはその隙を狙って

マモノの方へと走り、その首元に短剣を当てようとした


しかしマモノは頭を下げて首元を隠すように

ナギの方へ牙を向けた


その時、グレイブが

頭上から大剣を勢いよく振り下ろしにかかった


グレイブの存在に気づいたマモノは

力強いアゴで大剣を受け止めた


ナギは無防備になった首元に短剣を突き刺した


マモノは悲鳴をあげ、思わずアゴを(ゆる)めた


グレイブは(ゆる)んだアゴから大剣を抜き取り、トドメとばかりに

その首元へ勢いよく大剣を振るった


マモノの首は胴から切り離されて

地面に落ち、ゴロゴロと転がった


「終わった…」


ナギが剣をしまうとグレイブが叫んだ


「ナギッッ!!」

「?」


困惑するナギの後ろから

大きな牙を向けたマモノの頭部が飛び上がってきていた


グレイブはすぐにマモノの前に立ち

大剣を力いっぱい振り下ろした


マモノの頭部は真っ二つになり

そのまま黒ずんで消滅し、

残った体も砂のように消えて灰になった


「…終わったな」


グレイブが剣を仕舞うと

周囲にある燭台や壁などの影がモゾモゾと移動し始め、まるで意思を持ったかのように一つに集まった


「!?」


(カタマリ)はやがて大きな影となっていき

地面から離れたあと、アバラが浮き出た細長の胴体に6本の腕、頭部には無数の蛇の頭がついた異形のマモノが形作られた


「こいつは……!?」


グレイブ達は急いで武器を構え

再び戦闘体制に入った


マモノはしばらく見下ろすと

二人めがけて手のひらを叩き落としてきた


二人は後ろへ下がり

グレイブはその叩きつけられた手から腕を坂道のように走り、マモノの頭部を目指した


マモノはもう一方の手で、グレイブのいる場所を叩いた


グレイブは指の隙間をくぐり抜けて

その腕を登った


ナギも叩きつけられた手から腕を登っていき、グレイブの方へと走った


頭部まで辿り着いたグレイブは

その無数にある蛇の頭に大剣を叩き込んだ


しかし蛇の頭はびくともせず、その目を怪しく光らせた


遅れてきたナギが頭部へと登り切ると

グレイブはナギに向かって叫んだ


「ナギ、目を瞑れ!」


しかし咄嗟のことでナギは反応できず

その視界は眩い光に包まれた


「うぐっ…!?」


ナギはマモノに掴まれ、身動きが取れなくなり、「グググ…」と力いっぱい絞められ意識が遠のいた


グレイブはかろうじて見える視界でマモノの頭部を何度も切りつけた


するとマモノは怯み、ナギもマモノの手から解放された


反動で地上に降りたグレイブは

マモノが両手を地面につけて悶えたのを見て

チャンスとばかりにその手を踏み台にして

下がった頭部へ切りつけにかかった


左右から手のひらが(せま)

挟まれそうになったグレイブは機転を効かせて力の魔石を握りしめ

体をひねり、剣を真横へ振り薬指と中指の間から親指までを両断した


その後、すぐに断面を蹴って

大剣を縦に掲げると頭部目掛けて勢いよく振り下ろし、そのまま地面まで降下して着地し

マモノを真っ二つにした


マモノは大きな悲鳴を上げながら消滅していったーーー


マモノを倒すと空が晴れ、二人は神殿を後にし、村で聞き込みを開始した


「死者を蘇らせる事のできる不思議な花ですか…

風の噂ではそのような伝承も稀に耳にしますが

我々の宗派では死人は天界へ(いざな)われる事こそが自然の成り行きであるという教えであり、死者蘇生には懐疑的でして…」


「そうか、すまなかった」


一通り聞き込みを終えたあと

グレイブは「花はないようだ」とつぶやき

ナギも静かに頷いたあと、二人は船へと戻り

次なる目的地へと向かったーーー



復活の花(完)

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