酒乱の愛情
地上から地底に戻り、繁華街を歩く二人はある物を見つけて立ち止まっていた。
ケン「コーヒーか…この世界にもあったんだな」
雑貨屋の店先に並べられている缶コーヒー。ジュースのやつよりも一回り小さい。外の世界だと、大人がよく飲むものという印象があり、苦いのであまり飲んだことはない
ヤマメ「知ってるの?」
ケン「あぁ…でもそんなに美味しくないかな。苦い」
ヤマメ「へぇ、私は苦いのは好きよ。一本買ってみようかしら」
店員に代金を渡し、缶コーヒーを一つ取って歩き出す。しかし、この時妙な胸騒ぎがしていた。缶コーヒーを蜘蛛の糸でぶら下げ、意気揚々と帰路を歩くヤマメの後ろ姿に、虫の知らせにも似た何かがざわめいている…。
家である借家に着き、居間に入ってひと段落する。「やっぱり家が一番」とはよく言ったものだ。
ヤマメ「ふふ、どんな味がするか楽しみだわ」
ケン「苦いんじゃない?コーヒーだし」
ヤマメ「そうね。じゃあ…」
カシュっとプルタブを上げ、蓋を開ける。そして、グイっと景気の良い飲みっぷりで缶コーヒーをゴクゴクと飲んでいく。
ケン「そんなに一気飲みしちゃって大丈夫か…?」
ヤマメ「んく…んく…」
落ちる最後の一滴を舌でキャッチしたヤマメは、ガクリと頭をうなだれる。
ケン「…ヤマメ?」
ヤマメ「あ…あ…っ」
小さく何かを呟きだしたヤマメは、フラフラと立ち上がり、その顔をバッと上げてケンに晒す。
ヤマメ「暑いよぉぉぉおー!!」
真っ赤に染まった顔、力の無くなりトロンとした両目、暑さのせいで息は荒くなっている。
ケン「!?」
ヤマメ「暑い!暑いよぉ!」
何時も愛用しているジャンパースカートを乱暴に脱ぎ捨て、中に着ていた黒い長袖もすぐに脱ぎ散らかす、黒の下着だけになったヤマメは、それでも暑そうに肩を上下させるヤマメの焦点は全く定まっていなかった。あっちを見たりこっちを見たりして、目だけがころりころりと泳いでいる。
ケン「や、ヤマメ…?」
ヤマメ「くふっ、うふふふ…にゃー!」
両手をバッと上げて、満面の笑みで叫ぶヤマメ。どうみても様子がおかしい。
ヤマメ「ケンちゃ~ん…」
くふふ、と笑みを浮かべているヤマメは、一歩、また一歩とゆっくり近づいてくる。
ケン「え、ちょっと…何?ちゃん付け?」
ヤマメ「暑いわ…アナタなら、どうしたらいいか分かる?」
座っている自分に倒れるように抱き着き、その綺麗な体を万遍なく押し付けてくる。
ヤマメ「暑いまま…けど、悪くないわ…こにょまま~」
ケン「おいおい、どうして…。あ」
思い出した。テレビで聞いたことがある。蜘蛛がカフェインを摂取すると酔っぱらうと。先ほどの胸騒ぎの正体はこれだったのだろう。今更になってちょっと後悔する。
クネクネと色っぽく体を動かすヤマメは、誘っているかのように至近距離で微笑む。
ヤマメ「ケンちゃん♪」
ケン「はい…なんでしょう」
ヤマメ「ヤマメお姉さんとキスしようよ~」
ケン「は、はぁ…」
ヤマメ「ふふ…。んく…」
顔を左右から両手で固定され、無理矢理濃厚なキスをされる。何度も舌同士を絡ませ、互いの唾液を念入りにかき混ぜていく。
ケン「んぷ…はむ…」
ヤマメ「はぅ…ん…ぷふぁ…」
口を離すと互いの唾液が橋を作って、自らの重さですぐにプツリと切れる。
ヤマメ「はぁ…はぁ…。やっぱりケンは良いわ…大好きよ」
ギュッと抱き寄せ、頬ずりするヤマメは猫のようにケンに甘え続けた。ペロペロと指を舐めたり、胸を指でなぞったりしてケンで遊んでいる。
ケン「酔ってるのか?」
ヤマメ「うふふ~。どう思う?酔ってる?酔ってない?」
ケン「…酔ってる」
ヤマメ「こ~た~え~わ~。残念!酔ってませ、ヒック」
ありがちなしゃっくりをしながら、ポワポワと呆けているヤマメはクスクスと笑う。
ケン「酔ってるじゃん…」
ヤマメ「ヤマメちゃん酔ってないもん!酔ってるのはケンちゃんの方だもん!目を覚ませー!」
飛びつくようにケンを押し倒し、無理矢理服を脱がせる。
ケン「ちょ!」
ヤマメ「暑いなら…もっと暑くなっちゃうわ!」
身体を無理矢理押し付け、今まで以上に熱く交わる二人のせいで、湿度は徐々に上がっていくのだった。
蜘蛛にカフェイン…今度、ハエトリグモで試してみようかな…。
擬人化とか、したらいいんですけどね…。
読者様につかの間の安らぎを
「kanisaku」




