寝言
酔った勢いで暴れたヤマメは、ケンの上に覆い被さるように眠っている。長時間乗っかっているため、重みで息苦しくなったケンは目覚めた。
ケン「んん…あ、寝てたのか…」
目の前に仰向けに寝る自分の上には静かに寝息をたてて火照った身体を休ませているヤマメがいる。
ケン「…おっこいしょ…」
起こさないようにヤマメの圧し掛かりから脱出し、無理矢理脱がされた服を着直す。そして、眠っているヤマメを横の寝室までお姫様抱っこで運んで静かに布団をかける。
ケン「もうしらばらくお休み、ヤマメ…」
ヤマメ「んみゅ…」
可愛い寝言が聞こえ、ついほほ笑んでしまう。妖怪にしても人間にしても、彼女が可愛いことに変わりはないのだ。
ヤマメ「ケン…マグロ…カッコいい」
ケン「!?」
あの可愛らしい寝言は何処へやら、訳の分からい言葉に驚いて唖然とする。
ケン「…ヤマメ、起きてるのか?」
ヤマメ「んん…。ベイベェ…」
ケン「どんな夢見てんだ…。なんか気味悪いな…」
ゴロンと寝返りをうって横になるヤマメの右手は、指が小指と人差し指と親指だけが立てられている。どうやらライブの夢でも見ているようだ。引くように驚くケンを全く気にせず、ヤマメは未だに眠りこけている。
ヤマメ「ケン…」
ケン「何?」
ヤマメ「そっちは南よ…」
ケン「どういうことだよ…」
ヤマメ「あ、ダメ、やっ、あぁ…。や、や、や…ダメェ…」
コロコロ変わるヤマメの寝言、全く関連性の無い言葉に、只々気味悪さを感じていた。
ヤマメ「にゅ…。うふふ、逃がさないわよ…絶対に、私だけの…」
ニコニコと笑顔で枕をギュッと抱きしめるヤマメは、きっと自分の夢を見ているんだろう。
ヤマメ「あん…もっとぉ…」
色っぽい声を小さく漏らすヤマメを見て、ちょっとドキッとしてしまう。
ケン「ホントに…なんの夢見てるんだか…」
ヤマメ「ケン…大好き…」
ケン「っ…」
突然の言葉により驚くが…今更驚くことでもないか、と少し冷静になる。
そして、スヤスヤと眠っているヤマメの横にしゃがみ頭を撫でる。するとヤマメは安心したように微笑み、それを見ている自分の心を癒してくれた。
ケン「…可愛いなぁ」
ヤマメから手を離し、自分も同じ布団に入り込む。そして後ろからヤマメを抱き寄せ、自分ももう一度眠りにつく…。
数十分後、目を覚ましたヤマメは、ケンの暖かさにハッとしてケンの方を向く。
ヤマメ「ケン…やっぱり私のことが…」
ケン「んむ…大っ嫌いだよ…」
ヤマメ「!?」
ケンの寝言である一言がヤマメの心を粉砕する。茫然とするヤマメに対し、さらにケンは続ける。
ケン「でも…なんか好きだ」
もはや寝言なのかを疑いたくなるが、「好き」という言葉に反応してヤマメは我に返り、喜びの表情を浮かべた。
ヤマメ「や、やだケンったら…寝てまで私で遊んで…うふふ…悪くないわ」
自分を抱いているケンを自分も抱き寄せ、より一層距離を縮めて、またも眠りにつく。
そして、二人の寝言は一致した。
ヤマメ・ケン「大好き」
それから、どちらも寝言を言うことなく、しばらくの時間が過ぎた。
二人同時の寝言…しかも同じ言葉…。恐るべきシンクロ率!こうやって、一緒の布団で寝てくれる人が居てくれて…羨ましいです。
そういえば、自分がこの話を書き始めてすでに1か月が経ってますね…。早いものです。
読者様につかの間の安らぎを
「kanisaku」




