勝負 1
ヤマメと一緒に布団に入ったケンは、ふとあることを思った。
ケ「そういえば…最近めっきりくすぐらなくなったな…」
ケンを見て、微笑んだヤマメは、お休みを言って横の布団で眠りにつく。いつもなら自分が寝た後にヤマメも寝ていると聞いたのだが、今回は珍しくヤマメの方が早く寝た。
ケ「…」
考え込むようにジッとヤマメを見つめる。起きている時なら、結構抵抗するだろう。ならば、寝ている内に縛ってしまえば…。
実行するなら今しかない。布団から起き上がり、寝て間もないというのに熟睡しているヤマメをお姫様だっこして、居間に向かう。
・・・・・・・・・・。
ヤ「…っ !?」
眠っていたヤマメに、ゾクゾクと脇の下から慣れる事の無い感覚が襲いかかり目が覚めた。
ヤ「ふぁ、あははははははは!!な、何何!?やめ、きゃはははは!」
身体を横にして寝ていたのに、いつの間にか立っている。そして両手は万歳のポーズで固定され動かない。目は開けている筈なのに真っ暗だ。そんな状態で突然くすぐられ、抵抗もできないまま身体をくねらせて善がる。
ヤ「ケンなの!?突然なんであはははははは!やめて、くすぐったいからぁ!」
手を必死に下そうとするが、手錠のようなもので天井に固定され動かすことができない。無防備な脇の下からとめどなく迫りくる感覚に、ただただ笑うしかなかった。
ケ「…」
ヤ「あっははははは!ダメダメっ!これ以上はやめてぇ!」
10本の指が休むことなくヤマメを責め続ける。身体を揺らして暴れ何度も抵抗するが、全く無意味だった。逆に体力を消耗し、その後の責めに余計に耐えることができなくなっただけなのだ。
その間もケンはずっと黙っている。「もしかしたらケンじゃないのかもしれない」という不安感を与えるためである。とっておきとして、ケンは一旦くすぐりを止める。そして喉を指でグッと押す。
ヤ「ふぁっ、はぁ…はぁ…」
ケ「ふふふ、まさか、ずっと俺がお前の男だとでも思ってたのか?」
ヤ「け、ケンじゃない…。アナタ誰よ!」
慌てながらもケンを怒鳴る。
しかし、彼は誰でもない、ケン本人なのだ。喉を押さえることで声を少し変え、さらに自分から何時もの声のトーンを低くすることで、より一層ケンの元の声は離れた、別人の声を出しているのだ。
ヤマメの視界は封じられているからそれがケンだということを認識できない。さらに突然現れた別の男にくすぐられるという精神的ダメージもあり、よりヤマメを混乱させて動揺を生み出すことができた。こうなってしまえば、もうロクにこれがケンの仕業だと気付くことはできない。
ケ「やはり若い女の肌はいいな…くすぐり甲斐があって…」
ヤ「や、ヤダ…離して!これ以上しないで!」
ケ「おっと、あんまり大きな声を出すと寝室で寝てるお前の男が死ぬかもしれないぜ?」
ヤ「ぐぅ、このゲス…!」
怒りに震えるヤマメの声。それをさらに煽るように提案を持ちかける。
ケ「このままくすぐり続けてもいいが…それじゃ面白くないな。一つ勝負しないか?」
ヤ「何…?」
ケ「今から5分間くすぐり続ける。一度でも声を出して笑わなかったら、拘束を外してやる。俺を生かすも殺すも自由にしていい。だが、負けた場合は…。お前の目の前で、あの男を殺す」
ヤ「っ!?」
これはヤマメも迷うだろう。このままくすぐられ続け、知らない男に痴態を晒すわけにもいかない。そうなるとこの男を殺すしかない。けど勝負に負ければ自分の愛しい男性が殺される。逃げることも、ケンを救う方法がそれ以外にない以上。ヤマメはその条件を受け入れるしかなかった。
ヤ「…わかった。その条件。本当に約束してくれるなら、受けて立つわ…」
ケ「そうかそうか、威勢の良い嬢ちゃんだ。そうでなくちゃなぁ…ふふ」
気味の悪い、低い男の声。これから始まる根競べに、ヤマメは意を決して臨む。
ヤマメ対ケンの対決です。が、ヤマメは相手がケンだと気づいていません。
次回、今まで以上に無いほどくすぐり回でHな展開に…なるかもしれません。
そして、皆様が見てくださっていたおかげで元気をもらい、晴れて「ヤマメとの生活」が2か月目を突破いたしました!ダレて途中で読むのを止めてしまった方も、一話からずっと読み続けていてくれている方。真にありがとうございます!
これからも、続けていければいいなぁ…。
読者様につかの間の安らぎを
「kanisaku」




