純愛
パルスィ「ねぇ…子供、欲しいと思わない?」
カズヤ「…人間の、だったらな」
相変わらず鎖でつながれたカズヤは、座ったまま目の前で立っているパルスィを見つめる。
パルスィ「酷いわね。よく見て、私のこの姿を…人間の女性以外の何物でもないわ。それでも、カズヤは私を化物だというの?」
カズヤ「あぁ、だっておかしいだろ。俺がここに来た時、俺はパルスィの脚を斬った。しかも突き飛ばしたんだ。なのに、走って逃げた俺に追いつけたんだ…おかしい。本当に人間なら、そんなこと絶対に無理だ」
パルスィ「…そんなに痛くなかった」
カズヤ「嘘だ。だってあれは…」
あれは、殺傷能力の高いナイフ。先端が1mm程枝分かれしていて、一回で二回分の斬りつけができるすぐれものだ。野生動物に襲われた時の護身用に持っていたものだが、人間に使うなんて初めてだった。
前に一度、登山中に二匹の野犬に襲われたことがあったのだが、その時もこのナイフでなんとか生き残ることができた。なのに…そんなナイフで斬られた彼女は、全力で走った自分の追いついたのだ。ありえない。
カズヤ「だって、あれは特殊なナイフなんだ。人間なんか斬ったりしたら、痛みで動けない筈だ。それも、君みたいな女の子なら、尚更…」
パルスィ「…ふふ、名推理っていうのかしら?そうよ、私は妖怪。アナタに恋する、だたの妖怪…」
カズヤ「やっぱりそうか…俺を、食ったりしとうとは思わないのか?」
パルスィ「今更それを聞くの?今まで、私がアナタを食べようとしてたことなんてあったかしら?ないわよね…?」
カズヤ「俺を弄んでるだけかもしれない」
パルスィ「うふふ、あはははは!」
高笑いをするパルスィを上目使いで睨みつける。
カズヤ「なんだよ、突然笑って」
パルスィ「妖怪は、そんな野蛮なものじゃないわ…よほど人間より真面目よ」
カズヤ「え…?」
パルスィ「平気で嘘をつくような…人間とは違うのよ。それに、浮気なんて絶対にしないわ」
カズヤ「どういう意味」
パルスィ「私は…絶対にアナタだけを愛せるってことよ…移り気なんてしないわ。アナタは人間だから、浮気だってするし、嘘もつく。けど、そんなアナタも好きよ。抵抗してる姿も、泣いてる姿も、怯えてる姿も…全部大好きなの」
綺麗な緑色の目に、黒が混ざっていくのが分かる。彼女の心を反映したようなその目の色が、どんどん自分の姿を鮮明に映していく。
パルスィ「ジッと私を見て、どうしたの?いつもなら、目を逸らすのに…私のこと、好きになった?」
カズヤ「そんな訳…」
パルスィの言葉にハッとして、今更ながら目を横に逸らす。
パルスィ「ふふ、可愛いわ」
両手で無理矢理カズヤに正面を向かせ、互いの距離を縮める。
パルスィ「もっと抵抗しないの?それとも…諦めて、私のこと好きになってくれるの?」
カズヤ「俺は、お前なんか好きにならない」
パルスィ「酷いわ、アナタの初めての相手は私よ?」
その言葉を聞いて、怒りの形相を露わにしたカズヤは吠えるように怒鳴る。
カズヤ「順番なんてどうでもいい!俺は、元の場所に戻りたいだけなんだ!」
パルスィ「…ダメよ。アナタは、私の上げたチャンスで失敗したの。約束は守ってもらうわよ。それとも…さっき言ったみたいに、アナタは本当に平気で嘘をつくような人なのかしら?」
カズヤ「…」
パルスィ「何も言えないのね。そうだ…アナタも妖怪になってみたら?そうしたら、嘘なんてつかなくても生きていけるわよ」
カズヤ「俺は…人間のままでいたい…」
パルスィ「そう、残念ね…」
そう言いながらもほほ笑むパルスィに、カズヤはどうすることもできないでいる。
妖怪になれば、勉強しなくていいのかな…妖怪になりたい…。
読者様につかの間の安らぎとジェラシーを
「kanisaku」




