いざ温泉 1
ケン「…」
連続して何度もし続けられたせいで、完全に体力を奪われてしまい、床にぐったりと倒れ込む。初めての相手が人外、蜘蛛だなんて、親になんて言えばいいんだろう…。
そんな自分とは逆に、ヤマメは満足した表情で自分の頭を撫でている。いつにもまして、彼女の顔がツルツルしているような気がした。
ヤマメ「楽しかったよアナタ…。これからも毎日」
ケン「毎日は無理だ!てかもうしたくない!」
その言葉だけを言う為に、数少ない体力を消耗して顔を上げて言い切ったが、言ってしまった後はガクリとうな垂れる。その姿をみてヤマメはニコニコとほほ笑んでいる。
ヤマメ「昨日くすぐられた仕返し♪存分に楽しめたし…貴方の休息ついでに、温泉にでもいかないかしら?」
ケン「お、いいね。お互い汗もかいてるし、丁度いいかも」
ヤマメ「じゃあ行きましょう」
タオルと石鹸と、お金を少し持って行って妖怪で溢れる大通りを手を繋いで歩く。手を繋ぐのは、普通なのだが、今までの自分達の行動を思い返すと、パッとしない気もする。
ケン「いっつもは借家の風呂使ってるんだよな。こうして銭湯に行くのも珍しい」
ヤマメ「二人で入りたいけど、狭くて二人は入れないのよね」
ケン「そういえば、外の世界じゃ裸になって数人で風呂に入るのって、俺含める日本人くらいらしいよ」
ヤマメ「へえ、ってことは私も日本人なのかしら?」
ケン「日本産の妖怪?」
銭湯の脱衣所前まで来て茫然とする自分と、それを狙っていたかのような笑顔で腕をギュッと抱き寄せている。
ケン「これは…まさか…」
ヤマメ「♪」
ケン「こ…」
ヤマメ「こ・ん・よ・く♪」
ケン「そんな…俺は、風呂くらい一人になれると思ってたのに」
ヤマメ「私と一緒に居たくないの?」
ケン「どんな男にだって、一人で居たい時はあるのさ。なのにこのザマだよ…。混浴か~」
ヤマメ「兎に角行きましょう?一緒に汗を流しましょ?」
ケン「その言い方だとスポーツっぽくなるぞ、せめて洗い流すならまだしも…」
渋々ヤマメに引っ張られながら、「混浴」と書いてある暖簾をくぐって脱衣所に入る。
ヤマメは相変わらず機嫌が良く、鼻歌を歌いながら服を脱いでいる。
ヤマメ「今朝ぶりでしょ、私の肌…」
ケン「あーはいはい。俺のもなー」
ヤマメ「アナタの裸も良いわ~。初めて見た。さっきは上着は着てたし…」
ケン「そうか、見ててもいいから静かにしててくれよ?変な客だなんて思われたくないから」
ヤマメ「はーい」
体にタオルを巻いているヤマメ。まぁ、自分が巻かせたんだけど…。とりあえず、浴場の扉を開ける。
湯気が立ち上っているせいで細かい部分までは見えないが、かなり広い浴場なのがうかがえる。
ケン「銭湯に入る前に、かけ湯して、体を洗う…でいいんだっけ?銭湯のルールって」
ヤマメ「分からないわ。私そんなに銭湯なんて来ないから」
ケン「そうなのか…とりあえず体洗おう」
持ってきていた桶からタオルを取り出そうと手を入れるが、タオルの感触が無い。振り向くと、ヤマメがソワソワした表情でこっちを見ている。
ヤマメ「…」
ケン「…」
キラキラと輝く目は、まるで遊んでもらう時を楽しみにしている子犬のようだった。自分で洗うより、他人に洗ってもらった方が楽だし、背中の隅々まで洗ってくれるだろうと妥協し、何も言わずヤマメに背を向けて座る。
ケン「痛くするなよ~」
ヤマメ「分かってるわかってる」
石鹸でタオルを泡立てて、背中をゴシゴシと擦る。溜まっていた汚れが徐々に体から剥がれ落ちていくのが分かるような気がして、少し気分が良い。
ヤマメ「どう?」
ケン「ああ、いい感じ…」
ヤマメ「そう…じゃあ…」
ヤマメはタオルを自分の胸に当てると、ケンの背中に抱き着く。そして、体ごと上下してケンの背中を擦る。
ケン「ちょっと、おい…なんだその洗い方…」
ヤマメ「抱きながら洗えるなんて嬉しい…これをすれば、ずっとアナタと触れ合ってられるわ」
ケン「タオル越しでな」
なんとなんと、前後編であります。はてさて彼らのラブラブイチャイチャはどこまで行くのか…羨ましい!妬ましい!
読者様につかの間の安らぎを
「kanisaku」




