再チャレンジ
早朝の5時くらいだろうか。早起きが取り柄のケンはヤマメにばれないように布団から抜け出し、着替えもせずに借家をソロリソロリと出ていく。向かう場所は、一日に一回だけ行ける地霊殿と地上を繋ぐ出入口。ヤマメに捕まらずにこの洞窟を走り抜けられれば、自分は外の世界に戻れる…。
ケン「今日もやってみるか…」
腕を真上にグ~っと伸ばし、軽く準備体操をする。その場で足踏みをしたり、ジャンプしてみたりを数回くりかえしたところで、一気に洞窟の出口に向かって走り出す。
ケン「うおおおおお!!」
ここから出口までは走って3分。多少急な坂になっていて、壁に沿って鬼火らしき火が点々と浮かんでいて辺りは明るい。その中を全力疾走する。
走り始めて1分。さすがに息も切れ、数十秒は歩き、数秒走りを繰り返す。それをしていると、外の朝日の光が見えてきた。ヤマメが追ってきている気配はない。勝った!
ケン「やった!これで俺は自由だ!」
ヤマメとの生活も楽しかったが、もう満足したし、何時食われてしまうか分からないうえに、親も自分が居なくなって心配しているだろう。重く感じた体は軽くなり、自分の自由を詠っているようだ。
ケン「ん~、ヒャッホオォォォオイイ!」
洞窟を抜けると同時に、陽の光をいっぱいに浴びて高くジャンプする。軽くなった体は、いつもより大きく飛べている気がする。
そんなとき、洞窟の奥から一本の白い糸が超速で飛んできて、自分の動体に巻きついた。
ケン「で、ですよね~…!」
凄い力で引っ張られ、地面に落下することもなく、自分が苦労して通ってきた道をいとも簡単に戻っていく。糸なだけに。
ケン「ちきしょおおおお!!」
出したこともないような太い声で叫びをあげながらどんどん戻されていき、最後は出発地点で待ち構えていたヤマメにキャッチされ、それを喜ぶようにキスをされる。
ヤマメ「ん…おはようケン。今日も素敵よ。でも残念だったわね…。また明日頑張ってね~」
ヤマメにお姫様だっこされたまま借家に戻され、朝食を口移しで食べさせられる。
ケン「なあ、毎回一旦ヤマメの口に入れる意味はあるのか?」
ヤマメ「アナタが味わってるのを、私も共感したいからよ」
ケン「普通に食べさせてくれよ…唾液がついてて水っぽくなってしょうがない」
ヤマメ「それは無理よ。なら、私を食べるかしら…?」
ケン「ちょっと何言ってるかわらないよ。やめよう、人が食事してるときに服脱ごうとするの」
ヤマメ「冷たいわね」
ケン「つれないだけだ」
ヤマメ「それが冷たいのよ」
ケン「とりあえずご飯…」
ヤマメ「くすっ。諦めてくれたのね?」
ケン「…ああ。そうだな」
朝食である厚焼き玉子をヤマメが口に含み、噛まずに自分の口に入れてくる。未だに唾液がついている感触は慣れない、慣れたくない。
ケン「ん…ふぅ。うげぇ」
ヤマメ「酷いわケン。卵、美味しくないなら素直に言ってくれればいいのに」
ケン「不味いとか苦いとかじゃなくて、口移しの感触に慣れないだけだよ。もう箸貸してくれ。俺一人で食うから」
そう言ってヤマメから箸を取り上げようとするが、ヤマメも抵抗して箸を自分から遠ざける。
ヤマメ「ダ~メッ。そんなに嫌ならしょうがないわ…口移しじゃないけど、私が食べさせてあげる」
そういってもう一切れあった厚焼き玉子を箸で持ち上げ、自分の口元まで持っていく。自分もそれならと受け入れ、遠慮なく程よい温度の卵を食べる。
ケン「ん…ん…。美味しい。やっぱり口移しいらないじゃん」
ヤマメ「そう…そうなのね」
あ、ちょっとションボリしている。少し傷つけてしまった…なんとかしなければ。
ケン「あ、あー…なんだ。ちょっと言い過ぎちゃったな。ゴメン」
ヤマメ「本当に…反省しいてる…?」
俯いていて表情は見えないが、多分泣いている。このまま泣かれても自分の立場が無くなってしまうだけだ。もうひと押しして、なんとかヤマメを立ち直らせよう。
ケン「反省してる。なんでもするから、許してくれ。この通り」
両手を合わせて頭を下げたその時、突然飛びかかってきたヤマメに圧し掛かられ、床に頭を打ってしまったようで、頭痛がする。
ケン「痛…突然何を」
ヤマメ「何でも…するって言ったわね?」
様子がおかしい。何か震えている。
ヤマメ「じゃあ、私の欲求不満をここで晴らさせてもらうわ!」
ケン「え…ちょっと待っ…」
そう言って素早く服を器用に脱ぎだしたヤマメに、1時間後には自分の性も根も尽き果ててしまった…。
え~。最後の続きにあたるシーンは、書くことはできません。この作品はあくまでもR15なので、それを超える表現を書くことは許されないのです。自分でも、最悪R18を付けてもいいんじゃないかと薄々思っているのですが、何か超えてはいけない一線があるような気がして本番シーンなどを全てカットしています。ご了承ください。
読者様につかの間の安らぎを
「kanisaku」