始まりは羽衣 1
幻想郷の人里で暮らす一人の若い男性、ヨウスケ。彼は今日も山に入って木を伐り、それを売って日々の生活費を稼いでいた。
そんな彼は何時ものように山に入ったのだが今日は日差しが強く、水筒の水も飲み干してしまって喉が渇いてきた。しょうがなく山の奥にある滝に向かった。
・・・・・・・・・・・。
そこでヨウスケが見たのは、勢いなど殆どなく流れ落ちる滝の下の滝壺で、水浴びをしているとても美しい女性だった。薄紫のショートヘアーがより綺麗な肌色の身体を美しく引き立て、濡れる顔や指先から滴り落ちる水滴は、飲んでしまいたくなる、という気持ちさえ起こしてしまう程美しい女性だった。
ヨ(あの人は一体…人里じゃ見ない顔だが…)
少し離れた草陰に隠れてみていたが、女性は入ったばかりなのだろうか滝壺から出る気配は無かった。ふと、彼女の近くにある大きな岩に目が行った。ピンク色をした羽衣が落ちている。きっと彼女のものだろう。
そして勝手に体が動き、気がつけばその羽衣を持って山の中を木々をかき分けて逃げていた。
ヨ(俺は…一体何を…!)
ハァハァと息を荒げながら、走り続ける。あれだけ美しい女性だ。きっとどこかの里の高貴な貴族の人に違いない。そんな人の羽衣を盗んでしまったのだ。返そうにも、見つかったらタダでは済まないかもしれない。
心の中にある良心を全て押し殺し、ただひたすらに緩やかなな草で地面を覆われた山道を下りる。
衣「お待ちになってください…」
ヨ「!?」
突然聞こえた女性の声に立ち止まる。初めて聞いた声だが、何故かそれがあの羽衣の持ち主の女性であるということが分かった。
走る前にある一本の木のから姿を現れたのは、確かに先ほどの女性だ。しかし、彼女は身体を拭かなかったのか、髪からはポタポタと水滴が落ち続けている。そして、自分が見た時と同じく裸のままだった。
ヨ「な、なんで、追いついて…」
咄嗟に口にしてしまったのは、謝罪の言葉よりも、まるで自分が羽衣を狙って逃げたように聞き取られてしまう言葉だった。しかしそんな自分に彼女は妖艶に微笑みかける。
衣「私は永江衣玖。竜宮の使いで地上に来ていたのですが…その羽衣が無いと天界に帰れないんです…」
隠す気など更々無いような感じで、自分に歩み寄る。ピタピタと水を踏みつけるような音がやけに鮮明に耳に響く。逃げ出したい気持ちでいっぱいだが、足は立っているだけでやっとの状態だった。
ヨ「ご、ごめんなさい!盗む気なんてなかったんです!ただ、あまりにも綺麗だったから、つい…魔がさして…」
羽衣を両手で差し出しながら頭を下げる。しかし、彼女は一向に受取ろうとしない。顔を上げて確認すると、突然強く抱きしめられ、同時にキスをされる。
突然の行動に驚き、つい羽衣を落としてしまう。しかし、そんなことをも気にせず彼女はひたすらに自分を求めてくる。舌を入れ、何度も自分の唾液を混ぜ合わせる。
衣「ぷはぁ…はぁ、はぁ…。やっと、会えましたね」
ヨ「え…?」
衣「私は仕事の傍らアナタをずっと見てました。アナタに一目ぼれ…したんです」
ヨ「なんで俺なんだ…」
逃げようと足を後ろに下げるが、彼女がギュッと背中に腕をまわして抱きしめているため離れることができない。ずっと彼女のたわわに実った二つの胸が、自分の心をくすぶる。
衣「他人に興味なんて持たなかった…けれど、アナタを見ていて思ったんです。この人なら、好きになれるって…変ですよね。話したこともないような殿方を好きになるなんて…私は空から見ていただけなのに…」
ヨ「…っ」
薄命にも思える彼女の美しい身体が自分に密着する。こんな綺麗な女性は今まで一度も会ったことがないし、一期一会の千載一遇だ。
衣「とても身勝手で…こんなはしたない恰好で言うのも失礼なのですが…私と、結婚してくれませんか?」
ヨ「一旦、離してくれないか…?」
衣玖と名乗る女性はヨウスケを離す。深呼吸をして心を乱れを静める。落ち着きを取り戻して話をする。端から見れば幸運なのであろう。しかし、彼にとっては千載一遇とは言えなかった。
ヨ「天界とか言ってたけど…アナタは只の人間じゃないってことですよね?俺は妖怪とか、怪しい人と付き合うような勇気はありません。ましてや、アナタみたいな綺麗な人…俺には釣り合わない」
衣「…」
ヨ「羽衣、盗んですみませんでした。ちゃんとお返しします。では…」
落ちた羽衣を拾い上げ、土を軽く落とす。彼女の手を引いて羽衣を持たせ、一礼して人里に早足で歩き去って行く。
彼女がついてくる気配はない。未だにドキドキしているが、彼女がタダ者じゃないということは分かった。これからは、あまり山奥には入らないようにしよう。
しかし、彼女との対面は、それだけでは終わらなかった…。
キャーイクサーン!俺だ結婚してくれー!大好きだ衣玖さん!衣玖さん!衣玖さあああああああああああんん!!!!
は、すみません。あまりにも好きなので取り乱してしまいました。書いていてニヤニヤが止まりません。ヨウスケの運命やいかに…!
読者様につかの間の安らぎとフィーバーを
「kanisaku」




