8話 武器を探そう《和也側》
「魔法の基本はできたから、剣をやってみようか。」
少し疲れた顔をしているセリルが言った。
そうだな。午前中はずっと魔法をやってたからな。
「で、魔力をたくさん使ったのもあるし、そろそろお昼ご飯にしようか。」
まあ、確かに魔力を使ったせいか、少し体がだるいな。セリルの感じだと、外に食べに行くようだな。ところで、異世界料理って、何があるんだ?
そんな疑問を持ちながら、町中に出ていった。ヘルポテの町は活気があって、下町って感じだな。
「はい、カズヤ。」
いつの間にか、セリルが屋台から食べ物を買っていた。揚げ物のようで、香ばしい香りがする。
「なにこれ?」
俺がそういうと、セリルが答えた。
「ヘルポテ町の名物、揚げイモだよ。ちょっと油っぽいから、紙で挟みながら食べてね。」
普通に美味しい。が、なんだよ『揚げイモ』って、『フライドポテト』って言えよ。あとなんで、イモを丸ごと揚げるんだ。切ってから、揚げればいいのに。
色々と思うところがあったので、ちょっと売っている人に言うことにした。
「セリル、これどこで買った?」
「あそこだけど……どうかしたの?もしかして嫌だった?」
「いや、ちょっと言いたいことがあってね。」
俺はセリルが指差した屋台の方へと向かっていく。売っているのは髭面の気の良さそうな中年の男であった。
「すみません、ちょっといいですか?」
「おう、どうしたんだい?ボウズ。」
「この『揚げイモ』は細く切ってから揚げた方が美味しいと思います。」
「細く切ってから、揚げる、か。考えたことなかったな。ちょいと待っててな、ボウズ。」
そう言うと、男は芋を細く切って揚げていく。そして、完成したのを口に入れる。
「ほー。細いから、よく熱が通ってカリカリになってて美味しいな。ありがとよ。」
男は俺に完成したフライドポテトを差し出した。
「新しい発想を教えてくれたお礼だ。」
そのあと、俺たちはフライドポテトを食べながら、店を見ていくことにした。
「カズヤは、剣を持ってないんだよね?だったら、武器屋に行かない?」
武器屋か。日本だったら、そんな店やってたら捕まりそうなもんだけどな。
「行く。」
「了解。あそこを曲がった辺りから、武器屋がたくさんあるらしいよ。ギルドの人に聞いたんだ。」
よし、行こう。あそこの店とか良さそうだな。店内は豪華な飾りをあしらっていて、たくさんの客がいた。なかなか良さそうな感じだが、高い。とにかく高い。安くて、小金貨(1枚1万円)2、3枚ほど。高いのは金貨(1枚10万円)5枚以上。もう少し安い方がいいな。俺とセリルは別の店にいくことにした。
***
他にも何店かまわってみたが、ただ高いか、品質が悪いか。最悪だな。こうなれば、いっそ高いけど品質が良い物を買うか?
「なかなか良い店がないね。」
セリルが苦笑いしながら言う。すると、奥の方にまだ入っていない店を発見した。古くて今にも店が壊れそうな感じだ。でも意外とこういう店のほうが、良かったりするんだよな。
チリリリン
ドアに付いているベルが鳴る。あ、意外と店内は綺麗だった。そして、なんとお値段も良心的。だいたい1本銀貨5枚分。許せる価格だ。品質はいいんだけど、俺に合う剣がなかなかない。できるだけ軽くて頑丈なのがいいんだけど。
「やあ、どんな剣をお探しで?」
誰が言ったのかと思って、振り返るとカウンターのところにいる男だった。おそらく、店主だ。俺は、カウンターの後ろに1本のの剣が置いてあることに気づいた。
「そこの剣、見せてもらえますか?」
そう、剣を指差しながらいうと、男は後ろを見て、俺がどの剣のことを理解したようだ。
「ああ、この細剣か?これは付与をしようとして試したんだが、頑丈にするタイプの付与しかつかなかったんだ。だから、<鋭利化>とかも付いてないぞ?」
細剣はもともと軽いし、頑丈になってるならそれで良さそうだ。<鋭利化>とかは付いてなくても、元々の剣が使えればそこはどうでもいい。
「じゃあ、それください。」
「正気かい、兄ちゃん。これはただのナマクラ刀だぞ?」
「じゃあ、その代わりに少し研いでもらえればそれでいい。」
「そうか、これは正規の売り物じゃないから、安くしとくよ。研ぐのもサービスだ。銀貨3枚だ。」
俺はセリルに目配せをする。セリルは気づいたようで、袋から銀貨を3枚出す。
「まいど。」
セリルが腰に下げていた剣と、俺がツノブタにトドメを刺した短剣を出した。
「すみません。これのチェックもしてもらえませんか?」
「お、わかった。」
店主がそう言った後、セリルはさらに銀貨を2枚出す。その間、店主は鞘から剣を出して、刃を眺めていた。
「特に欠けていたりはしてないなぁ。ちょっと研いでおくよ。あ、10分ほど待ってくれるかい?」
「わかりました。」
セリルがそう言ったあと、俺たちはしばらく店内の物を眺めていた。ここは良心的なお値段、高品質な商品、多分ここがこの町1番の武器屋だな。
「待たせたな。」
店主はそういいながら、セリルと俺に剣を渡す。さっきまで、細剣は生身でかごの中に入っていただけだったが、鞘がついている。本当にいい店だな。
「「ありがとうございました。」」
俺とセリルの声が合わさる。
「また、来いよ!」
ドアが閉まる際、店主がそう言ったのが聞こえた。
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