ペットがほしいな3
ケン「ワン」
ヤマメ「?」
あれから30分。未だに膝枕をされ、頭を撫で続けられるケンは、一言だけ吠える。しかし、ヤマメには伝わらなかったようだ。
ヤマメ「何を言ってるか分からないわ。ちゃんと喋ってちょうだい」
ケン「離してくれ、暇すぎる」
ヤマメ「うーん…ケン。ジャンケンしましょ。それで、私が勝ったら言う事を一つ聞いてもらうわ。アナタが勝ったら、首輪を外して犬から人間に昇格してあげる」
ケン「そうか。じゃあさっそく」
正座で向かい合う二人は、互いに右手をグーにする。
ケン・ヤマメ「最初はグー。ジャン、ケン、ポン」
ケンはパー、ヤマメはチョキをだいしていて、まずはヤマメの勝利。
ヤマメ「うふふ…じゃあ、まずは…。服従として、足でも舐めてもらおうかな…」
テーブルに腰掛けるヤマメは、素足を自分の顔に向ける。特に臭いなどはしないが、妖艶にほほ笑むヤマメはとても艶めかしく、その姿につい、舌を出して足を銜えるように舐めていた。
ヤマメ「初めての感覚よ…。ちょとっとくすぐったい気もするけど、中々良いわね」
ペロペロと指先や、指の間を舐めまわすケンに、ヤマメの姿は映っていない。ただ、指示されたことを一心にし続けるだけだった。
しばらく舐めていると、今度は反対の足を差し出す。それを両手で支えるように掴み、また丹念に舐めまわしていく…。
5分後。
ヤマメ・ケン「じゃーん、けーん、ポン」
ヤマメはグーを出し、ケンはパーを出す。
ケン「やったね。じゃあ俺は人間に戻ろうか」
首輪を両手でいじって外し、その場にポイっと投げ捨てる。
ケン「よーしこれで自由に動けるぜ…」
ヤマメ「もうちょっと…楽しみたかったなぁ…。ねぇ、もう一回しましょ?アナタが勝ったら、何でも言う事聞くわ」
ケン「いいだろう。今の俺はノリに乗ってる…!」
ケン「じゃん!けん!」
ヤマメ「ポン」
ヤマメはチョキでケンはグー。二連勝に高らかにガッツポーズをするケンを見て、ヤマメは不満そうに頬を膨らませる。
ヤマメ「むぅ…、また負けた…」
ケン「さぁ!俺のいう事を聞いてもらおう!」
ケンの願いどおり、アイマスクで視界を封じられ、両手を後ろで縛られ天井とロープで繋がっているヤマメ。それを見て、満足そうな表情をし、目の前で腕組みをしているケンは、そっと部屋から出て行った。
ヤマメ「ねぇ、もしかして…これって、前にもあったやつじゃ」
ヤマメの問には答えない…。そう。前と同じく、放置プレイだ。
ヤマメ「ねぇ、せめて目隠しだけでも外して…くれないかしら」
前と同じ手段で足音を立てず玄関まで歩き、扉を開けて閉める。そして居間の横にある寝室まで行って、ヤマメの様子を観察する。
ヤマメ「あ、前と同じで…何処かにいるんでしょ?ねぇ」
ケン「…」
少し腰を曲げた態勢のヤマメは、見えない目をキョロキョロと動かしているが、視界は遮られている。感覚でケンが何処に居るのかを探ろうとしているのだろうが、そんな高度な技術をヤマメは持っていなかった。
ヤマメ「ケン、出てきてくれないかしら…なんでも、いう事一つだけ聞いてあげるわ。紫って妖怪も一緒に探してあげるから…出てきてよぉ…」
今回は早かった、居ると薄々分かっているからだろうか、アイマスクの下から涙を流し、肩を震わせている。
ヤマメ「ケンの言う事聞くからぁ…迷惑かけないようにするからぁ…」
前回のような発狂はしないものの。前回以上に悲しんでいるようだ。居ると思っているだけに、反省した子供が親に謝るような口調で泣いている。
ヤマメ「これ外してよぉ…!ケンに会いたいよぉ!ケン!居るんでしょ!?外してよ!」
ブンブンと身体を振って暴れるヤマメだったが、そんなことで拘束が外れるわけはない。
徐々に理性が無くなっていくように、ヤマメの動きは激しくなっていく。そして、それを見てゾクゾクした感覚が心の奥深くから湧き上がってくるのが分かる。
ケン(あぁ、これがサド心か…)
その沸き上がりがなんなのか理解したケンは、ジッと寝室からヤマメを見つめる。
前回は数十分もかかっての発狂だったが、今回は3分も経っていない。
ヤマメ「ヤダ!ヤダヤダヤダ!これ外してぇ!」
泣きながら叫ぶヤマメを見て、次の行動に移る。
ヤマメのアイマスクを外し、その姿を現す。泣きじゃくって赤くなった顔は、自分を見て、力無く笑っている。
ヤマメ「ケン…やっぱりいてくれたのね…。これ、外してほしいな。すぐにでもアナタを抱かないと、気が狂っちゃいそうなの…」
ケン「そうか、そういえばさっき…何でもするって言ってたね。じゃあ、俺が『よし』って言うまで、絶対に俺に触れないこと、いいね?」
ヤマメの両手を縛っているロープを小さなナイフで切断し、ヤマメを解放する。
地面にへたり込んだヤマメが、抱き着きとうこと立ち上がる前に手をかざして制止する。
ケン「待て…。言ったよね?自分が『よし』っていうまで…」
ヤマメ「い、意地悪よ…。早く、早く」
はぁはぁと息を荒げるヤマメは、犬そのものだった。さっきは自分が犬のようにヤマメの足を舐めていたのが嘘のようだ。
ケン「…」
ヤマメ「はぁ…はぁ…」
ケン「よしっ」
ヤマメ「!!!!」
よし、と言った途端にヤマメはアメフト選手顔負けのタックル&抱き着きで、自分を床に押し倒す。前にも、こんなことがあったような気がする。
ヤマメ「もう、もうあれは嫌だ。絶対に…ケンが離れてるなんて思いたくないの」
馬乗りになって涙を流すヤマメは、上着を脱ごうとする。しかし、服の裾を掴んでそれを止める。
ケン「落ち着け、俺はどこにも行かないよ。そんなことしなくても…。ヤマメは俺が好きなんだろ?俺だってそれと同じくらい、いやそれ以上にヤマメが好きなんだ。ワザワザ交わらなくてもいいんじゃないかな?」
ヤマメ「でも…身体が寂しいの。ケンが欲しいって言ってるのよ」
目に涙を貯め、震えた声で訴えるヤマメを、半身を起き上がらせて抱き寄せる。
ケン「ほら、こうしてても、十分に暖かいじゃないか」
ヤマメ「ケン…」
抱きしめあう二人の愛情はより一層深まっていく。
蜘蛛の巣にかかった男は、自ら食われることなく、存在するだけで蜘蛛に栄養を与え続ける。
そんな人の姿をした餌は、蜘蛛に食われることなく、自らを生きながらえさせる。
他の虫が自分を襲ってきても、蜘蛛が守ってくれる。蜘蛛に守られた餌は、蜘蛛に栄養を与え続ける。
愛し続ける二人は、互いの栄養だった。
まさか、3話分も続くなんて…。「2話くらいで終わらせられるかな」とかタカをくくっていたら、夜になっちゃったので焦って投稿した結果。入れたい部分が入らなかったので3話まで食いこんでしまいました…。
次は、別のお話になります。
しかし…。この小説を書き始めてそろそろ1か月が経つんですね。読んでくれてる方々が居て、自分としても増える閲覧数だけが心の支えです。本当に、ありがとうございます。
読者様につかの間の安らぎを
「kanisaku」




