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ヤマメとの生活  作者: kanisaku
57/100

本格的

感想をいただいたので、できる限り要望に沿って(?)書いてみました。ちゃんと要望に応えられたかは分かりませんが…。

他にもご希望などがあれば感想欄にてご記入ください。場合によっては採用されたりすることもあります。

夜中。エアコンのタイマーもとっくに切れ、ちょっと暑さが戻ってきた頃。ケンが熟睡しているのを見計らって横に寝ていたヤマメが起き上がる。その表情は、何かたくらみを計画しているかのような慎重な顔だった。



ケ「んん…、はぁ~よく寝たぜ。おはようヤマメ」

横で寝ているヤマメにそういって起き上がり、朝の風を浴びようと窓を開けるために手をかける。

ケ「…。ん?んん?んんん?」

ガチャガチャと窓の取っ手を掴み、手前に引いたり押したりしてみるが全く反応が無い。今まではすんなりと開いていた筈の二枚の板は、微動だにしないのだ。

ケ「おっかしいな…どうなってるんだ?」

ヤマメを起こすのも悪いと思い、台所に行って水を一杯だけ飲んで心に渦巻くモヤモヤ感を流し込む。そんな自分の心境を察したのかの如く目覚めたヤマメは、先崎にケンの居る台所へ向かう。

ヤ「おはよう、ケン」

ケ「あぁ、おはよう…窓が開かないんだけど…ヤマメ何かしってる?」

ヤ「ふふ、知ってるわよ?私が開かないようにしたの」

ケ「え?」

不思議さと驚きの入り混じった声を出すケンは、クスクスと笑うヤマメを見つめた。

ヤ「それだけじゃないわ。他の窓も、玄関も、全部開かないようにしたの」

ケ「それじゃ買い物にも散歩にも行けないじゃないか…」

ヤ「大丈夫よ。私がいれば、アナタは何もしなくてもいいんだもの」

何か様子がおかしい。それを察したケンの目つきが変わる。まるで別人、誰かに操られているみたい、ヤマメから逃げようと脚に力が入る。

ヤ「逃げるの?悲しいわ。こんなに私はアナタと一緒に居たいだけなのに…」

ケ「今までだって、ずっと一緒に居たじゃないか。なのに突然どうしたんだよ」

ジリジリと足をずらしてヤマメとの距離を取る。しかし、数秒かけて離れた距離は、ヤマメのたった一歩の前進で戻されてしまう。それどころか、もっと距離は近くなる。ヤマメの目は黒く、それでいて爛々と輝いている。初めて会った時。底知れない彼女の恐ろしさを、再認識させられたような気がした。

ヤ「私、思ってたの。人里に行く度に他の女を見たり、外出しても周りをジロジロ…私なんて見てくれてない」

ケ「気のせいじゃないのか…?」

気圧されないように口調は変えないが、態勢は完全に逃げ腰だった。後ろに下がる足はどんどん大幅になり、そしてついには開かないであろう玄関の扉にまでついてしまった。

ヤ「私だけを見てほしいの。私にはケンしかいないの、他の男じゃダメなのよ」

ケ「おいおい、だったら今まで通りに仲良くしようよ…。こんな束縛生活じゃストレス溜まってすぐ死んじまうぜ…?」

冷や汗が小さく額から溢れる。小さな水滴同士が集まって一つの大きな冷や汗に変わり、ケンの顔をツゥっと流れ落ちる。その滴が顔から落ち、地面に触れて弾けた途端に、ヤマメはズイっと距離を詰めて、二人は密着状態になった。

ヤ「捕まえたわ…。もう、これからは、本当の本当の本当に…絶対の絶対に、離さない。アナタには、私だけ見てほしい、私だけを愛してほしい。他のものなんか要らないわ。これからは、二人で一人の生活をしましょう?」

ケ「え、遠慮す…っ」

ヤマメの鋭い手刀が横から顎に命中し、脳をグラグラと揺さぶった。倒れたくてもヤマメに抱き着かれ、倒れることができない。立っていると余計に頭痛が酷くなり、気分が悪くなる。視界もどんどん歪んできた。まるで自分の最後がこんなにも呆気ないものだと知らしめるかのように。

最後にぼやけた視界に映ったのは、恍惚の表情で自分を見つめる美しいヤマメの姿だった。

それを最後に、ケンの意識は遠のいていく…。


突然本気を出してきたヤマメ。ケンの運命や如何に…。


読者様につかの間の安らぎを

            「kanisaku」

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