人里で嫉妬
大通りを歩くケンは、キョロキョロと辺りを見回す。思った以上に人が多く、地下で見たのは妖怪ばかりだったので少し驚いている。
ケン「人里ってだけあって、やっぱ人が多い…」
ヤマメ「当たり前ね。今この里にいる妖怪なんて、私くらいじゃないかしら?」
ケン「やっぱりそうか…ん?」
通り過ぎようとしていた一軒の店の前まで、巻き戻しのビデオのように戻る。
ケン「団子屋…食ってこうぜ。今日は俺が奢ってやる」
ヤマメ「あら?ケンお金なんてもってたっけ?」
ケン「道端で拾ったんだ。結構入ってる」
ボロボロのガマ財布。茶色い二重の布で作られいるが、表側の一枚は使い古されて破れている部分が数か所あり、口の部分も錆が目立つ。その財布をケンがポンポンと投げ、キャッチする度に、響きの良いジャラジャラとした音が聞こえてくる。
ヤマメ「でも、こんなに入ってる財布捨てるひとなんているかしら、落し物とかだったら…」
ケン「そうだな…そういわれると罪悪感が…どうしよう。元の場所に戻そうかな」
ヤマメ「そうしましょう。お金なら私が持ってるもの」
ケン「そうだな。じゃあ元の場所に置いてくるよ。待っててくれ」
走って人里の入り口前に生えている木の根元に財布を置いて、ヤマメの元に戻る。
ケン「さ、団子食べよ」
ヤマメ「そうね」
店の男性に団子を二つ頼み、並んで長椅子に座る。すると、すぐに男性が二つの皿を持ってきた。
男性「どうぞ」
ケン「どうも」
ヤマメ「頂きます」
串に三つ刺さった団子を食べたヤマメは、思い出したようにケンの方を向く。
ケン「あぁ、そうだったね」
団子一つを口に含んだままのヤマメは、団子を口移しでケンに送り込む。それを受け入れるケンは団子を貰って、よく噛んでから飲み込んだ。
ケン「美味しいな。太陽の光を浴びて食う団子は格別だ。もっと光を!」
今度は自分が口に含んだ団子を、ヤマメに食べさせる。
ヤマメ「ん…大げさよ。でも…美味しいわね」
ケン「だろ?もっとくれ」
ヤマメ「ん…」
ケンのその言葉に喜びを感じながら、もう一度団子を口に含む。
その光景を見て、別の客に団子を渡している店の男性は唖然とするしかなかった。
ヤマメ「美味しかったわね」
ケン「そうだな」
団子を食べ終えた二人は、続いて大通りを散策する。
寺子屋の美人教師や、宗教勧誘をする黒白の服装が似合っている女性…。綺麗な女性が多いような気がする。
ヤマメ「…帰りましょう」
ケン「え?突然どうしたの?」
ヤマメ「アナタが他の女を見たの、これでもう12回目よ」
ケン「数えてたのか…」
ヤマメ「えぇ、だって、チラチラ他の女を見てるの、わかりやすいんだもの。他の物に比べてじっと見てるから」
ケン「そうなのか…自分じゃ気付かなかったけどな…」
ヤマメ「気を付けてね?これ以上他の女を見るようなら…両目とも、取っちゃうから」
ケン「お、おう…気を付けるよ…」
何回も忘れてしまうが、ヤマメは妖怪だ。自分の目を抉り取ることなんて、造作も無いことだろう。
ヤマメ「安心して、取った目はちゃんと保管して、毎日私が眺めてるから…」
ケン「安心できない…俺の目は、ずっとここについたままじゃないと」
目を指差して冷や汗をかくケンを見て、ヤマメはクスクスと笑っている。
ヤマメ「ふふ、冗談よ。けど…他の女は見ちゃダメ…」
ケン「お、オーケーおーけー…」
その後、女性を19回見たと判断されたケンは、ヤマメに19連続の往復ビンタを食らった。
19回の往復ビンタ…良いですね。食らってみたいものです。
付き合ってる女性に、他の女性のことで嫉妬されるって、なんか愛されてる気がしていいですよね。浮気とまでは行きませんが、「デレデレしちゃって!」みたいなのは好きです。
読者様につかの間の安らぎを
「kanisaku」




